2023年04月29日

ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!H

「はあ?」って、思わず間抜けな声が口から出た。なに、なんか驚かせようって二人で企んでんの?って思ったけど、顔が真剣、空気が深刻、狭い玄関口に重苦しさが充満する
「とにかく中に入ってよ」って、言っといて自分が先に部屋に戻る(駒ちゃんが来る予定だったから、変なものは出てないはず)
俺が先に椅子に座ってると、駒ちゃんと荘田君が落ち着かない感じで入って来た
「ネットチェックしてないでしょ」椅子に腰かけながら、駒ちゃんが言う(そう、なんだかんだで、テレビ観てるだけで、ネットは雨雲レーダーとスポーツくらいしか見てない

「炎上っすよ、炎上しちゃってんです、ヒグマ退治」荘田君が煽る
「昨夜、放送あったでしょ。最初、あの時間帯では、まずまずの視聴率出してたんだけど、番組終了後に動物愛護団体のなにやらってとこから、クレームが入って…」「そうクレームを出しといて、そいつら局の対応を、まんまネットで生中継したんで、騒ぎがどんどん大きくなっちゃったんですよ」駒ちゃんに荘田君が続けて説明する
「えーっ、だって高松牧場の夫婦、あんなに喜んでたじゃん」あの時の、涙を浮かべていた夫婦の「牛たちの仇を取ってくれて、ありがとねぇ」って言う言葉が、忘れられない俺だった

「それがですねぇ、あの人たちも、北海道の視聴者も皆んな喜んでくれてたんですけど、愛護団体のクレームが、可哀そうなヒグマを殺さなくってもいいじゃないか、って論法だったんで、段々、ヒグマが可哀そうだっていう意見が多くなって…」
「ヒグマを空に持ってって、落っことしたのが、卑怯だっていうリプがどんどん増えて、次に、勇太郎さんは超人なんだから、適当にあしらえば、熊は山に逃げてったんじゃないの、とかも…」

「えーっ、だって俺、結構ぎりぎりで闘ってたんだけど」って俺。「そうでしたよねぇ。僕も一時期、やられるんじゃないかって、心配してたくらいでしたもん」荘田君が、観戦者としての感想を付け加える
「とにかく、それが夜が明けて、ますます炎上して、他局も悪乗りして超人ランボーのやりたい放題を糾弾!とか、どっかから連れてきた動物行動学の先生に動物好きのタレントを加えて、アンチTテレで言いたい放題なのよ」「ウチの局は、ばっくれてて知らん顔なんっすよ。僕、この先はないぞって言われました」荘田君の泣きが入る

本物のヒグマを見てもないのに、なに言ってんだ!っていう声が、俺の頭ん中から噴き上がった
「その連中の事務所って、場所、分かってるんです?」
「調べれば分かると思うけど、どうすんの?押しかけるの」「そうだね、ま、そんなとこかな」
「だめですよ〜。動物愛護団体って、世界中にネットワークあるんで、敵に回すと煩くってたまんないらしいっすよ」荘田君に続いて、駒ちゃんも「動物好きな人は、そこらじゅうにいるから、スー○ーマンだって敵わないわね」って言う

「動物好きって言うより、なんか悪意を感じるんですよ」荘田君
「どこかの誰かが、超人ランボーを貶めようとしてるって言うの、荘田さんは」って駒ちゃんが荘田君を見る
「だって、どう考えたって、牛を襲われ続けて困ってる牧場を助けたって話じゃないっすか。それを動物愛護団体が、ヒグマだけ可哀そうだなんて、どうかしてますよ」本気で怒ってる荘田君を見てると、俺の心の中も大分落ち着いてきて、なんか無茶苦茶暴れたくなってたのが、鎮まったのがわかる

その後、缶ビール飲みながら誰が、ウラで動いてるのかちょっと話したけど、結局、三人ともそういう世の中の裏なんて知らないんで、大して話も続かず、駒ちゃんと荘田君は「元気出してね」って言って、帰ってった
(駒ちゃんと荘田君は、偶然このマンションの玄関ホールで会ったとかで、まだ非公開の俺らだから、帰るしかなかったんだ…)
posted by 熟年超人K at 11:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説
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