2021年01月14日

ランボー超人Bの物語―7超人だってば、俺はC

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「まあ、リハはここまでで良いとしとこう」殿こと、殿倉さんの鶴の一声って言うやつで、やっとリハーサルは終わった
スタジオ内の緊張感が解けて、俺以外の全員にほっとした表情が浮かぶ
チーフDのザキさんが、殿倉さんと話し始め、レイコさんは別のスタッフ(やっぱりディレクター?)と、モニター画面を観ながら、なにか話し合ってる

なんか馬鹿らしくて、口も利きたくない俺の、目線の向こうに立ってる駒沢さんの瞳が、もうちょっと我慢して、って言ってるように見えたんで、俺は他の連中には分からないように、ちょっとだけ微笑んでやった
「はい、お疲れさま。今日はここまでです。このあと、ADの駒ちゃんから交通費受け取ってお帰り下さい」ディレクターのザキさんが、憎めない笑顔でそう締めくくると、殿倉さんとレイコさんの後を追って、部屋を出て行った

照明や音声のスタッフさんたちは、自分の仕事に集中してるんで、広いスタジオに俺と駒沢さんが二人、ぽつんと浮いた感じで残されてる
「お疲れさまでしたー。じゃあ、交通費をお渡ししますので、別室に移動しまーす」なんだか明るい
交通費って、空を飛んで来たら、幾らになるんだろ、と俺はぼんやり考えながら、駒沢さんの後に続いた

「ごめんなさいねぇ。あれやこれや、めんどうなことばかりお願いしちゃって」スタジオのあるフロアから、1フロア降りた階にある『制作部』と、扉に書いてある大きな部屋に入りながら、駒沢さんが話しかけてきた
「いや、まあ、いいんだけど、いろいろ細かい部分言われたから…」
「怒らないでね。だって、スーパーな貴方が怒ったら、皆〜んな吹っ飛ばされちゃうもんね」割と真顔で言う駒沢さん

制作部の部屋の隅に、ガラスで仕切られた区画があって、0型のテーブルの周りに椅子が8個あって、そのひとつを俺に勧めて、隣りに座った駒沢さんが、封筒を出した
「はい」と渡された封筒を開けるように勧めるんで、開けたら中に万札が5枚入ってた
こんなにもらえるんだ、って、ちょっとにやついてたら「この領収書にサインして」と、領収書とボールペンを俺の前のテーブルに出してきた

領収書にサインして返すと、にっこりして受け取って「勇太郎さん、この後、なにか用事あるの?」と駒沢さんが訊いてきた
特にないですって言うと「だったら、少し下で待ってて。わたしの知ってるお店に行かない?」って言う
後で聞いたら、駒沢さんはザキさんから「お前、スー〇ーマンのロイスになれ」って言われてたんだって…

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駒沢さんが連れて行ってくれたのは、Tテレ本社ビル近くの、雑居ビルの2階のお店だった
「ここは以前、宮崎出身の先輩に連れて来てもらったお店なの。鶏肉が美味しいのよ」スタジオで話すときより、ずっと明るくて可愛らしい感じ

二人が店に入ると、元気の良い店員の声がかかる。まだ夕方の5時半を少し回ったところなのに、もう店内はほぼほぼ満席で、カウンター席の奥に居た客が、少し席を譲ってくれたのでやっと座れたくらいだった

まずは生ビール中ジョッキで乾杯となって、店に詳しい駒沢さんが何品かオーダーしてくれた
実は、元々はお酒にあまり強くない俺としては、飲み過ぎて暴れでもしたら、とんでもないことになるって思っていて、そこんとこは絶対注意しながら飲んだんだが、やはり好きな女の子と一緒っつーのはハメが外れるもので、気が付いたら結構飲んでいた

お酒もいつの間にか生中から、宮崎名産らしい見たことない焼酎に変わってたし、駒沢さんも結構ぐいぐいいってたから、二人はとってもいい感じになってたんだ

「それで、駒ちゃんは俺のロイスだっけルイスだっけ、になってくれるっちゅうの?」
「えーっ、まぁー、君の態度、次第、かなーっ」ほんと、可愛い飲みっぷりなんだよなー、駒ちゃん

最近早くなった閉店の10時まで飲んで、二人外に出た。お勘定は、接待で会社から出るから、って駒沢さんが払ってくれた
まだ、人通りもあるけど、なんかこのまま帰るのやだなぁ、と思ってると

「ねえねえ勇太郎くん、君、空飛べるでしょう。だったら、アレやってくれない、ほら、スー〇ーマンが彼女抱いて、夜空を飛ぶっていうの」酔ってるなぁ、駒ちゃん

俺だって、本当はやってみたかった“アレ”、まさか駒ちゃんから言い出してくれるなんて!
「いいよ!」喜んで!と心の中で付け足して、それでも、人けのないとこ探して、そこから離陸するつもりで、周りをきょろきょろ見回してみる

でも、もうすぐクリスマスの東京赤坂は、俺たちと同じく、人目の無い場所を探してるカップルが多い
「駒沢さん、どこか人目につかずに離陸できる場所、知らない?」あまりムード無いけど、ずばり訊ねた

「そうね、それなら近くに大きい神社があるから、そこならいいと思うな」やっぱりここらのこと、知ってる
…ってことで、二人小路を抜けて、結構有名な神社まで、歩く。いいムードになってるかも

見ようと思うと、暗いとこでも見えるんで、階段を上って境内を見渡すと、大きな木の向こうに、誰も居なさそうな場所を見つけた

「あそこから飛ぶけど、駒沢さん、その格好で寒くないかな」足元はかなり温かそうな黒のパンツルックに、銀色みたいなグレイのダウンコートだから、そんなにスピード出さなきゃ、多分大丈夫だろうと思っんだたけど、一応訊いてみた。もちろん、大丈夫って、首を縦に振ってくれて、それが可愛い!

「じゃあ、飛ぶから俺にしがみ付いて。もち、落っことさないように俺もしっかり抱くけど」…やったぜ!
駒沢さんを左腕で抱いて、彼女の手が俺にしがみ付いたの確認して、俺は宙に飛び上がった

夜だから、そんなに急いで上昇しないでもいいかな、と思ったんで、割とスローに上昇していって、200mくらいで一旦止めた。駒沢さんは、俺にしっかりしがみ付いてたが、大分慣れて来たみたいで、少し頭を動かして、下界を見廻している。…頭を動かす度に、いい匂いがするんだよなぁ!
posted by 熟年超人K at 12:01| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説
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