2020年02月04日

ランボー超人Bの物語―5 俺はランボー超人だーっA

できたら裏口から入ろうと思ってたんだが、裏口らしいのが見つからない
しょうがないんで、表通りに出た

平日の昼休み時間、ということで表通りには、近隣のサラリーマンやらオフィスレディが
かなり歩いている

もしかすると、Tテレの社員なんかも歩いているのかも知れない
だったら、いいタイミングなのかも知れん、と俺は思った

もう、さっきの怒鳴り声は聞こえないが、ビルの形状から見て、路地道から3軒目くらいが
お目当てのビルだろうと推理して俺は、とあるビルの前に立った

入口にはシャッターが下りているが、下が30pくらい開いていたので腰を深く降ろしてから
手をかけて、ぐぐーっと、力を込めて持ち上げてみた

ぐきっと音がして、シャッターは一旦重くなったが
こっちには力がいくらでも湧いて来る感じで、さらにぐいっと力を入れて持ち上げると

ばきばきばきーっ、ばしゃーんんとひどい音がして
シャッターが、ぐしゃぐしゃになって斜めに垂れ下がり、その奥に厚手のガラスの扉が現れた

そのガラス扉の向こうに、ワイシャツ姿の男が4人ほど、それからOLに見えなくもない30〜40代くらいの女が1人、全員びっくり顔で動きが止まった状態で俺のことを視ていた

「こんちは、すみませんねシャッター壊れちゃったみたいで…」俺なりに気を遣って、そう話しかけた
その声がきっかけになって、部屋の中の凍っていた時間が、はっと溶けて人が激しく動き出したぞ

迫力のある眼つきの若い男が、ガラス扉を開けて首を突き出して、がなり声でわめいた(その顔と声に、中学のヤンキー同級生を思い出す。警戒してるのがみえみえで、体半分事務所なのが頂けない)

「なんだぁ、てめえ、どこの鉄砲玉だぁ」いちいち語尾を持ち上げながら喋るのが面白いっちゃぁ面白い(なんて余裕かませていられるのは、自分が超人だって思ってるからだけど)

「ごめんですが、俺、悪者退治にやって来たもんなんで」一応、挨拶はちゃんとしておかんとね(よしよし、声は平静に出てるぞ)

「はあぁ、なに言ってんだぁ、おめえよぉ」俺の言い方がとぼけてるようい聞こえたんだろ、熱さが増して、とうとうガラス扉から出て来た

「親分さんって言うんですか、社長さんって言った方がいいんでしょうか、とにかくここの偉い人に会いたいん…」と、まだ喋ってるうちにジャージの胸ぐらが掴まれた(…結局Gパン赤Tシャツは軽過ぎに見えたんで、ブルー〇・リーを意識した紺のジャージ姿だったんだ)

後で思い返したら、なんてことなかったんだけど、その時はびっくりって言うか、やたら驚いたんで、反射的にその手を払いのけると、そいつは思いっ切り横に吹っ飛んで、4、5mくらい離れたとこの壁にぶつかって、跳ね返って床に落ちて動かなくなっちまった

その瞬間、俺の肩と腕と手にすごい力が駆け抜けて、同時に体と脚と腰にも鉄筋みたいにぴんとする力が入ったのが分かった

部屋の中の人たちもびっくりして固まってたけど、俺なんか、もっとびっくりだった
あいつ大丈夫かなぁ、と床に転がってる奴を見てると、またガラス扉が開いて、ワイシャツ姿の社員さんらしい、俺より年上感満載の人が出て来て「お前ぇ〜!」って言うなり、木刀で振りかかってきた

その瞬間に、その社員らしい人の動きがスローになって、俺はちょっと迷ったけど、バシッていう感じで、その木刀を右手で掴んだんだ。たら、木刀が発泡スチロールで出来てるみたいに、砕けちまった
またまた驚きの提供。俺も社員さんも、びっくりして突っ立ったまま

そのとき、やっと俺に自信が湧いた。間違いなく超人だ、スーパーマンだ。まだ、体が弾丸やナイフを跳ね返せるのか試してないけど、とにかくこれで大丈夫。そうなると、俺はますます図に乗るタイプで
とりあえず、まだ突っ立ってるワイシャツ社員さんの胸あたりを、どんと突く

よくあるワイヤーアクションみたいに、まっすぐそのまま後ろにすっ飛んで、ガラス扉に強く当り跳ね返って落ちた
ガラス扉が割れなくて良かったぁ、と俺は平和に反応したが、中の連中はそうはいかない

女子(?)社員は事務用机の下にもぐり込む者、部屋の奥目指して逃げる者、4〜5人いた男どもは、奥の壁を背にした大きな机の席に座っている一番年食って見える人以外、手に手に何か持って、こっちに殺到して来る

その人の群れに、慌ててガラス扉を押して、中に入ろうとした俺の手が強く当ってバッシャーン、と破裂したみたいに扉が砕けて、散弾銃で撃ったみたいにガラス片が、連中目がけてぶち撒かれちまった

俺を見る皆の眼に恐怖が浮かんだのが分かった
そりゃあ、びっくりだろう。パンピーそのものの俺が、厚いガラス扉を一撃で砕いちまったんだから、驚くのは当たり前だ

ただ、一瞬皆の眼に浮かんだ恐怖の色は、すぐに消えて(女子社員は慌てながら逃げ出していた)、男たちはどこから取り出したのか、伸縮性の警棒を手に、俺に向かって突進してきた

残念なことに、そういう動きもスローなんで、俺はすっかり落ち着いて、振り下ろされたり、突き出されたり、薙ぎ払って来たりの警棒を、ビシビシッと払い除けつつ、前に進んで行った(払いのけた警棒は、すごい勢いで壁や天井に突き刺さったり、折れて飛んだりで、持ってた奴は皆んな、手首を押さえてその場にすっ転んじまう)

「お前、どこの組のもんだ」それまで、一番奥側のでかい机の向こうに座ってた貫録たっぷりの親父が、いい声でそう言った、って、まるっきりVシネじゃん
「いやぁ、俺、正義の味方なんで、退治に来たんっすよ、ここの組を」なんて、練習してきた通りに、落ち着いて喋れた

