220218↓
星崎さんの電話が切れた途端、部屋の中に生暖かい風がふわっと流れた
ん…って思って部屋の中を見回したら、薄緑色に光っている奴が居た
『やあ、おひさしぶり!』なにかすごく快活で、優しさもある声の主は、赤ちゃんの歩行器を大きくしたみたいなサークルに乗って現れた
俺、こんな奴知ってたか?って思った直後、答えが分かった
あいつだ、俺を超人にしてくれたって言うか、した奴。未来から来たって言ってた、宇宙人じゃんか
『実は、最近ギャラクシールールの改定があってね。後進惑星でも、生命体改修時の説明責任が規定されちゃってね。あっ、ちなみに僕の会話は、君に一番分かり易いこの惑星の辺境地帯語に設定されてるから、なにか変だったらそう言ってね』なんて、馴れ馴れしい話し方だ!
『そうそう、いいよ君は話さなくっても、考えてることそのまま伝わってるし、僕の話も大気振動じゃなくて、君らの言葉でいうテレパシーみたいな伝達方法だから』へぇ〜そうなのか
『じゃ、手短に説明させて頂きます。まず、最初のコンタクトは、君の想定外の行動がきっかけだったこと。これ、わかってるよね。僕のコントロール下の時空滑走機は、99.98%の危険回避脳搭載型だったから、移動先での空間接触なんて起きるはずなかったんだけど…
あの時の君は、地表に存在していた静的生命体の分離物〜葉っぱかな、それを四足歩行の愛玩動物の廃棄物〜糞って言うのか、それと判断錯誤して、予想範囲外に急速移動したから接触したんだよね』そうだっけ
『そうそう、それで超高速振動状態のスリッパーに接触して、君を構成してる生命体が、ほぼほぼばらばらになっちゃってさ、僕とサブロイドで回収して、君の意識復元した後で、了解意志を確認後、生体再生&改良措置を施したんだよね。ここまでは合意?』よくわからんが、ぼやっと超人にしてもらうのOKした記憶が…
『で、君に施した改良措置について、今から説明するけど、君の方からなにか質問あるかな?あったら、そのこと考えてみてよ』質問、一番聞きたかった事かぁ、どうして空が飛べてるのか、とかかな
『おっ、そこ、そうだね、君らこの惑星生物は、大気の流動性の利用か、爆発現象の応用か、軽比重気体の使用くらいでしか、地表を離れることできないんだもんね』なんか、めちゃ上から目線な言い方だ
『気にするなよ、そりゃここみたいに中途半端な引力惑星の生命体なんだから、しょうがないって。
でね、宇宙はめちゃ広いから、もっとでかい惑星が一杯あって、そういうとこじゃ重力の調整ができないと、やってけない訳
そんな星で使ってる重力波調整装置を、大胸筋と腹筋の上と左右の大腿筋の前面に浮遊用を、足裏に推進用機器を埋め込んであげたの』はあ?
『そうそう、両掌にもサービスしといたわ。それで君は空を飛べてるんだよ、わかったよね。あの時点での最新機器なんで、軽くて薄いから気が付かなかったでしょ、埋め込まれてるの』そんなの体に埋め込んだのか
『う…ん、埋め込んだっていうより、貼り込んだ、が正しい惑星語かな。まあ、後は、ばらばらになってた構造体を、約束した超人仕様の骨格、関節、筋肉、腱の表面細胞に強化コーテイングして、体表皮にはソフトコーティングもしてあげた。それで超人らしく、高速金属の衝突も皮膚斬刃攻撃にも平気なの』そうなのか
『そうそう、君の遺伝子配送用部位は、本体が無事だったんで、そのまま再生しといたよ。大事なんだろ、この星の生命体には。さっき説明したソフトコーテイングもそこは施してないから、注意してね。一応、危険を感知したら、周りの表皮がカバーしてくれるけどね』そりゃご親切なことで
『あとは…、そう、脳も大部分破損してたから、最新補助脳細胞を付加しといたから、少しは前のより性能アップしてると思うよ。眼とか耳とかも影響出てるでしょ』透視とかできるの、それか
『う〜ん、もうなかったかな。後、生命維持器官の胃とか肺とか、肝臓とか、君らが内臓って言ってる器官は全部、超人体維持仕様に強化しといたし、毒物やこの星の微小生物の攻撃にも対抗力が半端なくあるよ』
『以上で、君への改良点の説明は終わるけど、これで納得してくれたんなら、強くOKとか、了解、とか脳内で念じてくれる?』もうなんか、聞いとくことなかったか
『いいよ、どうぞ。ああ、君の超人力は、遺伝しません。子孫は普通のこの惑星人です
そうだね、ものすごく大きな衝撃、君らも持ってる核分裂弾とか、超高電圧とかを何回も連続して受けると、コーティングが剥がれちゃうかな、ソフトコーティングだから限界があるんだよ』そう、なのか…
