2023年04月20日

ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!G

俺が下に降りてくと、荘田君が「やりましたねー!お陰様でいい画撮れました、ありがとうございます!」って、大声で言いながら駆け寄って来た
「ヒグマ死んでるの、ちゃんと確認した?」って、訊くと「まだ調べてないです」って平気な顔で返事するんで、もし復活したら大変だっちゅうことで、俺が調べてちゃんと死んでるの確認した
それから、牧場主の高松さん夫婦が眺めてるところをカメラに収めて、やっと撮影終了
後は、荘田君、Dテレの杉浦ディレクターやスタッフたちと夕食(宴会?)の続きになり、腹が減った俺は残りの料理を全部たいらげちった

翌朝、荘田君は北海道に残って、編集作業にメド付けてから帰るって言うんで、俺は一人で気楽に飛んで帰ることになった

その日から1週間経ち、俺がダイニングでカップヌードルにお湯を注いでると、スマホにメール着信、荘田君からで、今夜11時55分からの深夜バラエティ『びっくり映像グランプリ』で、北海道ヒグマ退治を放映するので、ぜひご覧くださいとなってる
俺が、了解、必ず見るから…とか返事を文字打ちしてるうちに、続いて駒ちゃんから久しぶりのメール着信
荘田君に返事しといて、駒ちゃんのメールをクリック
“深夜バラエティ決まったね こちらのチームでも話題になってるよ 明日19時前後に行ってよい?”って、なってる。もちろん、OKって返信してから、胸がわくわくしてるのに自分でも驚いてる

駒ちゃんと、随分会ってないんで、メールがあっただけでもう有頂天になったんだけど、超人だって未来の予知能力なんてのがあるはずなく、この先、俺が巻き込まれる大騒動なんて、全然予想付かんかった
とにかく、その夜の『びっくり映像グランプリ』は、北海道でのヒグマ探しの苦労話と、高松牧場に行って、狙ってた巨大ヒグマとの邂逅からの決戦という流れに、東京に戻ってからのスタジオ収録が組み合わされるという、なかなかの力作で、正直、自分で言うのもなんだけど、結構感動できる出来だった

深夜の番組観てたんで、翌朝は少し寝坊して、9時過ぎ起きだった(警視庁辞めてからだーだーな生活だ)
遅い朝飯食って、それでも夜は駒ちゃんが来るってんで、部屋の掃除なんかもやったり、近所の八百屋さんスーパーで、冷蔵庫の中身の補充に出たりして、なんとなく忙しい一日
そのうち、窓の久しぶりの夕焼けが消えて、外が暗くなったんでカーテン閉めて、準備万端そわそわタイム
ドアホンが鳴って、お待ちかねの駒ちゃんの声に、俺は瞬速でドアを開けに走る
ばん、ってドアを開けると、駒ちゃん一人じゃなく、なぜか荘田君も一緒!(どゆこと?!)

「すみません、一緒に伺っちゃいまして…」弱々しい荘田君の声にかぶせて「局の方、今、大変なのよ」って、駒ちゃんが続く
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2023年04月09日

ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!F

「うおーっ、やったー!」って、荘田君が叫んだ声が聞こえた
だけど、それはただ熊を撥ね退けただけで、致命傷どころか、ほとんど痛手を負わせていなかったのも事実
まあ、どさっなんて軽い感じじゃなく、どっさーんだったけど
とにかく、俺的にはのしかかってたのが取れたんで、ぱっと体勢立て直して、次の攻撃に備えて構えた状態
すると、熊公はもうやる気失くして、逃げ出そうとしてるのが分かった
「熊、熊が逃げちゃいますよー!」って、元気が出た荘田君とDテレのスタッフたちが、大声出すんで「おおー」って返事して、くるっと向きを変えて逃げ出そうとしているヒグマの背中に飛び乗ってやった
とにかくでかい熊なんで、背中に乗っても全然止らん。俺を乗っけたまま、ばばーっとめちゃくちゃ走り出す