「正義の味方、だぁ。なにを言ってやがるんだお前は」そんな問答してる間に、すっ転んでた奴の何人かが、携帯で誰かに連絡している
加勢を呼んでるんだと、ちょっとびびったが、まあ、あんなの何人来たって、どってことぁないや、と段々頭に乗って来た俺

「うるさいよ、あんたがここの親分なんかい?」いい気分だ、が、さすがに俺だって油断はしてない。どかどかいう足音が、壁の向こうから聞こえて来てるのは、分かっちゃぁいる
その足音聞いて復活したのか、右目の隅にきらっとひかるものが見えたと思ったら、背の高い男が腰の辺りに光る物を構えて、身体ごと突っ込んで来た

ほとんど同時に、小太りの背の低い奴も腰に光物を構えて、俺に飛び込んで来るのが見えた
こりゃ、すごい連携プレイだ
その迫力に思わずびびって、思いっ切り背の高い奴を右手で横薙ぎに払うと、ぼきって言うか、ぐしゃっみたいな派手な音がして、そいつが吹っ飛んで右の壁に当たったと思うと、その勢いのまま壁にめり込んじまった

その直後、どすんって背の低い方が俺の左脇腹にぶつかって来た
なんじゃぁこりゃぁ、って名セリフ言ってみたかったんだけど、実際はつるって感じで、なにかが脇腹を滑った感触があって、直後、ジャージが切り裂ける音がして、短刀持った手が飛び出した

え〜、買ったばっかなのに〜
頭に来たんで、両手でそいつを掴まえて、ぐい〜と持ち上げてやると、めちゃめちゃ軽いくせに、わめきながらじたばたするんで、バスケのシュートの要領で、さっき威張った口をきいてた親分のところに放った

だだーんと、ド派手に小太り男が親分の机にぶつかって、バウンドすると親分さんの頭すれすれに跳び越えて、後ろの壁にぶち当って跳ね返り、そのまま動かなくなった
その時、部屋の中のドアが勢いよく開いて、新手の男が3人飛び出してきた

アメリカだったら機関銃でも持って来たかったんだろうが、日本ではそうはいかない
っていうことで、その連中も警棒みたいなのや、スタンガンらしいもの持ってるだけだ

「てめえこの野郎!」とか「なんてことしやぁがんだ!」とかなんだかんだ怒鳴ってるけど
さすがに俺を警戒してるんで、そばまで来れずに、並んだ机の向こう側でわんわん言ってるだけだ

こうなると警察を呼べないことが残念だね
こっちも天下無敵みたいな気分になってるから、盛り上がっちゃって、そんならこっちからと

机の並んでるのを跳び越して、連中のところに行ってやろうってんで
ぽ〜んと飛び上がったら、天井にぶつかっちゃって大騒ぎ

なんかバズーカ砲でもぶっ放したみたいに、天井がぶつ破れて、がらがらばらばらっと
天井材やら梁やら蛍光灯やらが、落ちてひどいことになっちまった

俺もお笑いの芸人さんみたいに、顔が石膏ボードの粉まみれでひどいったらない
もっとも、もっと大変になってたのは相手の三人で、俺と違って普通の人間だから

いろいろ落ちて来た建材やガラスの破片をもろに浴びて、血まみれ傷だらけになっちまってる

まあ、こんな連中を相手にしているのもなんだから、とっとと一番偉い奴に会いたいんだが
どこにそれが居るのかが分かってない
んで、ほこりだらけ血だらけになってる三人のとこまで、歩いて進むことにした

邪魔な机やコピー機や、衝立なんかぽんぽん放り投げて、ずんずん進むと
明らかに連中は恐怖してるのが分かった

「もしもーし、ごめんねぇこんなにしちゃって。ちょっと訊きたいんですけど、ここの一番偉いさん
どこに居るのか、ご存知ですかー」一応、できるだけ丁寧に訊いてあげたんだが、誰も返事しない

「て、てめえ、どこのもんだぁ」声が上ずってる。しかも、同じような質問に参ったが、一応返事する
「どこのもんでもないんですけど、まあ、正義の味方みたいな者なんです。で、教えてくれます?」

「てめえ、親父のタマぁ獲りに来やがったんか」まあ、そう考えられてもしょうがないよな
「まあ、似てるけど、別に命をどうのじゃないんです。懲らしめに来たって言うか…」我ながら迫力ないなぁ

そのやりとりで出来た隙を突いて、三人の中で一番若い奴が、落ちてた警棒を手にして思いっ切り殴りつけて来た
もちろん、軽い衝撃を肩に感じたけど、痛くもなんともなかったので、それは放っといて話を続けた

「とにかく、あんたたちじゃあ話にならないんで、教えてくれよ、親分だか社長さんの居るとこ」少し強めに迫力込めて言ってみた
警棒の一撃が効果なかった奴が、今度は両手を広げて、俺に抱き着いて来た

男に抱き着かれるなんて嫌だったから、反射的にそれを振り払うと、うげっ、みたいな声を上げて床にひっくり反って、もがき苦しんでいる(両肩が外れたみたいだ)
その一連の動きに、喋ってた方じゃないもう一人が、逃げ出した

今度は俺も気を付けながら、ぽんとジャンプしてひっくり返っているいろんなモノを跳び越して、そいつの前に着地した
「ずっと、上の階だ、行けっこないぞ」度肝を抜かれた顔で、思わず、って感じでそいつが教えてくれた

やっぱり、この部屋に居る親分みたいな偉そうな奴は、中ボスで、ラスボスはもっと上に居るんだ
納得した俺は、今度は勢い付けて天井向けて飛び上がった(大して高層じゃないから各階ぶち抜いて進んじゃおう!)

