2023年03月26日

ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!D

黄色のマフラーを巻くと、なんか出演者気分になって、人からどう見えるのか気になってしまう
牧場経営の高松さんのお宅には、姿見なんて洒落たもんないんで、俺はトイレに行くような顔して部屋を出た
トイレに行く途中にある廊下の窓なら、中が明るくて外が暗いから、俺の姿が映るはずだと思ったんだ
デニムのシャツに黄色のマフラーをした俺は、昭和の映画スターみたいに見えるかも?
と、その俺の顔の横の闇の中をなにかの影が横切ったのを視た気がした
なんだったんだろうと、俺が今の場面を思い出そうとしたとき、驚いたことにその場面が頭の中に浮かび、ビデオをスローで再生するみたいに、その影が左から右に動いたのが見え、その影が大きな四足の動物だってことまで分かった(超人の知らんかった能力か!)

こいつぁヒグマだって確信したんだけど、荘田君たちに知らせる方がいいか、このまま戸外に出て影を追う方がいいか、ちょい迷ったけど「ヒグマが出たぞー!」って怒鳴っておいて、影を追うならキッチンのドアから飛び出そうって判断して、高速移動した
あせって動いたから、そこらじゅうにぶち当りそうになったけど、なんとかうまく走り抜けて、キッチンのドアを壊さずに瞬速で開けて、真っ暗な裏庭に飛び出した
下弦の一日前の月は、厚い雲に覆われてて、裏庭もその向こうにある牧場も真っ暗闇だけど、俺の目は、見ようって真剣になったら、赤外線カメラよりしっかり見えることがわかった

外に出たところで動きを止めて、周りの様子を探ることにした(おっちょこちょいの俺にしては珍しく冷静)
まず、耳を澄まして音を聴いてみた。結構いろんな音がしている。
母屋では、皆のがやがや喋っている声、椅子ががたんと鳴る音、食器がかちゃっと鳴る音、ドアが開いたり閉ったりする音…ずいぶん喧しい
そして、この牧場の周りに生えている木や草の葉の音。そして、牧場に集まっている牛たちの足を踏み換える音、鼻息、しっぽを振る音などが聴こえ…と、音のリズムが変った
足の踏み換える音がせわしなくなり、鼻息も荒くなり、耳に集中している俺の緊張感のレベルが一気に上がる

そこに、ふっふっふっ、という違う鼻息が加わった。俺にも牛の緊迫した状況が掴めた
「なにー!外に出てるんかーい」突然、間抜けな人の呼び声が割り込んで、牧場から聴こえていた音が消える
しーっ!って言いたいとこだけど、俺が声出したら、きっとヒグマは逃げちまう
そのとき名案が浮かんだ。宙に浮いて探せばいいんだ、って
早速、体を浮かそうとする。空に飛び上がるんじゃなくて、ふわっと体を浮き上がらせるんだ
ほんのちょっとだけ、足先に力を入れて、とん、って感じで体を浮き上がらせてみたら、ふわーっと上がった
10mくらいの高さで留まる積りだったけど、もう少し高くなっちまった

それでも、自転車でブレーキとペダルを同時に操作するみたいな調子で、15mくらいの高さで空中浮遊できた
牧場ってとこは、木も無いし、丈の高い草叢も無いから、空中からなら丸見えだ。おまけに俺の目は、暗闇でもしっかり見れるから、でかいヒグマらしき塊が、牧場の横の作業小屋の陰に潜んでるのも丸わかりだ
posted by 熟年超人K at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説
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