2021年06月18日

ランボー超人Bの物語-8超人って大変C

210610↓
「よしっ、それなら明日の予定をもう一度確認しよう!」殿倉さんのリーダーシップが発揮され、『午後だよGo!Go!』のスタッフ皆んなの張切りが俺にも伝染して、なんだか興奮してきたんだよな

そのミーティングが終わったのは11時過ぎで、俺としては皆が喋ってる言葉の半分くらいしかわからなかったけど、なんだかテレビの人って、いろいろ打ち合わせるのが好きなんだなぁ、ってことはわかった
…だけど、言ってるように俺できるかなぁって、もやもやしてた

「よし、ここで一旦解散。フロアDの諸君は、もうひと踏ん張りして、細部の詰めの確認よろしくっ」歯切れよくそう言うと、殿倉さんとレイコさん、チーフPの御香山さんの三人は部屋を出てっちゃった

「じゃ、もうひと踏ん張りの前に、ちょっと一息入れようか」残ったスタッフの中では、一番偉いチーフDのザキさんがひと声をかけて、トイレ休憩タイムになった
俺は、どうすりゃいいんだろう、って顔してると、駒沢さんが「上辻曲さんはもう、はけてもいいんじゃないですか?」と言ってくれた

そのとき、駒沢さんが口を動かして(アソコデマッテテ)って言ってるのが分かって、俺のドキドキ再開!
で「それじゃお先にっす」って、皆に挨拶して一旦外に出た

あそこで待ってて、って確かに言ってたよなぁ、と思いながら、6階のJスタジオにささっと向かった
が、あいにくJスタジオの前には人が居た
あちゃー、スタジオ使用中かぁ、思わず声に出しちまった

「なんです、貴方。どちらの組のスタッフさん」その人がこっちに向かって歩いてくる
「すんません『午後だよGo!Go!』の関係の者で…」なんか言い訳っぽくなっちまう

「ああ、そう。新人ADさんか。ここはドラマの撮影準備中だから、欲しい物あるんだったら、さっさと持ってってね」声で分かったんだけど、その人は女の人で、いかにもテレビ業界の人っぽくって、かっこ良い

「はあ、じゃあ中に入らせてもらいます」言いながらドアを開けると、スタジオの照明がばーっと当って、俺の焼け焦げの服を照らし出して、ドラマの関係者らしいその人が「ええっ」って、声を出した

「どしたの、あんた、ぼろぼろじゃん。…ほんと、あんた午後Go班の人?」怪しんでる
「そうです、彼はウチの関係者です、小此木さん」声がしたんで振り向くと駒ちゃんが立ってる

「そーなんだ。ごめんね、かなりボロっとした格好なんで、どしたのかな、って思ったのよ」小此木さんと呼ばれた人はそう言うと、向こうに行ってしまった
「ありがとう。なんか怪しまれるとこだった」嬉しいのが声に出た

スタジオの中は、次のドラマ撮影の準備中で、雄仁塚建設の人たちと似た大道具のスタッフが忙しそうに働いてる
そのセットの片隅で、俺と駒沢さんが話してるんだけど、誰も、こっちを気にしてない

「さっきの打合せだけど、あんまりあの通りしようって、思わなくていいんだからね」駒ちゃんの真剣な顔
「えー、だって段取りだけは覚えておいてくれって、ザキさんだったかも言ってたよね」

「いいの。あの感じのまま動いちゃうと、勇太郎さん、この局に縛られちゃって、自由な人助けとか、正義の味方、出来なくなるから」眼がきらきらしてる
「だって、それじゃあ、最初に殿倉さんが言ってたみたいな、契約にならないじゃん」

「そう、契約なんか考えなくって、勇太郎さんは勇太郎さんの考えだけで、スー○ーマンになればいいの」
「じゃあ、折角、服とか用意してもらったのに…」俺としては、もらうだけもらうってのは…

「あれはもらっといて良いものよ。Tテレとは優先的につながってるってことだけで、もう充分だよ。そうしないと、勇太郎さんの思う通りに、やれなくなっちゃうよ」

「やれなくなるって、どうなるって言うんだよ」なんか、そんな風に言われると…、駒沢さんは喜んでるって思ってたのに
「今日みたいに、勇太郎さんが助けたい気持ちだけで、力を発揮するのが、難しくなるってこと」

「難しくなるって…」う〜ん、よくわからないなぁ
「局の方で、あれをやって欲しい、そっちは今やらなくてもいいから、こっちをやって、助けた人には、こう喋って、とか、いろいろ指示されるようになるのよ」そーなのか、そこを心配してるのか

「わかった。明日の放送の時は、もっと俺らしくやるから、安心して、駒沢さん」
「純、って呼んでくれていいのよ」駒沢さんの眼が、またきらきら輝いてる

210618↓
う〜ん、これは恋愛ドラマによくある展開の、わたしを名前で呼んで…のパターンなのか!?
そんな良いとこだったのに、「そこ、どいてくれるかなぁ」ちょっとイラッって感じの声に、振り返ると、照明機材を抱えたガテン系兄ちゃんが突っ立ってた

そう、二人の世界に入ってたけど、ここは大勢のスタッフが動き回ってる、日曜ドラマの準備中のスタジオだったんだ
「あ、どうもすみません、すぐ退室します」短くそう言うと、俺の手を引いて駒沢さんはさっさとスタジオを出る

手を引かれた俺と、いかにもADな駒沢さんの、ちょい変カップルの俺たちは、スタジオの外の廊下で、顔を見合わせ、慌てて手を離した(どぎまぎってぇの、こういう状態だよな)
「じゃ、明日、よろしく、勇太郎さん」そう言って、くるっと向きを変えると、さっさと向こうに行っちゃったよ