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天井は簡単にぶち抜けたが、次の瞬間ガキッと頭が堅いものにぶつかって、俺は床に落ちてしまった
鉄筋のビルの構造がよく分かっていなかった俺は、石膏ボードの天井材をぶち破った後、上の階の床の鉄筋コンクリートに思いっ切りぶつかったのだ(別に痛くも無く怪我もしなかったけど)

えーっ、スー〇ーマンでもアイ〇ンマンでも、超人だったらビルでもなんでも、簡単にぶち抜くじゃん、って俺は頭に来て、もう一度、今度は力を込めて床を蹴って、真剣ジャンプ!
握りしめた拳を揃えて、コンクリートでもなんでもぶっ飛ばす勢いで、ぶつかった

バッキンンン…ン、とド派手な音がして、コンクリートの破片がバラバラバラバラって、降り注ぐ
それより厄介なのが、中に入ってる鉄筋で、曲がるんだけど、そう簡単に折れなくって、ミリミリメリメリ、蜘蛛の巣がからみつくようになって、俺の服はずたずたになっちまった

そういうぐしゃぐしゃしたのを、やっと体から引っぺがして、2階のフロアに立った俺は、皆避難して誰も居ない、えらくとっちらかったオフィスの中に居た
なにか変な感じがしたんで、部屋中見廻すと、天井の2ヶ所に監視カメラの赤い光点が見えた(俺を見てるんだろうな)

こんなに大変じゃあ、天井床ぶち抜き作戦は止めて、普通に移動するしかないなと思って、この部屋の出入り口を探して、廊下に出た
廊下を歩いて行くと、前方で何人かがばたばた動く音がするが、別に誰も襲っては来ず、すんなりエレベーターの前に行けた

エレベータースイッチに手を伸ばした時、ドアが開いて中に割と立派な感じのスーツの男の姿があった
やる気か、と構えた俺に、男はやけに丁寧にお辞儀をして「どうぞ、会長がお待ちです」って言うじゃないか

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大体、日頃は年上の男から(特に立派に見える奴)、丁寧に喋られたことなんてない俺だから、ちょっとどぎまぎしちまった
で、とりあえず「おう」と、偉そうに返事しといたが、実は、大した奴じゃないな、って見破られてるんじゃって、どきどきだった

これが、貫録の違いなのかと、マジでそう思い込みかかったけど、俺は踏ん張った
「一番偉いのに会えるんだよな。もし、違ってたら、もっと暴れて、このビルなんかぶっ潰すからな」おお、落ち着いた声が出てる、いいぞ!

俺の言葉には返事もせず、エレベーターの行く先ボタンを押す。BFだ
なんだ、上の階に居るんじゃなくって、地下に潜ってたのか

それからかなりボロボロの格好になってる俺と、ばりっとスーツを着こなしてる奴と二人、黙ってエレベーターで下に降りてった
「どうぞ」こちらに、と手で示すと、先に立ってエレベーターを出るスーツの奴、後に続く俺

頑丈そうな鉄扉が外に開いていて、その先に金のかかってそうな木の扉があって、それは内側に開かれている
まっすぐその先に、大きなデスクがあって、恰幅のいい60〜70才くらいに見える男がこっちを見てる

部屋に入ると、俺と同じくらいの年恰好の、やけにイケメンの男が、木の扉をすっと閉めた(閉じ込められたのか、と思ったが、俺はスーパーな男だから怖くない、と腹に力を入れた)
部屋の中は、落ち着いた薄暗い照明で、超人になった俺には問題なく全部見えてるが、デスクの年寄りとスーツとイケメンのほかにも、やせ気味の中年のダークスーツと、白っぽいスーツの若めの男がいる

「お宅がラスボスなんだ。なかなか会ってくれないもんで、いろいろ壊しちゃったけど、ごめん」謝ってるみたいで、下に見られるかも知れないが、一応礼儀は分かってるとこ見せないと
「暴れたみたいだな、お前さん。どこから来たのかね」渋いいい声で、年寄りが喋った

雰囲気に呑まれちゃいかん、と、前もって練習してきたんだけど、やっぱ大物感があるんで、俺たじたじ
「西から来たのか?」今度は、中年ダークスーツが、少ししゃがれた声で、俺を訊きただす

まずいじゃん、押されてるよ俺

posted by 熟年超人K at 14:34| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説

2019年11月14日

ランボー超人Bの物語―5 俺はランボー超人だーっ@

それで、早速あのアノ職業の方たちのリストをググって、手近な都内の2社をGマップで探した
大手2社の組本部は、意外に近くにあったが、テレビ局本社近くの方が便利に思えたので、そっちにした

それに、もう1社の方は目抜き通りに面してたから
暴れてる最中に、人が集まって来たりしたら、怪我する人も出ちゃうかも知れないし…

そうと決まれば、いじいじ考えてなんかいないで、即行動あるのみだ
スー〇ーマンみたいな衣装を用意するのはムリだから、ジーパンと赤Tシャツでいいか

俺の住んでいるアパートから、Gマップで見ると都心の組のビルまで直線距離で約30qくらいある
いよいよ本格的超人デビューなんだから、今回は空を飛んで行くつもりだ

ただ、飛んで行って突然ぶち壊しに来ました、って言うのもなんかなぁと思う
別にあの人たちに何かされた訳じゃないし、家族や親せきが迷惑受けてもいないのに

暴れこむ理由が、欲しいかなぁ
世間のレッテルだけで、ぶっ壊しに行っちゃうってのはどうもなぁ…

行けば、当然抵抗して来る組員の人たちを、殺しちゃわないようにするつもりだけど
大怪我くらいはさせるかもだし、部屋とか設備とか、マジ建物だって壊しちゃうかも知れないし