俺としても、多分こいつが牛を何十頭も殺して喰っちゃった奴だから、ここで逃がしちゃまずいってんで、どどどーって走ってる熊の、耳の付け根辺りに空手チョップを何発もお見舞いしてるんだけど、超人チョップでも効き目がない
こっちもアドレナリン出まくり状態なんで、今度は両耳を引っ掴んでぎゅーっと持ち上げた
それでも止らないんで、今度は両目の辺りをばりばり引っ掻いてやる
これは効き目があったのか、急に走るのやめて、ぐわーっと立ち上がると、両手で頭の後ろにくっついてる俺を引っぺがそうと、長い爪のついたぶっとい腕で、がしがし引っ掻いて来る

まあ普通の人間だったら、もうとっくにずたずたにされてるんだろうけど、なんせ俺は超人だから、爪は引っ掻いても滑っちゃって、俺は落ちない
腕を首に巻いて絞めてやろうかって思ったけど、太すぎてそれは無理だ(超人だって無理は無理)
これじゃあ、お互いどうしようもないこう着状態ってやつにはまり込んでる。で、俺は熊の体を持って宙に持ち上げてみることにした
だけど、持つとこが無い。体中に生えてる毛を握って持ち上げようとしてみたけど、力が入らない
こりゃだめだ、って思った俺は、熊公の背中から飛び立って、くるっと目の前に降りてやった

背中にしがみ付いてた俺が、急に目の前に現れたんで、熊だってびっくりしたと思う(多分)
びっくりして、両手(両前足)を下に着いたんで、顔が殴り易い位置に来た。すかさず、俺は右フックを振う
なんと言っても超人力、熊公の顔が右にぐるんと廻る
殴った俺にも手応えはあって、今度はいいパンチが入ったって確信できた
連続して左脇腹に、右のミドリキックをお見舞いする。続いて、熊の横脇に飛び込んで、ぐいっと手を差し込んで、すくい投げみたいな感じで投げ飛ばした
闘ってる場所が牧場の木柵の傍だったんで、熊が飛んだ先に柵があって、そいつにでかい熊がぶつかったから、当然柵が壊れて牛たちが騒然となる

騒然となったのはテレビクルーたちも同じくで、果たしてカメラがこの乱戦をしっかり収めてるかどうかなんて、全く分からない
でも、俺的には大分余裕が出て来たんで、熊が飛んだ先にすぐに駆け寄って、でかい腹のあたりに右足を乗せて、やったーポーズを取ってみた。で、周りを振り返ると、北海道のテレビクルーは、どうやらちゃんとカメラに収めたみたいで、俺にVサインを送っている
荘田君は、気持ちが追いついてけないって感じで、呆然として突っ立っている。いや、なんか慌てて、手を大きく横に振り始めた

熊のでかい腹に載せてる足がずりっと滑って地面に落ちた。はっと気づいて、横に飛ぼうと思ったら、その寸前に熊の赤い口が大きく開いて、ばっくり俺の右足に噛みついてきた
ぎゅっと右足首に圧力がかかったのが分かる。一瞬、俺はどきっとしたけど、別に痛くないからパニくることはなかった
そのまま熊の首を両手で持って、空に飛び上がる。熊が驚いてるのかどうかは分からないけど、とにかくそのまま高度を上げてくと、四足動物の弱点がはっきり出て、もはや顎を閉じていることが出来ないで、吠えようとしたのか、逃げようとしたのか口を開いたんで、俺も両手を放してそのまま空中に熊を逃がしてやった
つまり、100mくらいのところから地上に落ちて、こんどこそ動かなくなった
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2023年04月05日

ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!E

すぐにヒグマの目の前に降りてやろうって思ったんだけど、荘田君たちがまだ来てないから、どうしたらいいか、ちょっと迷った。また映像を撮れなきゃ、今度も失敗になっちまうからなぁ…
そのうち、母屋の方から人が出て来る音がして「こっちじゃないのぉ」とか「あっちじゃないの」とか、がやがや声が聞こえて来る
その間にも、牧場の牛たちは危険が迫っている気配を感じてるようで、足を踏み換えたり、荒い息を吐いたりして、もう待ってらんない、って俺が急降下しようとしたとき、牧場の方に人が来るのが分かったのか、ヒグマは首を持ち上げて匂いを嗅いでから、牛を襲うのを止めて、逃げ出す体勢に入る

