「皆んなー静かにしろー!」制服警官の中の一人が大声を出した
俺らにちょっかい出して来たダークスーツ野郎の仲間は、警察がよっぽど嫌いとみえて、ばらばらになって客席の中に逃げ出し、どっちかって言うと正義の味方気分だったブルードラゴンズのメンバーは、警察が来てくれて良かったー、みたいな感じで、安心して突っ立ってる
だけど警察の方から見ると、あっちもこっちも同じように見えるらしく、思ったより暴れそうな連中が多いと見て、増援を要請してる(俺には聞こえてる)
入口と裏口を塞がれちゃったんで、40〜50人いる客は、仲間同士でがやがやしてるだけ。俺らとダークスーツ野郎の仲間以外は、ただ見てただけだって思ってるから、そんなにあせってない
俺ら、特に引率の先生みたいな立場になっちゃった山下さんは、大分パニくってて、おろおろしてるのをリーダーとマミちゃんが慰めてて、他のメンバーと俺は、もうしょうがねぇなーな感じでVIP用ブースに戻る
ダークスーツたちは、なんとかばっくれたくって、警官に体当たりして幹部だけでも逃がそうとしてるみたいで、あっちこっちで小競り合いしてる
俺の方は、別に拘置所に放り込まれたって、勝手に出て行けるけど、ブルードラゴンズの皆んなのこと思うと、それは無理かなーとか、のんびり考えてる
そのうちに、応援の警察官も到着して、まずダークスーツ組が、かなり乱暴に扱われて連れ出され始め、続いて俺らが居るVIP用ブースにも、警官が来て「任意聴取するから、同行願います」みたいなこと告げて、連れてこうとする
山下さんが、大分気を取り直して警官たちに「自分らは絡まれてただけだから」とか、一生懸命言い訳してるけど、どっちみち警察は全員連れてく気なんで、聞いてもくれない
結局、店のスタッフも含めて、見物してただけの客も、全員警察署に連行された
ダークスーツ組の連中は、別扱いになって、見物してただけの連中と店スタッフは、会議室みたいな大部屋に連れてかれ、俺らはどっちかって言うと別扱い系の、そこそこの広さの部屋に入れられ、一人ずつ小部屋で話を訊かれることになった
俺は、ダークスーツ連中と揉めてたのを見物組の何人かが、チクッたみたいで、ドラマで観るような(部屋に向うから誰かが見てる鏡がある)取調室に入れられた
一緒に入った(制服じゃない)刑事らしいゴツイ二人と、記録係みたいなのが一人とで、俺から調書を取りたいらしい
「名前は」ぶっきら棒に、対面に座ってる30代くらいの刑事が、ぼそっと喋った
「かみつじまがりゆうたろう、です」言いたくない、っていうのも言ってみようかと思ったけど、ここはブルードラゴンズに迷惑掛けないように、素直に返事することにした
「なに?かみ、つじまがり、だってぇ。どんな字を書くんだ」って、言うんで、出したノートに漢字でちゃんと書いてやった
「ふーん、変わった名前だなぁ」って、向かいの奴がちょっと感心した風に言うと、横に立ってる少し若い刑事が、慌てて年上の方の耳元に口を寄せて、ごにょごにょ告げると、びっくり顔になった向かいの刑事が
「お前、いや、あんたって、あの超人ランボーとかいう、あの超人なのか?」って言った
俺が「はあ」って答えると、年上刑事が立ち上がって「ちょっと、待っててくれ」って言うと、慌てて部屋を出て行き、残った若い方の刑事と、記録係の制服の人が、なんかどぎまぎした風に黙っちまった
しばらく、部屋の中が静まり返っていたんで、俺は我慢できなくなって「どうなんっすかねぇ、もう帰っていいんですかねぇ」って、低姿勢で声掛けたけど、若い刑事さんは「自分はなんにも言えない立場なんで…」って、困るばかりで、なんにも言えない状態
そのうち、廊下を何人かがやって来る音がしたんで、ドアを透視して見ると、さっきの年上刑事と、中年のもっと偉そうな私服刑事と、制服を着たもっと偉そうな年配の警察官が、あせあせした様子で、駆けつけて来て、制服は隣の部屋(多分鏡の奥)入り、刑事二人が、こっちの部屋に入って来た
「お待たせしました。恐れ入りますが、もう少しだけDJバーであったことをお話頂ければ、もうお帰り頂いて結構ですので」って、むちゃくちゃ低姿勢になってる
2023年05月27日
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