ならやめとくとか言ってたら、折角超人になったって、ご飯食べることもできないんだしなぁ
しょうがない、じゃあ行くか

まだ昼飯前だけど、やらなきゃいけないことは即やる!とか言ってたサブ店長の言葉を思い出し
アパートの窓を開けて空に飛び上がる

どうやって飛ぼう、と思う間もなく飛べてしまう俺に俺自身が驚いた
窓枠に片足をかけて、えいっと空中に飛び出すと、そのまま体が浮いて飛び出した角度のまま進む

一番近い感覚は、プールで壁面を蹴ると、体が水中を進む、あの感覚
でも、ふぃーっと力を入れるとスピードが上がるんだ

スケートのあの感覚かな
とにかく、出そうと思えばいくらでも増しそうなスピードを、コントロールできるようにしないと

飛べることに有頂天になっていた俺は、急に不安になった
誰かに見られたんじゃないか!、と

まあ別に、見られたら見られたで、いいっちゃいいんだけど
こんなアパートから飛び出した奴が、テレビで『“悪”はまかせてもらう』なんて言ってたら

なんだかがっかりちゃうもんなぁ、俺だったら
まあそんなこと、うじうじ考えてたってしょうがないから、ちゃっちゃっとやっつけるか

思い返すと、俺が窓から飛び出したのは大体45度くらいの角度で、空に向かって
10秒くらいしゅーっと上昇した処で一旦止まると、下の家や中学のグランドが随分小さく見えた

多分4〜500mくらいの高さだろうな、と実家に帰ったとき乗った飛行機の記憶が蘇る
わざわざ空を見上げてなけりゃ、俺が飛んでることなんて気が付きっこないな、って安心した

上から見ると建物の特徴や、案内表示なんて見えないので、どっちがどっちかちょっと迷ったが
いつもの駅が見つかったので、あとは都心に向けて線路伝いに東方向に飛ぶことにした

この辺りは米軍基地も自衛隊基地もあるので、結構航空機も飛んでるから、一応それらにも気を配って
1000mくらいと思われる高さで飛ぶことにした

ところで俺の飛ぶスピードだが、これが結構出るんだなぁ
軽く跳んでる積りだが、下の方を走ってる車や電車なんかは、すいすい追い抜けちゃうんだ

大体の感じで時速200qってとこかな
もちろん、もっとスピード出せる気がするんで、ジェット機くらいの速度はいけるとみたね

で、直線で30qだから、30÷200で9分くらいで目的地に着くはずだけど
実際は、探しながらとなるとそうスピードは上げられないと踏んだ

少し飛ぶと、緑の多いいかにも公園らしいところが見える(多分、小金井公園だ)
そのうち、南の方にもう1本はっきりした線路が見えて来た(中央線だな)

井の頭公園も見えてきたので、そろそろ吉祥寺辺りだ
ここからは、中央線を目印に飛ぶことにして、人も多くなるからもう少し高度を上げる

中野の明大校舎を過ぎると、高い建物も徐々に増え、もうすぐ新宿なんだと、なんとなくわくわく
やがて、中央線がぐーっと南にカーブする辺り、都庁や高層ビル群が見え、俺はさらに高度を上げた

じきに大きな川らしきものが見えて来た
となると、この辺りが市ヶ谷なので、大きく右旋回して南下する(Gマップで調べといたんだ)

念のため、ぐっと高度を上げると、皇居らしき森が見える
目的地は、ここから真南くらいのところにあるはずだ

それにしても、都心はビルが多いな
超人になってから視力も良くなっているけど、飛びながらじゃ、ごちゃついて良く分からない

車の運転してるとき、街の細かいところが見えていないのと同じだ
なので、空中で留まって下をよく見たいんだけど、ヘリみたいなホバリングができない

仕方ないので、少し高度を下げて、できるだけゆっくり旋回することにした
まあ誰かに見られても、しょうがない(見られることを期待?)と、腹をくくった

目立っているのは、白い0の形の新国立競技場だ(Gマップで見ていたので、すぐわかった)
で、すぐ近くの緑が新宿御苑で、似た0型の公園みたいなのが、多分明治神宮だ

だったら、よく聞く赤坂のTテレビルはその近くだよな、とつい独り言が出たとたん
あったあった、屋上ヘリポートのあるTテレビ本社ビルが目に飛び込んできた

とにかく真昼間なんで、道路にじゃなく、Gマップの3D画像で見当を付けていた
近所の非常階段があるビルの屋上に、すいっと降りた

めんどうぽいけど、屋上から非常階段に移って、普通に非常階段で地上に下りるつもりだった
(やっぱ、堂々と玄関から入っていきたい気持ちがあったんだな)

普通にビルとビルの間の路地道に下りて、きょろきょろ周りを見回したが、どのビルも普通で
有名な(俺でも聞いたことがある)組本部らしい建物はない

そこで、俺は落ち着いて考えてみることにした
超人なら聴きたい音だったら、聴くことできるんじゃないか、って閃いたのさ

その気になって、見当をつけたビルの壁に耳を当ててみると、聴こえる聴こえる
「だぁかぁらぁー、言ってるじゃないかぁ、それじゃぁ足りないんだよぉー」

若い男が、険のある声で怒鳴っているのが、どでかい音量で耳に飛び込んで来たんだ
なんの話だか分からないが、どうやら金が足りないって、怒ってるみたいだ

となれば、あれだな、やくざが素人衆にお金でも貸して、取り立ててるってとこだろう
やった!こりゃ懲らしめに行く理由になるゾ、と思った俺は早速そのビルの入口を探し始めた
posted by 熟年超人K at 22:52| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説

ランボー超人Bの物語―4 目指せ怪盗

…ということで、俺は怪盗になることに決めたんだけど
並みの泥棒と、怪盗の違いを知っておかないと、まずいんじゃないかと、気付いた

早速ウィキ〇ディアをググると、結局、盗みは盗みだが、かっこつけが大切だと書いてある
それから、ただ盗るだけじゃなく、それが悪い奴を懲らしめることになることが、大切なようだ

まず、世間の注意を惹くような“なにやらのナニナニ”みたいな名のある美術品とか貴金属を
『何月何日何時何分に頂きに上がる』みたいな予告をして、警備レベルを上げてから盗むこと

そして、肝心なのが、盗んだところになにか目印を置いてきて俺がやったぞと、アピールするとか
シルクハットにマントみたいな派手な格好を、一度警備の連中に姿を見せることが大事なようだ

