2021年02月23日

ランボー超人Bの物語-7超人だってば俺はE

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それから何日かは、駒沢さんからいつ連絡が入るかって気にしながら、なんとなく日が過ぎていく毎日だった
いつまで(ってったって1週間くらいだけど)待っても、連絡のメールも電話もないんで、ぐだぐだしてると、久々に雄仁塚建設の滑川係長さんから電話があった

「おお、久しぶり。どうだ、元気してたか?」雄仁塚に通ってた頃は、好きでも嫌いでもない、気にしてない人だったけど、電話かかって来るとは思わなかったんで、なんか懐かしい気持ちがこみ上げてきた

「ええ、お久しぶりです。会社の方、調子どうですか?」例の副社長がセットした大手建設の人との話を、断ったみたいになってから、気まずくなって行ってなかったんで、ちょっと気になってたんだ

「おお、おお、社長が、心配してたぞぉ。ゆーたろーはどうしたって、な。なんか、副社長とあったの?副社長は、あんな奴はほっとけって、言ってるし…」声が心配そう。いい人なんだな、滑川さんって

「ええ、まあ…。副社長さんが紹介してくれた話を、なんか断っちゃったみたいになって…」
「あれか、大手建設さんの偉いさんに紹介したのに、顔つぶしたって話だろ。だけど、社長はいーじゃねーか、って言ってたぞ」ほう、そうなんだ

「で、今日はなんか俺に用ですか」話が会社の上の方の噂話に行っちゃいそうだったんで、俺から訊いてみた
「おお、そうそう、上辻君に用があったんだ」…相変わらずカミツジ君って呼ぶ

「実は、ウチの大株主の塚本さんって会長がいるんだけど、その人がロータリーの会合で君のこと自慢しちまって、えらい工期の短い仕事が入ってきっちゃったんだよ」どうも、それがビルの解体工事で、1と月もあれば片付けて見せます、って話になってるらしい

「現場のビルってやつがRC造6階建てで、普通なら4〜5か月、特急で3カ月強って工期なんだけど、どう、やれそう?」って、ビルの解体工事って、近所対策やら粉塵対策が大変だって聞いてるけど…

「それって、滑川さん的にはどうなんです。俺で、やれそうなんですか?」逆に質問
「そーだなー、お前の力なら、重機を上に置いてやるのと同じだから、階上解体法でいけるんで、重機を持ち上げないで済むだけ1〜2か月は早く出来そうだなぁ」

「そうか、空から水でも撒いといて、上の階からなるべくそーっと壊して、下に置いていけばいいんだ!」
「おお、そうそう。それと、壊した残骸をダンプにどんどん積んできゃ、かなり早くやれちゃいそうだな」

「養生シートとかは、どーするんです?」粉塵防止の養生シートのことくらいは知ってるんで、そう訊いた
「あっ、そうか、解体粉塵だよなぁ。どう、そーっとやれば、ホコリなんか立てずにやれそうなの?」逆に、滑川さんが訊いてきた

「どーですかねぇ。ばかでかいジョーロみたいなのがあれば、全体に散水して、ホコリ立てずにやれるかも知れませんけど…」思い付きでそう言うと、それいいなぁ、って言って、また連絡する、と電話が切れた

大丈夫かなーって、ちょっと心配になったけど、まあ、専門家が付いてるんだから、なんとかなるんだろって、お気楽に考えることにした
スー〇ーマンだったら、ビルごと持ち上げてどっかに放り出しておしまい、なんだろーけどな

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それから10分も経たないうちに、また滑川さんから電話があった
「あった、あったぞー。ばかでかいジョーロになりそうなの、あったぞー!」はあ?

「この前、アパート建て替え現場があったんだ。そこから、7〜800リットル入りの貯水槽の古いのを引き取って来たんだけど、そいつに穴開けてジョーロにするってのは、どーだ」
「それでも滑川さん、よくそんな都合のいい穴が開いてる貯水槽があったもんですねぇ」

「ある訳ゃないだろ。カミツジ君が開けるんだよ、穴は。ほら指かなんかで、ぱぱぱっと開けられるだろー」
「えーっ、指でえ。開けられるかな。だって、鉄でできてるんでしょ、貯水槽って」こりゃ無茶ぶりだぁ

「やれるよ、やれるだろ。お前、スー〇ーマンなんだろー。まあ、もし開けれんかったら、ドリルで穴開けられるさ」そーだなぁ、やってみたことないけど、やれるかも知れんな、俺、超人だもんなって、楽観視

「じゃあ、会社に行けばいいんですね。それで穴開けれたら、水入れてジョーロにしてやってみますよ」自分で言っときながらだけど、そんなうまくいくのかなぁ

結局、雄仁塚建設に行って、やってみることになった
貯水槽はステンレス製で、全体は1辺が2mくらいのサイコロみたいな形だ

ちょっと持ってみたけど、そんなに重くない、って言うと、滑川さんが「けど、水が一杯入ると重いぞぉ」と、なんだか嬉しそうに言った

とにかく、底に穴を開けられるか試そう、ってなって、横倒しにした貯水槽(受水槽って言うこともあるそうだ)の底面に、指を思いっ切り突き立てようとすると、滑川さんが、慌てて「違う!そっち側じゃない!」って叫んだ

「底に穴開けちゃうと、水を入れて運ぶとき、漏れ出ちゃうだろ!だから、反対側の点検用のマンホール蓋の付いてる側に穴、開けるんだよ」…なるほどね、ってんで、そっち側に穴を開け始める

「おお、すげぇ、さっすがスー〇ーマンだわ。ぷすぷす穴、開くじゃん!」って、滑川さんが大きい声出す
俺も、なんだかいい気分になって、五本の指で、ぷすぷす穴開けまくった(障子に穴開ける気分だな)

穴あき貯水槽に水を入れる前に、俺は下見ってことで、立川駅南の現場に行ってみた
もちろん、空からじゃなくって地上を、滑川さんの運転する10年前の新車でだ(結構学校が多いんで、暇な学生に見つかるかも知れないって、滑川さんが言うんで)

解体するビルって言うのは、6階建てのRC造(鉄筋コンクリート)のビルで、周囲に空きスペースがほとんどない現場だった

これまで、俺がやってたのは、鉄材を運んだり、重機を屋上に持っていったりするくらいで、ビルの解体ってなると、どこから手を付けるのか分かっていなかった

「で、どーする。だるま落としは、ちょっと無理だろうし、まあ普通のブロック解体になるんだろうけど、カミツジ君は、まだ鉄筋コンクリートビルを解体したことなかったもんなぁ」なにを今更言ってるんだこの人

「やったことないっすけど、ただぶっ壊すくらいなら、できるかもですが…」ホントは自信ないけど
「でも、周りに迷惑かけずに、やれんの?」やれるわけ、ないじゃん、って言いたいよ
posted by 熟年超人K at 00:08| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説
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