ここで逃がしちゃいかん、って思ったんで、俺は急降下して熊の真ん前に降り立った
ヒグマの奴、絶対びっくりしたと思う、急に目の前に俺が降って来たんで、急ブレーキで止る
デニム上下の俺は、人間としても背は大きい方ではない(って言うか小さい部類)、それが突然目の前に突っ立ったんだから、熊だって驚くだろ。こっちをじっと見てる
俺って、小さい頃から動物園が割と好きで、特にお気に入りはライオン、トラ、ヒョウなどのネコ科の肉食獣で、熊は全体にもこっとして可愛いく見えるんで、どっちかって言うと軽く見てたんだ

そいつが俺の目の前で、こっちをじっと見てる状態になってみると、なんか正体不明の怖さを感じる
それにしても、こいつはでかい。でかいやつを小山のような、っていうけど、まさにそれだ
だけど、びびっちゃあいられない。前回のヒグマ対戦を参考に、鼻っ面に右ストレートかな、って考えてると、相手はぶわっと立ち上がった
うおっと、これはでかい!立ち上がると2mは超えてそうだ。そいつが両手を広げて、ぐあっと口を開くと黄色い牙がむき出しになって、ド迫力だ!
鼻っ面にストレートっていう俺の作戦は中止だ。宙に浮けば手は届くだろうけど、力が入りそうにない

っていうことは、でかい熊のどっかーんと分厚い、胸か腹を狙うしかない
ま、いいやってんで、とりあえずあばら骨ブチ折る気で、どーんと胸に正拳突きをお見舞いしてやった、つもりだったが、思ったよりでかくて、胸じゃなくてお腹に突きが入ることになった
熊の身体をぶち抜くくらいのスピードで打ったんだけど、お腹をぼっこんって殴ったんで、効き目はなく、逆に怒ったヒグマが全体重乗せて、俺に覆い被さってくる格好になっちまった
これは俺の失敗で、いつもの人間相手なら、ぱっと打ってぱって下がってるから、相手の反撃なんて喰わないんだけど、今回は全力打撃でいこうって思ってたんで、足留めて必殺パンチみたいな攻撃をしちまった

それと、やっぱり野生の熊は動きが早くて、それもあって俺には7〜800sくらいの大熊の体重が乗っかって、おまけに首筋を思いっ切り噛まれたんで、一瞬、俺もパニ食っちまった
まあ、超人のありがたいことに噛まれても、牙は身体を傷つけず、ぶっとい腕に付いてる長い爪も、俺を傷つけられないんで、後は超人力で撥ね退ければいいんだけど、案外がっちり組みついてきてるんで、ちょっとそのままの格好になっちまった
「ああー、やられてるー!」「だめだー、喰われちまったー!」って、荘田君とか北海道の系列テレビのDテレのディレクターとかが、悲鳴を上げてるのがちゃんと聞こえてて、大したことないよ、って強がってみたいんだけど、なかなか動かん

それで思い出したのが、相撲で小いさな力士が大きい相手を、下に潜り込んで投げる“居反り”って技だ
で、巨大熊乗っけたまま、首の力と背筋を使って、思いっ切り後ろに反って放り投げた
さすがに、がっちりかぶりついてた熊のあごも牙も外れて、どっさっと俺の後に落ちたのが分かった
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2023年03月26日

ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!D

黄色のマフラーを巻くと、なんか出演者気分になって、人からどう見えるのか気になってしまう
牧場経営の高松さんのお宅には、姿見なんて洒落たもんないんで、俺はトイレに行くような顔して部屋を出た
トイレに行く途中にある廊下の窓なら、中が明るくて外が暗いから、俺の姿が映るはずだと思ったんだ
デニムのシャツに黄色のマフラーをした俺は、昭和の映画スターみたいに見えるかも?
と、その俺の顔の横の闇の中をなにかの影が横切ったのを視た気がした
なんだったんだろうと、俺が今の場面を思い出そうとしたとき、驚いたことにその場面が頭の中に浮かび、ビデオをスローで再生するみたいに、その影が左から右に動いたのが見え、その影が大きな四足の動物だってことまで分かった(超人の知らんかった能力か!)