シルクハットにマントが実用的でないのは、俺でも分かるので、ユ〇クロで買ったのを使うとして
後は、自分のマーク入りのカードとか、白手袋とか、バラの花とか、黒いとかげの何かの用意…

現場にそれが残されていて、かっこいいと思えるような小道具が、ぜひとも要るようだ
そこまで読んで、今の超人能力そのまま見せちゃあ、いかんだろと気が付いた

姿を見せておいて、かっこ良く立ち去るのにも、気球とかハンググライダーとかパラセールも要りそうだ
まあ、超人の飛翔力があるから、ジャンプ傘を持って飛び去ることもできるけど…

もっと大変そうなのは、マーク入りカードなんかは、作った店からすぐに身元が割れそうだし
ほかのものも、いつも同じような物を用意するとなると、そこから調べられそうな気がする

もっともっと大変なのは、美術品とか宝石とかは盗んだあと、売りさばくのが無理っぽい
盗んだものと分かっていても買い取ってくれそうな、口の堅い悪党なんて知り合いは無いもんな

となると、現金か、せいぜい金塊とかにするしかないんじゃないかな
どっちにしても、警察の内部資料に怪盗〇〇って、呼ばれるくらいがオチだろ

なんとか怪盗らしくしたいんだったら、世間の評判が悪い奴だと言ってるような奴とか会社から
盗むしかないんだろうなぁ

そこまで、考え続けてたら頭が熱くなったんで、もう寝ることにした
夢の中で、いいアイデアが見つかるといいんだが…

夜が明けても、なにかヒントになる夢なんて見たか、思い出せなかった
結局、場所も分かっていて、盗んでも世間の批判を浴びないとこって言うと

あの職業の方たちの事務所か、悪いことしてそうなブラック企業さんか
俺的にはきっと悪いことしてると思える政治家さんや、お役人さんならいいかな、って思った

まあ、他にもいろいろあると思うけど、民衆的にはOKでも、法律的にはあかんだろな
とにかく、かっこ良く決めて、世間を敵にしないことだな、ポイントは

となると、後はやり方が問題だよ
超人の腕力で、金庫なんかを強引に持って来ちゃうのはNGだろ

それに、怪盗だったらあるあるの“変装”だって、戦隊ものやアニメみたいなのは
素人の俺には、絶対無理っぽい

服は、用意した〇ニクロのはコンビニ強盗に間違えられそうだから、やめ!
リサイクルショップで、パーティ用のド派手な衣装を買う(ついでにマスクも!)

肝心の参上先のうち、あの職業団体さんはググったらすぐに出て来た(大手の本部だけど)
住所も出ていて、随分便利だ

ブラック企業のリストも載ってたけど、働かせ方が過酷なだけなのかも
実際はもっと悪いことをしているところがあったら、不公平になるし

政治家とかお役人とかになると、もうさっぱりわからない
悪そうなのが、案外真面目に働いてるとかもありそうだしな

…あーっ、もうめんどくさい!
怪盗はやめやめ、超人パワーでどこか1個やっつけちゃって

テレビの取材が来たら(来なかったら押しかける)、それで全国に呼びかけよう
「警察では対応できない“悪”は、任せてもらう」みたいな感じでいこう

「活動費は、悪から頂くので、ご依頼料は無料です
あなたの知ってる“悪”教えてください、ご連絡はこのテレビ局へ」なんてね

あとは、テレビ局と相談、だな
なんだか、これでいける気がしてきたぞ
posted by 熟年超人K at 17:14| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説

ランボー超人Bの物語―3 正義の味方って大変

あれから1ト月
電車の屋根を突き破り、ついでに架線切断まで仕出かした俺

朝の通勤ラッシュ時間に、何十本もの通勤電車の運行停止を引き起こしたあの事件は
1週間に渡ってテレビとネットを賑わせていたが

表向き、なんらかの爆発的事象だったということで徐々に収束していった
実のところ国の治安機構の方々は、恐るべき破壊能力を有する実行犯を追っていたんだけど

なんてことは、一般人で能天気の俺は全く知らなかったが
さすがに、この1ト月というものは、できるだけ大人しくしていた

会社には体調が良くないことを理由に、休みを取っていたが
それも5日目には『もう来なくていいから』という電話で終了

ちょっとだけの給料の払い込みで、俺は全くの自由人になってしまった
一応最後の給料が振り込まれた通帳の残高を眺めたが、今月の家賃とかあれとかこれとかで、ヤバイ

まあ超人なんだから、食うには困らないだろうと、俺は深刻にはならず
なにかヒントはないかと、テレビの報道番組を観ることにした

しっかし、今までつまらないからって、ほとんど見てなかったテレビ番組は
本当にどうしようもないものだと、あきれてしまった

とにかく経済とか年金、隣国との付き合い方なんてのは、超人だってどうしようもない
まあ、議事堂をぶち壊したり、総理大臣を脅して、何か喋らすことくらいはできそうだけど

それで問題が片付くとは、落ちこぼれ者の俺でも、そこまで楽観的にはなれない
ハリウッド映画のヒーローみたいに、ぶち壊してそこでエンドマークなら問題ないが

それだけじゃあ終われないのは、もう良っくわかってる
なんだかんだ言ったって、世の中、はっきりした「悪」は見えないんだ

そんなことを考えてるうちに、お腹が空いて来た
まずいぞまずいぞぉ、超人だって腹がへるんだって事実に直面だっ

人間、追い詰められると本性が出る、というが
俺自身、自分の本性なんて真剣に考えたことがない

まあ、履歴書や職場の自己分析表に、長所や短所として書いたことあるくらいだけど
いざこうして、飯が食えるかどうか、住む場所がなくなるかどうかの狭間に追い込まれると

そうそう明るい展開は考えられなく、まだよくわからん超人力でどうやって生きてくんだか
くよくよしてるヘタレな俺がいるんだなぁ

どうもめちゃなパワーがあるのはわかってるが、それで金を稼ぐのはちょっと難しそう
肉体労働だったら、人の何十倍もやれそうだけど、俺は好きくないんだ

どうせなら、もっとカッコよく超人したいし、女の子にもモテたいし
親や親戚にも、肩身が狭い想いはさせたくないしな

そこで俺はなにをしたかというと、レンタルDVDを借りに行った
〇〇マン的なのを全部借りてきて、超人ライフスタイルの参考にしようってわけだ

でも結局、参考になったのは、日常生活は隠すべし、ということだった(ア〇アン〇ンは別)
そりゃそうだよな、分かったらサイン攻め、はともかく、お仕事の依頼されたら困るし