俺はと言うと、手にはさっき渡された超人ランボーのコスチュームの入った大きな紙袋と、明日の進行台本
心には“もっと俺らしくやる”って、どーゆーことなんだろう、って、ず〜んと重い疑問の塊が…
そんな俺は、しばらくそのまま廊下にぼーっとしていてから、どうにか、のそのそ動き出した

結局その日は、終電1本前の電車で、アパートに帰った(だって飛んでくとき、紙袋が破れて中身が落ちちゃうんじゃないかって、心配だったから)

*

翌日、本番の日
俺は予定表にあった通りの時刻に合わせて、例のド派手なランボーコスチューム着て、ちゃんと空からTテレ本社ビルに行った

上から見ると、ヘリポートの周りに3台テレビカメラがスタンバってるのが分かる
その真ん中あたりに、出来るだけカッコよく、俺は決めポーズで降りられた(まず最初のホッ)

赤いダウンコートのきれいな女子アナが、俺を出迎える
「ほんとに、空から登場されるんですねぇ」寒いのか感動してるのか分からないけど、声が震えてる
俺は、無言で(なるべく喋らないよう、ザキさんから言われてる)うなづいて、女子アナさんの後に続く

俺と、肩にカメラを担いでるカメラマンと、音声マイクのぶら下がった棒を持つ音声さんと、女子アナさんの四人で一杯のエレベーターを見送ってから、男のADさんは8階まで緊急階段で走って下りるらしい

エレベーターが8階に着くと、開いたドアの向こうに、別のカメラがスタンバってる
とにかく関係スタッフが一杯いて、廊下を進む俺と女子アナさんを前後からカメラが狙ってる
顔はスパ○ダーマンみたいになって、隠れてるんで、助かる(こんな近くにカメラがあるって、ど緊張!)

ADの男の人が、ささ、こちらです、みたいに案内してくれるんで、割とスムーズに大スタジオに着いた
扉が開くと、中は明るくって、客席に見物客が大勢(100人だそうだ)座って、ニュースバラエティ番組の進行を楽しんでる

女子アナさんと一緒に、スタジオ内に入った瞬間、ザキさんが手をぐるぐる回して、途端にお客さんがどわーっと大拍手だぁ(一応、台本にあったけど、俺びっくり)

レイコさんが、立ちあがって笑顔で俺を手招きしてる。そう言えば、殿倉さんも立ち上がって、笑顔で俺に拍手を送っている
Go!Go!チームの皆の後に、でかい画面があって、昨日の首都高事故のヘリからの撮影映像が映ってる

「昨夜のヒーロー、超人ランボーさん、ようこそTBCテレビへ!」殿倉さんの張りのある、よく通る声が聞こえる
「早速、着用なさって頂けたんですね。いかがですか、その服の着心地は?」レイコさんが、話しかけてくれてる(ここで、お礼を言うんだっけ)

「ありがとうございます。これで、もう、買ったばかりの服を、ダメにしないで済みます」と俺
「超人ランボー、と名乗られていますが、彼は、基本的に目立ちたくないということで、お顔や本名を伏せることが、当番組に出て頂く条件でしたので、この先も出演して頂けることがありましたら、そのようにさせて頂くことになります」レイコさんが、説明を加えた

「それじゃあ、超人ランボーさんの力の一端を見せて頂けますでしょうか。どうぞ、超人ランボーさん」殿倉さんが、昨夜の打合せ通りのセリフで、俺を紹介する。同時に、スタジオ内に、N、自動車のEVカーがゆっくり入ってくる

「こちらのEVカーは、1.2トン以上あるということですが、超人ランボーさんは、これくらいの重さは、簡単に持ち上げられるということなんですよね」レイコさんがそう言い、俺は黙ってうなづいて、車に近寄った

トラックだって持ち上げたことはあるので、別に緊張なんかしなかったけど、実際、車の端っこ掴んで持ち上げようとしたら、なんか、ぐにゃっていう感じがしたんで、慌てて持ち上げるの止めた

「あらら〜、重いんですかぁ、今日は調子わるいのかなぁ」レイコさんが、すかさずフォローしてくれた
でも、俺的には、持ち上げられるけど、壊れちゃったら申し訳ないんで…って言いたかったんだけど、車が軟弱だからって、言ってるように聞こえたら、テレビ局に悪いかな〜、なんて忖度っていうのしちゃって…

「もし、車が少し壊れちゃったら、申し訳ないんで…」なんて、もごもご言ってたら、殿村さんが「壊さないようには持ち上げられないの?」って、ずばっと言ってきた
スタジオの観客たちも、なんか、がっかりーみたいな空気だし、まあ、いっかって車の真中辺りに両手かけた

大体、こういう重い物持ち上げるときは、ダンプとかユンボとか、コンクリートの塊みたいな、頑丈なものばっかだったから、そのあたり、気を付けたこと、なかったんだよな

真中あたりで、バランスに気を付けて、よいしょって持ち上げた
俺が重い物持ち上げられるのは、それが重く感じられないだけで(発泡スチレンで出来てる車を、持ち上げるとこ想像してもらえると、大体そんな感じっす)

但し、今回はテレビ局に迷惑かけたくなかったんで、バランスに気を付けて、自分の重みで、ぐにゃってならないように、注意してやってみた
そしたら、壊れずにEVカーは持ち上がってくれて、嬉しくなった俺は、サービス気分で車を頭上に持ち上げといて、1mほど宙に浮いてみた

うわぁーって、皆の感心した声が上がって、俺としては上手くやれたー、っていい気持ちで、車を下したんだ
posted by 熟年超人K at 22:32| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス: [必須入力]

コメント: [必須入力]