こいつぁヒグマだって確信したんだけど、荘田君たちに知らせる方がいいか、このまま戸外に出て影を追う方がいいか、ちょい迷ったけど「ヒグマが出たぞー!」って怒鳴っておいて、影を追うならキッチンのドアから飛び出そうって判断して、高速移動した
あせって動いたから、そこらじゅうにぶち当りそうになったけど、なんとかうまく走り抜けて、キッチンのドアを壊さずに瞬速で開けて、真っ暗な裏庭に飛び出した
下弦の一日前の月は、厚い雲に覆われてて、裏庭もその向こうにある牧場も真っ暗闇だけど、俺の目は、見ようって真剣になったら、赤外線カメラよりしっかり見えることがわかった

外に出たところで動きを止めて、周りの様子を探ることにした(おっちょこちょいの俺にしては珍しく冷静)
まず、耳を澄まして音を聴いてみた。結構いろんな音がしている。
母屋では、皆のがやがや喋っている声、椅子ががたんと鳴る音、食器がかちゃっと鳴る音、ドアが開いたり閉ったりする音…ずいぶん喧しい
そして、この牧場の周りに生えている木や草の葉の音。そして、牧場に集まっている牛たちの足を踏み換える音、鼻息、しっぽを振る音などが聴こえ…と、音のリズムが変った
足の踏み換える音がせわしなくなり、鼻息も荒くなり、耳に集中している俺の緊張感のレベルが一気に上がる

そこに、ふっふっふっ、という違う鼻息が加わった。俺にも牛の緊迫した状況が掴めた
「なにー!外に出てるんかーい」突然、間抜けな人の呼び声が割り込んで、牧場から聴こえていた音が消える
しーっ!って言いたいとこだけど、俺が声出したら、きっとヒグマは逃げちまう
そのとき名案が浮かんだ。宙に浮いて探せばいいんだ、って
早速、体を浮かそうとする。空に飛び上がるんじゃなくて、ふわっと体を浮き上がらせるんだ
ほんのちょっとだけ、足先に力を入れて、とん、って感じで体を浮き上がらせてみたら、ふわーっと上がった
10mくらいの高さで留まる積りだったけど、もう少し高くなっちまった

それでも、自転車でブレーキとペダルを同時に操作するみたいな調子で、15mくらいの高さで空中浮遊できた
牧場ってとこは、木も無いし、丈の高い草叢も無いから、空中からなら丸見えだ。おまけに俺の目は、暗闇でもしっかり見れるから、でかいヒグマらしき塊が、牧場の横の作業小屋の陰に潜んでるのも丸わかりだ
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2023年03月20日

ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!C

「琵琶瀬展望台ってとこまで走って、そこで休憩にしようと思います」って荘田君が言うんで、昨日の道を空からの伴走付きで走ってもらったんだけど、残念ながらヒグマは出ず
この道は観光道路っぽくて、初めのうちは山の中みたいになんだけど、途中から海沿いを走る感じになる
全体的に明るくて、とても熊が出るような雰囲気はないんだ
潮風に吹かれながら、荘田君が一生懸命走ってる様子を、3〜400mくらいの高さから(熊は出ないし、観光客らしき車がそこそこ走ってるから)眺めていて、俺はなにしてんだろ、ってぼんやり考えてた

進む方に何棟か建物が見えるんで、お先にって感じでそっちに先回りして、ちょうど誰もいないんで、長方形の建物の屋上が展望台ちゃあ展望台らしく見えるんで、そこに降りて待つことにした
しばらくすると、ふうふう言って荘田君が屋上に上がって来て「なぁ〜んもいませんね、ヒグマ」ってぼやいた
「どーする、まだこの先まで行く?」って訊くと、「どうしましょう。知床の方に行けば、結構な確率で出会えるらしいんですが、別になんの悪さもしてないみたいで、平和に暮らしてる熊たちを、超人ランボーがいじめてるみたいになりそうなんで、どうも…」って、もやっとした言い方になってる
「ただ、ここから近くの標茶町に、凄いのが出るらしいんで、そっちに行ってみましょうか」
それならってことで、床澤受信所に置きっ放しの自転車を、俺が伊藤旅館に返してから、ここで待ってる荘田君を自転車ごと持って、高度1000mくらいで飛ぼうか、って話になった