いろいろぶっ壊しちゃった後の始末なんて、着けられんもんな、力じゃビルなんて建てられん
だからって、いろいろぶっ壊さないように戦う超人なんて、やってられんだろ

それに、悪の組織なんて知らないし、後は暴力団とか外国のテロ組織とか、外国の軍隊くらいだろ
超人と戦う相手なんて…(地震や台風も戦える相手じゃないもんなぁ)

ということで、とりあえずスマホでツイッター登録して『正義の味方引き受けます、料金応談』
とツイートしてみることにした

そうなると、らしい“仕事着”探しにブッ〇オフでも行こうかな、予算はなるべく抑えて!
なる早で、暮らしを軌道に乗せんと、俺の将来、スーパー暗いもんなぁ

それからブック〇フの古着コーナーに行ってみたが、スーパーマンっぽい服なんてない
ハロウィーンみたいなコスチュームなら100均にあるんだけど、なんかめちゃペラっぽくてバツ

全〜然、正義の味方らしくない
結局、ショッピングセンターのユニ〇ロで、ジョガーパンツとドライストレッチウェットパーカーのブラックを7538円也で購入

季節的は冬間近だが、超人になっているお蔭で、これだけでもちっとも寒くない
これにスポーツリムレスサングラス1620円也をかけると、なんとか俺流の正義の味方らしくなった

1万円弱が消えたが、これで正義の味方を安心してやれる気がしてきた
後は、ネーミングを考えとかないといかんな

名乗った方が良い時が、きっとあると思う
で、腹も空き空きなので、フードコートでバーガーとラーメンを食べながら考えることにする

一応、ツイッターを確認して(もちろんまだなんの応答もなかった)から
パクつき始めたが、ほんと注意してないと、すごい速さで口の中に消えてしまう

その気になったら、一瞬で食べ終ってしまいそうで、あせった
別に、フードファイター目指してる訳じゃないから、そんなことで目立ちたくない

なんとか普通の運動男子に見える程度に時間をかけて、食べ終わり
一応ひまなので、店内をぶらつくことにした

すると、なんだかすごく目と耳の感度が良くなっていて
人の怪しい動きが目立ち、そいつの心臓のどきどき音とかが、耳に入って来て仕方がない

つまり、万引きだこれは
万引きしてる奴とか、これからするぞ、ってのがよく分かってしまう

正義の味方なんだから、掴まえるとか、そいつに注意してやろうか、とか思ったが
そんな小粒のワルをどうしたって、仕方ないんじゃないか、と思い返した

それに、ここだけで結構いるってことは
小物に関わり合ってると、きりがないってことだよな

なんだかめんどくさくなって、食品売り場で安い食パンだとか、インスタントラーメンとか
ソーセージだとか、あとお米の10s袋とか買い込んで、アパートに戻ることにした

すれ違う人がびっくりするくらいの大荷物を持って、部屋に帰ると
まずは、テレビの夕方ニュースを観て、やっつけるべき“悪”を探し始めた

結局のとこ、はっきり“悪”がしてる事件なんて、ほとんどないことがわかっただけだった
もちろん、無差別殺人なんて起きたら、はっきり“悪”と言えるけど、日本じゃそうそう起きてない

政治家の馬鹿な発言や、東京の中央市場の移転に関したことや、ちょっと前にあった
総理大臣のご威光を利用した、国の管理していた土地の格安払い下げ問題、宗教団体が起こした事件

隣りの国が好きだとか嫌いだとか、少子化問題に、高齢者の比率が高い未来、引きこもりの中年問題に
子どもの虐待、年金制度の将来、地球温暖化と天候異変、外来危険生物の増加…etc

ざっと俺が考えただけでも、問題山積みなのに、スーパーマンじゃ片付かんことばっかじゃん
学校の成績が下半分の俺でも、分かるよそれくらい

頭にきて、いっちょスーパーマンになって、めちゃ暴れたろか、って思ったりもしたけど
そうすりゃあ、電車で暴れて逃げ出したことの繰り返しで、今度こそ警察沙汰になるだろうしなぁ…

こうなってくると、なんで俺が正義の味方にならなきゃいかんのか、それもわからない
言えるのは、会社をクビになって、仕事が無い→稼ぎが無い→食えない、ガス電気水道家賃払えない

そしてその先は、近々ホームレス→自暴自棄→超人力で大暴れ→国民の敵になり→親悲しむ
女の子にも嫌われ、どこに行っても居場所がない→いっそ死のうと思っても超人だから死ねない

何て、悲惨な近未来が浮かんで、俺は鬱になってしまいそうだった
が、そのとき閃いた!突然解答が脳のどこかから浮上したのだ

そうだ、怪盗になろう!
怪盗なら、超人力が即、役に立つし、格好さえ気を付ければ女の子にもモテそうだし

収入面は、大丈夫(まあ、盗んじゃっても気にならない連中は、それこそ一杯いるし)
後は、超人力をそのまま出さずに、なるべく怪盗らしい盗み方を考えられれば、いけるぞっ!