『では、OKの思念をよろしく。あっ、まだあるの?…そうなのね、一度だけだから、もうこっちには来ないんだよ。じゃあ、はい、頂きました。しっかり生きてね』それで、あいつは薄くなって、行っちまった
220227↓
なんか、ああそうなんだ、って話ばっかっだったけど、これまでなんとなく、もやっとしてたことが、これかっていう感じになった。多分、そのとき初めて俺は、ちゃんとした超人になれたんだ
興奮して寝れなかった夜が明けて、SITの訓練施設に出かける時間が来た、と言っても俺の場合、都内だったら何処でも至近距離なんで、たっぷり朝飯食ってから、江東区にある術科センターってとこに出かけた
空飛びながら、これって俺の胸と腹に貼ってある重力コントローラーで浮いて、足裏ので前に進んでるんだ、って思うとなんか変な気がした。ア○ムみたいに足から、ジェット噴射が出てるとかなら、わかりやすいのに
江東区のは、SATの専用施設なんで、今日はお客さんだから、あまり施設を壊さないで欲しいって、星崎さんが言ってたけど、SITの訓練施設だったら、立川市内にあるって言うのになぁ
約束の10時より少し早く着いちゃったのと、空から正門とか無視で訓練施設直行だったんで、そこに居たSATの人(教官?)に注意されちまった(SITから聞いてたとかで、逮捕、みたいじゃなかったけど)
訓練中の人たちは、皆ガタイが良くって、俺がチビだもんだからか、なんか上から目線でじろじろ見てる
だけど、俺だってもう何回か経験してるから、全然平気で、しれっと立ってるから、段々皆の雰囲気が悪くなってくのも分かる
「確かに空から降りてきましたが、ホントにスー○ーマンなんすか、こいつ」とうとう、言っちゃいけないこと言う奴が出て来た
「まあ待て、質問はSITの責任者が来てからだ」って言っときながら、隊長さんらしい人も不機嫌そうな顔
確かに、今日もTテレのコスチューム着て来てるんで、ふざけた奴だって思ってるんだろな
でも、この格好で来てくれって言ったのは、星崎さんなんだから、文句があるんならそっちに言ってくれ
俺がむっとした顔をしてるのは、幸か不幸かマスクで見えていなかったけど、その場の雰囲気はかなり悪くなってたと思うぞ
なんでこいつらに、悪く言われにゃならんのよって、へそが45度くらいに曲ったとき、妙にはっきりした声が聞こえた
「只今到着いたしました!刑事部SIT隊長の葛城です!」声の大きさに似合わない、ひょろっとした体形と、しゃくれ顎が特徴のSIT隊長さんが、仏頂面のSAT隊長さんに敬礼して挨拶した(葛城さんは俺も初対面だ)
タクティカル・ベストが少し短く、しかも身体とのすき間がありそうな葛城さんと、がっちりタイプのSAT隊長が互いに敬礼を交わすと、隊長の後に続いて入って来たSIT隊員も、きれいに横に並んで敬礼する
SITだSATだって言ったって、素人の俺にはほとんど同じに見えるが、ガタイくんに教えてもらったのによると、警視庁警備部警備第一課特殊部隊っていう長い名前がSATで、SITの方は警視庁刑事部捜査第一課の特殊犯捜査係なんだそうで、どっちも似たような装備をしている(都道府県で呼び方が変わる)
まあどっちだっていいんで、俺も一緒にぺこっと頭を下げた
その後、隊長同士と、あと何人かで打合せが続いてたんで、放っておかれた俺は退屈だったんで、他の隊員たちにちょっとサービスで、空を飛ぶとか建物の屋根に停まったり、大きく輪を描いて飛んで見せたりしてた
こっちにいる隊員たちは、俺と似たような年の奴が多いみたいで、素直に「おーっ!」って驚いてくれるんで、段々気分が良くなって、いろんな芸を見せてやりたくなったんだよな
そんなことしてるうちに、打合せが済んだ偉いさんたちが戻って、残されてた隊員たちも気合が入って、びしっとした雰囲気になった
俺だけ浮いてるんで「で、どうすればいいんすか?」って、楽な調子で訊いたら「今から言う!」だと
「それでは、特別対応係上辻曲とSIT第4班の合同訓練を行う。総員、配置に着け!」ときた
「状況を説明する。複数の粗暴犯が、交番警察官の銃器を奪い、当該信用金庫に押し込み、行員と客数名を人質にして立て籠もっている」
「上辻曲特体係が、建物屋上より内部に潜入、現場状況偵察の後、班長に報告、班長の命令を待って、人質の安全確保、立て籠もり犯の逮捕の補助を行うものとする。以上!」って、なんかめんどくさい役目だな。俺一人で全部やれるのになぁ…
2022年02月27日
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