荘田君の方も、なんにもしないで待ってる訳じゃなくって、ちゃんといろいろ連絡取って(こっちの系列局に手伝ってもらい)、最近そのヒグマに、飼ってる牛をやられた牧場主さんを、訪ねられるようにしておくことになった
俺は、コスチュームが破れちゃったんで、私服(デニムの上下だけど超人なんで寒くはない)のまま、自転車に乗ってる荘田君の両脇に手を入れてそのまま持ち上げ、荘田君が見るスマホのマップ頼りに、その牧場目指すってことになった
ここ(諏訪瀬展望台)からの距離は、大体北西に50q弱くらいだから、30分もあれば行けそうだ
さすがに、自転車に乗ってる人を持って、私服の俺が空を飛んでいたらニュースでしょ、って荘田君が言うんで、人に見られないよう1000mくらいの高さで、なるべく森になってるところを選んで、標茶町の高松さんの牧場まで飛ぼうって決めた

結局、何人かに空飛ぶ自転車は見つかったみたいだけど、そこらは後の編集でなんとかなるさで強行
どうにかお目当ての牧場に着いたのは、まだ明るい午後3時ちょっと前だった
諏訪瀬展望台で伊藤旅館さんに作ってもらったおにぎりと、PETボトルのお茶の昼飯しか食べてないから、随分働かされてる俺は、もう腹が減り始めてる
それでも牧場主の高松さん夫婦はすごくいい人で、「よう来さったなぁ。なまら大変だったんでないかい」とか、北海道弁で話しかけてくれる
俺は一応ゲスト扱いっていうことで、荘田君が「こちらはこんな格好ですが、超人ランボーさんでして…」って、二人に紹介してくれるんけど、どうもこっちでは全然有名じゃないみたいで「…??」みたいな反応
ただ、地元の系列テレビ局の名を出すと、ああそうみたいな反応はある

お二人から詳しく話しを聞いていくうち、OSOと呼んでいるでかいヒグマが、夜のうちに、牛を襲って食べるんで、本当に困ってるのが分かった
「じゃあ、今夜僕らはここに待機して、そいつが出たら、超人ランボーさんがやっつけてやりますよ」って、荘田君が胸を叩く(俺は喋らず黙って立ってるだけ)
「でも、この人、本当にスー○ーマンなの?」奥さんが心配そうに言うんで、俺は外に置いてあるトラクターを持って、牧場の上をぐるっと回ってやった(論より証拠っていうやつ)
「ありゃ〜、こら、びっくらこいただべさぁ」って、夫婦でハモったのに俺らも受けて、表にあった薪用の丸木を手刀でぽんぽん割ってあげると、一気に信用されるようになった
「これなら、ヒグマ出てもなぁんもだべな」って、またご夫婦でハモってくれる

夜を待つ前に、北海道名物“ジンギスカン”をご馳走になってると、北海道の系列局の取材班が6人やって来て、一気に賑やかになり、荘田君なんか、ビール飲んで大分ご機嫌になってしまう
俺は、超人なんで酔うとかほとんどないんだけど、やっぱりなんか調子良くなるんだよな
とは言っても、酒盛りに来たわけじゃないんで、地元系列局のスタッフは10時過ぎるとしゃきっとして「そろそろ行きますか?」とか訊いてくる
さすがに荘田君も、酔いが覚めて手持ちカメラのチェックを始める
俺はって言うと「特に用意するものもないんだけど、このデニムの服も破かれたらいやだな」とか、ついグチると、地元局の女性スタッフさんが「終わったらこっちで繕いしますよ」って言ってくれた

