三人が帰った後、以前教えてもらっていた星崎さんの番号に電話しようとして、その前に成森さんに電話した方がいいんじゃないか、って気が付いた(俺も大人になったもんだ、っていうか成森さんの方が話し易い)
それで、成森さんのスマホに電話すると「おっ勇太郎さんか、すまん今、会議中なんだ、後にしてくれ」って、すぐ切っちまった
しょうがないから、結局、星崎さんに掛けることにした
「上辻曲君か、いまどうしてるんだ。君からSITの退職願いが届いて驚いたよ。大方人事あたりからいろいろ言われたんだろうが、別に辞めなくてもよかったんだよ」…なんか、もう済んだことだっていう響き
「それはもうどうでもいいんですけど、ついさっき内調ってとこの人が訪ねて来たんで、星崎さんに相談しようかな、って思ったんで…」一発かましてみた
「なにっ、内調が来たのか!」思った通り、相当効いたみたいだ。公安と内調ってライバル同士だっていうの、ドラマでも有名だもんな
「それは…君も、慎重に対応した方が良いね。うん、相談してくれたのは正しい選択だよ」ほら、やっぱり
「でも、内調の人の言う通りにしないと、この先、俺、大変なことになるんだって言ってましたけど…」少し不安そうな声を出してみる
「いやいや、そんな、なにも君が急に日本の法律から分離されると言うのはあり得ない。すまんがこの件は、少し私に預からせてくれないか」いつもの自信家の星崎さんにしては、慎重って言うか弱気って言うか、あまりはっきりした言い方じゃない(って言うことは、結構やばくなってるんか俺)
「わかりました。じゃあ、向こうが催促して来たら、そう応えときます」「いや、それはまずい、私に相談していることは、伏せといてくれ。あくまで、君の判断で、もう少し待ってくれと言うんだ」困ってる困ってる
「分かりました。自分の考えでやることにします」どうも頼りにならなそうだって分かった。これからは、自分の判断で乗り切る気になれた
それならすぐやっちゃおう!って、置いてった轟係長の名刺見て、電話してみた
「おお、上辻曲さんですか、ご連絡ありがとうございます。で、決心がついた訳ですか」乗り気な返事なんで、逆にちょっと警戒心が湧く
「決める前に、この話の大本の方に逢わせてもらえませんか?」別にそれほど考えてなかったんだけど、自分でも思いがけず、そんなセリフが口から出て来た
2022年12月26日
この記事へのコメント
この記事へのトラックバック