ということで、当面の問題が解決できた俺は、とりあえずゆっくり寝ることにした
(まあ、隣近所の声やら音楽やら、なにやらかにやらの音が耳について仕方ないが、そのうち……)
posted by 熟年超人K at 17:09| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説

ランボー超人Bの物語-2 痴漢退治の朝

ぱちっと目が覚めた
いろんな朝の音が耳に飛び込んで来たが、大事じゃないと思った音は次々ボリュームダウン

なんだかものすごく腹が減っている
冷蔵庫を開けて牛乳の1gパックを取り出してそのままがぶ飲み

食べ残してたバタールをぱくぱくぱくっと食べ切ってしまって
牛乳も飲み尽くし、まだなにかないかと冷蔵庫を開けマーガリンがあったんで、それも食べてしまう

急にエネルギー満タンになった気がして、気持が落ち着く
テレビのリモコンを、壊さないようにそっと操作してニュース番組を観ることにした

S市で子供が軽トラにはねられて重体というニュースに続いて
M市のアパートで火事があって82才と79才の夫婦と連絡が取れていないというニュース

折角俺がスー○ーマンになったってのに、これじゃぁしょうがない
だって、起きてしまったことを知ったってどうしようもない

こりゃあ、事件が起きる前に、そこにいることなんてできないんだから
事件や事故は、よっぽど運がなけりゃ防げないんだ、と俺は納得した

だが、これで引き下がったんじゃ超人になった甲斐がないってもんだ
じゃあ、確実にある“悪”を叩き潰せばいいんだ

確実にある“悪”って言えば、暴力団とか汚職政治家とか、外国の独裁者かな
てなことを、ぼんやり考えていたが、気が付くと時計は8時を過ぎている

いかん遅刻だ、と、どっきりしたけど、そうかもう超人なんだ
空を飛んで行けば間に合うし、いやいやもうあんな会社辞めたっていいんだ、とほっとする

だけど、いいのかそれで、という俺もいる
どうやって超人で食っていけばいいんだ

なにができるか、まだよく分かってないんだから
とにかく性能テストして、それから金を稼げそうな仕事を始めたらいいんじゃないか

そうだよな、映画のもテレビのもマンガのヒーローも
なんとなく活躍してるけど、そりゃうまく相手が出て来てるからで

まず相手探しから始めなきゃいかん俺とはちがうもんなぁ
都合のいいナントカ戦隊本部だって、現実にはある訳ないし

ということで、まずは普通に会社に行くことにした
普通に満員電車に乗ってだ

さすがの超人効果だ
満員になっている通勤通学の人の圧力なんて全然苦にならない

ただ、嗅覚や聴覚も超人的になったお蔭で
体臭や化粧の匂い、スマホのイヤホンから漏れてくる趣味じゃない音楽などが気になって仕方ない

そんな通勤電車に揺られながら、会社辞めて、スーパーヒーローで生きる道があるか
ぼんやり考えていた俺の耳に、ただならぬ音声が飛び込んで来た

『…やめて、くださ、い…』若い女の押し殺したような声
こりゃあ痴漢だぞ、この満員電車の車内で今、痴漢されている女の子がいるんだ

そう思った俺は、混雑している車内を睨み廻して、声の主を探した
俺好みの、清純で可愛いのに出るところは出ている、アイドルみたいな娘の姿を求めて

次の声が聴こえないので、混み合っている車内を、ぐっと眼に力を込めて眺めると
ほぼ満員になっている乗客の体が、徐々に透け始めて、何人もの人影の重なりの向こうに

なんとOLらしき女性の臀部に、手を当てて微妙に動かしている中年サラリーマンの姿が見え
おっ、こいつか、と思ってさらによく見ようとすると、その部分がクローズアップするじゃないか

よし、助けてやろう、と思ったけど、人混みなんで動けない
えーい、邪魔だと、取り敢えず痴漢され、してる二人に向かって目の前の男子高校生を横に動かす

すると、高校生はおおげさに「うぉっ」と声をあげて、横に立っている若い背広男を巻き込んで
俺の左側の席に座っている連中に倒れ込んでいった

その段階で、その倒れ込まれた辺りを中心に、皆が口々に大声で
自分に向けられた理不尽な圧迫に対して、苦情を叫び始めた

ところが俺は、とってもスムーズに人混みを分けて進めることに気を良くしていたので
そんな騒ぎが気にならず、次の人混みを力加減をしながら、どんどんかき分けて

“され・してる”カップルに近付いていった
どんどん大きくなっていく、なぎ倒された人々の阿鼻叫喚に気付かずに、だ

大きくなってきた騒ぎに乗じて、痴漢野郎はますます行動をエスカレートさせている
そして彼女は、なんとか逃れようと身をよじる、という密やかな攻防

そして、その様子が見え聴こえしているだけに、オス的に血が上っちまった俺
車内の人々は、ただただ自分に加わえられていく圧力に耐え切れなくなり

女性客が悲鳴を上げ始め、続いて我慢の限界に達した男性客の、うめき声があちこちで上がる
俺はと言えば、そんな状況を把握する気もなく、ただただ邪魔な人垣に対する怒りが高まってくる

だが、超人の力とは言え、これだけびっしり人が詰まっているとなると
単純に力任せにかき分けようとしたって、そんなに簡単にことは進まない

ふっと思ったのが、超人的にはここで飛び上がって、電車の屋根を突き破って
あの二人のいる辺りに再突入、って考えも浮かんだんだけど、それはないな

走ってる電車の屋根を突き破ったら、どんなことになるか大体の予想はつくよ、俺だって…
じゃあ、どうする、彼女の抵抗する力が、少し落ちてきている…ような気がするが

もう、もたもた考えてる場合じゃないだろ!と、馬鹿力を開放する
ぐわっと人混みを押しまくると、乗客がばたばたっと押し倒されていって

彼女と痴漢野郎のところまで、と言いたいところだが、彼女も痴漢野郎も巻き込んで
俺が押した先の人混みは、押し倒された人、その人に乗っかられた人、さらに下敷きになった人人