それで俺も元気が出て、「じゃ、俺、この辺り飛んで、熊ヤローがいるか探しに行ってきます」って飛び上がりかけると、地元局のディレクターが「ちょっと、その格好じゃ夜空に紛れちゃうんじゃないかい」って、大きな声でストップをかける(荘田君は他人事みたいにそれもそうだな、とか言うだけ)
それから、じゃあどうするってなって、地元局の女性スタッフと、高松さんの奥さんとで黄色のスカーフ持って来て「せめて、これを首に巻いてください」ってなった
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2023年03月11日

ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!B

がつっん!っと手応えがあった
大体、今まで全力パンチなんて打ち込んだことないんで、ヒグマがどうなっちゃうかなんて、考えないでやったんだけど、大きく後ろに吹っ飛んで、そのままごろごろっと転がって、慌てて起き上がると逃げて行く
人間だったら絶対立ち上がれっこない衝撃でも、野生の熊は平気なんだ、って俺は感心してた
「すごいっすねぇ、猪のときよりぶっ飛んじゃったじゃないっすかんじゃったじゃないっすか。体の大きさとか重さは3〜4倍ありそうだから、ランボーさんもパワーアップして、打ったんですね」荘田君が興奮して、喋ってる

「結構、全開パワーだったんだけど、粉々っていう訳にはいかないもんだねぇ」なんか、少し拍子抜けな俺
「ああーっ!あんまり突然だったんで、撮れてない!」荘田君が悲鳴をあげた
「撮ってなかったのかぁ〜」「すんません、次のやつは絶対撮りますんで」荘田君がぺこぺこ頭を下げる
陽もそろそろ落ちかかって来たんで、とにかく今夜の宿泊先の『丸イ伊藤旅館』に戻ることにした

超人ランボーのコスチュームがヒグマに破られちゃったんで、しょうがないから中の人状態になって、荘田君と二人で旅館に入っていった
旅館、と言っても民宿レベルの宿だったが、夕食はかき料理がメインで、あと煮魚とかいろいろあって、魚介好きの俺は大満足。荘田君はかきが苦手で(子どもの頃当ったらしい)、ヒグマやっつけたり飛んだりした俺は、ばり腹減り状態だったんで、旅館の女の人が驚くくらいご飯も、おかずも平らげて満足
宿泊費は局持ちだから、荘田君も刺身とか追加注文して、よく食った
寝る前に、明日も同じコースを、ずっと先の原生花園の方まで行ってみよう、って決まったところで荘田君はダウン、俺も珍しくぐっすり寝てしまった

朝は、旅館の人に起こされて(昨夜、酔っ払う前に荘田君が頼んだらしい)7時に起きて、食堂で朝飯食べたら出発だ
荘田君だけ自転車で、俺は歩きみたいで可哀相だからって、旅館でレンタサイクル頼んでくれて、俺もマウンテンバイクみたいなタイヤのぶっといのに跨って、荘田君の後に続いた
とは言っても、周りに人の目がなくなったとこで俺は自転車持って、高度500mくらいまで上がると、猛スピードで荘田君がサイクリングするコースを先回りして、床澤受信所っていうパラボラアンテナが付いてる鉄塔のとこに自転車を置いて(まだ本格シーズン前なんで人はいない)、こんどはヒグマのチェックも兼ねて、100mくらいの高さを、自動車くらいのスピードでのんびり戻る

その間に荘田君は、一生懸命走って“子野日公園”に着いていた
俺が、公園駐車所にいる荘田君の前に降りると「自転車、置いて来たんすね。勇太郎さんに空から見張っててもらわないと、怖くて」って、本当にほっとした顔をする
「こっちに戻って来る途中では、熊の姿は全然見えなかったよ」って言うと「今日は出ないのかなぁ」って、急に弱気になっちゃう荘田君
夕べも「カメラ回せなかったなんて、絶対許されませんから、明日は必ず出るように祈ってくださいよ!」って、何度も言ってたよな(俺的には責任無いんだけど、やっぱそうは言えないもんね)
posted by 熟年超人K at 17:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説