2021年07月03日

ランボー超人Bの物語-8超人って大変D

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ところが、下ろすときにちょっと調子に乗って、投げ出しちゃったみたいなことになって、車はどっしーんと床に落ちると、大きくバウンドして、その勢いで観客席近くまで滑ってから、やっと止まることができた

進行司会の水越アナが、慌てて壇から降りてきて、観客よりも車が壊れちゃったんじゃないか、って心配ありありの顔で、駆け寄って来た

殿倉メインキャスターは、その様子を見て慌てて「水越さん、お客さんに何もなかったか、そこ訊いて」って言うし、レイコさんは「大丈夫ですかー」って、お客さんに呼びかけるしで、スタジオは大さわぎ

俺は俺で、まずったぁ!って焦って、瞬速で車に飛び付いて、元の位置に戻そうとして、ぎゅっとドア枠掴んだら、へにゃっと曲がっちって、更にあせあせだぜぃ!!(これって生番組だったよなぁ…)

その時、俺の傍に誰かが走って来て「落ち着いて」って耳元に、押えた声で話しかけてきた
駒ちゃんだ!と、気が付いた俺の頭の中を、ぐるぐる回ってた熱い血が、しゅ〜んと静かになった

壊してしまったものは、しょうがないと、俺は居直った気分で、スタジオの中をぐるっと見回してやった
「いやあ、すごい力だねぇ。後で、自動車会社さんの方には、局からお詫びさせて修理の方も、責任持って対処させて頂きましょう」殿倉さんが、落ち着いた感じで、うまくまとめてくれた

「ところで、超人ランボーさんの今日の衣装は、我がTテレ衣装部入魂の作だって、伺ってますが、その辺りどうなんですか」殿倉さんが、話題を変えて、さっき俺をここに案内してくれた女子アナさんに振った

「そうなんですね。実は、超人ランボーさんについては、立川市の雄仁塚建設さんにお勤めの、Nさんから情報を頂きまして、ビル解体工事を手伝うスー○ーマンの取材に行ったのが、最初の出会いでした」さすがに、あの大手組襲撃事件は、無いことになってるんだ

その後、超人活動をされる中で、困ることを聞いたところ、服の損傷が一番困っておられるとか、伺いまして、特に、現場で火事などあったら、どうしようもない、というお悩みを聞きましたので、アパレルメーカーの西レさんの全面協力を得て、耐火性のある特殊生地で制作した、超人コスチュームを進呈致しました」

「そうだね、もう一日早かったら、昨夜の首都高の車両火災事故には、役に立ったんだろうにねぇ」と、殿倉さんが、作ったような残念顔で俺に語りかける

「そうです。これがあったら、あんなにボロボロに、ならんかったと思います」一応、感謝しとかないと
「お顔も隠して、これからも超人として、活躍されるんですよね」レイコさんが、重ねて強調してくる

「そうだよね。貴方の素晴らしい力を、これから皆のために、大いに生かして頂きたいですね。Tテレも全力で応援しますからね」なんか、だんだん窮屈になってくるなぁ

「Tテレにも、超人ランボーさんに活躍して欲しい、助けが欲しい、という方のお声をお寄せ頂ければ、連絡の仲立ちをさせて頂きたいと、窓口立ち上げの準備中でございます」進行役の水越アナが、そんなことを言い出した…(聞いてないよ)

「そうですね、超人ランボーさんも、いつも事故現場に遭遇する訳でもないでしょうから、その辺りの、本当に困ってらっしゃる方のお声が聞ければ、的確な人助けができますもんね」殿倉さんが、念押しするように言う(なんだか怒れてきたなぁ…)

「いかがですか、ランボ、あっと、超人ランボーさん、この企画、ご活用頂けますか」…会場にまばらな拍手
そうか、こういうことか、って思った。これを、駒沢さんが言ってたんだ

「いや、すみません。俺、自分が感じてやりたいって思ったことをやるんで、別に、窓口作ってもらわなくって、いいです」はっきり、言っとかないといかんときが、今なんだ

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俺がそう言った途端、スタジオの空気がさっと変わった(KYだって、いつも言われる俺にもわかるくらいにだった!)
フロアDのトクさんが慌てて[生コマ]と書いてあるボードを出して、そのボードを指さす

見えてる範囲のカメラの向きが一斉に変わって、俺をここに連れてきてくれた女子アナさんが、慌ててスタジオ隅にある生コマコーナーに走り、進行係の水越アナウンサーが、俺の発言の真意を推理して取り繕おうとして、あたあたしてる

殿倉さんは、合図でザキさんを呼び、ちょちょっと話した後、う〜ん、みたいな顔で、天井を見上げ、レイコさんは、なんとなく微笑んでるみたいな顔のまま、フリーズしちゃてる

生コマが始まると、ザキさんが傍に来て「爆弾発言なんて、勘弁してよ〜ぉ。詳しい話は、後で受けるから、とにかく上手くまとめてくれよ〜。お願い!」と、声を潜めて俺に囁いた

「そうだよな。今、窓口なんか作ったら、応募殺到で収拾つかなくなりそうだもんな。貴方の超人活動は、貴方が納得できるスタイルでやればいいと思うよ」殿倉さんが、いかにもわかってる風に話をまとめる

「はい、俺は素人なんで、いろいろ助けては頂きたいんで…。あ、それと、さっきは車、壊しちゃってすみませんでした」まあ別に、ここの人たちが嫌いなわけじゃないんで、謝るとこは謝っとこうと思った
それに、なんかこのことで、駒沢さんが叱られたりしたら悪いもんな

なんかギクシャクは残ったけど、番組は進んで、俺の持ってる超人パワーについての質問コーナーになった
「さっきのすごいパワーと、空を飛べるのは分かりましたが、まだ他にも、すごいことできるんですか?」って、水越さんが訊いてきた

「俺も、そんなに試したことないんで…って言うか、試していろいろぶっ壊しちゃったらマズイんで、やったことないんすよ」話がややこしい方にいかないように、なるべく明るく答えて、って台本通りに答えた

「そうですか…。実は、当番組でも貴方を紹介するにあたって、ちょっと調べさせて頂いたんです」そこまで水越さんが言うと、バックの大きなスクリーンに、映画のスー○ーマン、スパ○ダーマン、アイ○ンマンたちが活躍するシーンの映像がぞろぞろ流れ始めた

「このハリウッド制作の超人たちと、貴方は同じようなことがおできになるようなんで、例えば、銃弾やナイフなんかでは傷つかないとか、目から熱線を出せるとか、物を透かして見ることができるとか、そんなことができるんじゃないかと、思ったんですが…」

銃弾ヤナイフが平気なのは、あの大手組襲撃のとき確かめれたけど、まさか、そうは言えず、物を透視できるなんて言っちまったら、世間の皆にどう思われるか想像つくんで、言えっこない。眼から熱線なんて、考えたこともなかったし、やり方もわからないんで、返事できなくて棒立ち

「おいおい、水越さん、超人ランボーさんは、まだ超人になってそんなに経ってないって言ってたじゃない。そんなことより、どうして超人になられたのか、そこを訊いてよ」殿倉さんが助け舟出してくれた、って言うか、こっちが聞きたかったことなのか
posted by 熟年超人K at 11:31| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説
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