もうめちゃめちゃな状態が生じて、俺は茫然とそのありさまを眺めているだけで
そんな俺を恐れている目や非難の目に、包囲されているんだ

ランボー超人Bの物語 その2痴漢退治B

(彼女も含む)皆の視線に晒されて、居場所が無くなった俺は
乗客の手元にスマホが何台も出現するに及んで、もう逃げるしかないと覚悟した

それと同時に、車内の皆の動きが急にゆっくりしたものになった
それこそ、超スローモーションで動いてるんだよ

これは、俺が超スピードで動いてるからだ、とわかったね
漫画の超人やヒーローは、これができるんだ

ということは、確か俺が素早く動けば、連中には姿が消えた、としか思えないはず
で、俺は勢いよく飛び上がってみた、さっきの思いつきを試すことにしたんだ

ジャンプした瞬間、いろいろなことがさぁーっと頭に浮かんだ
そうだ、俺は超人になったようだが、なんだかんだで、まだ空を飛んだことが無い

まあ、イメージはあるんだが、大丈夫だろうか、とか思った次の瞬間
バコーッみたいな音がして、俺は電車の天井をぶち抜いて、屋根もぶち抜いて

その上にあった電線もぶち切って、朝の大空に飛びこんだんだ
空中で止まるのも案外簡単で、全力で走り出しても、止まりたかったら止まれる、みたいなもんで

どうだろ、200mくらいの高さで空中浮遊できてる
下では乗ってた電車が、5〜600m先に急停車している

架線が切れてるから、停電で電車が止まったかも知れない
となると、こりゃオオゴトになりそうだ

責任なんて取れっこない俺は、下の連中から見つからないうちに、一気にもっと高い処目指して
急上昇することを選択したのは、まあしょうがないよね
posted by 熟年超人K at 17:03| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説

ランボー超人Bの物語-1 物語のスタート

ある日、宇宙人(地球人じゃないと思うよ)の時空滑走機ってのに
出合頭に衝突され、時空警察(?)に訴えないことを条件に、超人にしてもらった俺

入社して6ヶ月の外食チェーンの店長見習い(正社員採用だったんで)の前途に
なんの未来も感じてなかった俺は、渡りに船と(この表現〇だよね)超人人生を選択したのさ

超人化は、宇宙人の時空滑走機の中で行われたんだと思う(超人化OKしたらすぐ気を失ったんだ)
頭がはっきりしたんで、Gショックを見たら23時17分で止まってた(スマホは充電切れになってた)

居酒屋チェーンで飲んで、本部の上司のくだらん説教からエスケイプしたのが10時ちょっと前で
それからコンビニで缶ビール買って、どこかのちっちゃな公園のベンチで飲んで

パトロールのお巡りさんが来るのが見えたんで、慌てて公園から出ようとしたら何かがぶつかった
なんで公園の中に車!?と思ったのは一瞬で、どんとその場に倒れちまったそのとき

『この時間帯のこの場所に決して惑星人などいないはずなのに…』ていう女?の声がしたよ、確かに
なんだぁ、と反射的に思ったけど体は動かず、視界が赤くなってたから出血してるみたいだった

どうもすみません…みたいな声が頭の中に響いて、俺は、いいから病院に連れてってくれ、と思ったんだ
で、それは無理だけどお詫びにこの惑星住民の基準からしたら、超人みたいにするから

それで許してな、みたいなこと言って、もう気を失いそうな俺が
なんでもいいから助けてくれよ、とか思ったとこまでで、記憶が途切れてるんだ

こうして、両足でしっかり立つことができて、肩も腕もぐるぐる回せるし
体調もいいみたいだから、まあいいか、と

で、ちょっと軽く走ろうとしたら、すんごいスピードが出ちゃって
コンクリートのトイレにぶつかっちゃって、しかもそのトイレをぶっ壊しちゃって、まだ走る

慌てた俺は急ブレーキ、って言うか立木のところで急停止さ
だってそうしないと、公園の外に並んでる住宅に突っ込んじゃいそうだったもの

落ち着けよ俺、と3回くらい唱えてから、辺りを見廻したら
さっきのトイレの破壊音がでかかったんで、そこらじゅうの家の犬は吠えるは窓が開く音がするは

パトロールのお巡りが無線で話す声はするは、とんでもない大騒ぎになったんで
俺はびびって、とにかくここから逃げたい、って心底思ったんだ

それで、思い出したのが俺は超人にしてもらった、ってこと
じゃぁってんで、半信半疑夜空に向かって飛び上がってみたら、飛べる飛べるぐいぐい飛べる

ぴゅーって飛べて、むちゃくちゃいい気分だよ
どうも目も耳もよくなったみたいで、注意して視たい聴きたいとこを意識すると、全部わかっちゃう

そうなんだ、空から見下ろすと、この町の小ささが分かるね
とりあえずアパートに戻って、この先の人生でも考えよ、ってご機嫌中の俺ってわけ

アパートに帰るったって、そこは折角超人になったんだから
ぴゅーっと空を飛んで帰るよね、フツー

だけど、さすがにこの格好じゃ変だろ、って俺は思ったんだ
だって会社帰りに飲んだ後だもん、リーマンまんまじゃん

これで空飛んでたって、変な奴にしか見えんだろ
やっぱ、これから先、超人として活躍して有名になる予定の俺だからさ

だもんで、走って帰ることにした
さっきのトイレぶっ飛ばし事件みたいな、スピードの出し過ぎにはくれぐれも気を付けんといかん

まずはスローに慣らし運転で走ってみた
出る出る、ゆっくりめの積りでも、走ろうとするとスピードが出ちゃうんだ

まるで、ぐるぐる回転する脚の上に乗って走ってるようだ
それで住宅地を抜けて、国道に出た

ここなら大丈夫、と思ってスピードアップすると
あっと言う間に先行して走っている車に追いついて、追い越しちまう

乗ってる奴のびっくり顔が、8K並みにくっきり見える
ドライブレコーダの画像、後でNETに上がっちゃうかもな

ま、しょうがない
超人になるってこたぁ、そういうもんなんだよなって、自分で自分に言う

アパートのドアを壊さないようにそこに気を付けて、部屋に入る
電気点けなくても、部屋の中ははっきり見えてる

ベッドに寝転がる時も、その前に部屋着に着替える時も、力の加減を調節するのが大変だった
超人になったら、とにかく慌てないこと、焦らないことが肝心だなって、これが1日目の教訓だな
posted by 熟年超人K at 16:55| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説