2020年04月12日

ランボー超人Bの物語―6 超人デビュー@

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スタジオ内がばたつく中で、その男だけは落ち着いた雰囲気で、こっちに歩み寄って来る
その大物感に負けて、俺はうっかり頭を下げちまった

「君が超人なのは分かったが、で今日は、一体ここに何しに来たんだ?」
「さっき、ここの近くの暴力団の事務所をぶっ壊してきたんですが…」

髭のADかディレクターが、さっきから警察が集まってます、とメインキャスターに耳打ちした
「そうか、ここじゃなんだから、場所を変えよう。君、打ち合わせできる部屋、押さえて」

ADだかディレクターだかは、はっ、と言って空き部屋を探しに駆け出した
「君はどうも、スーパーマンには見えないけど、ぶっ壊したって、具体的なところ、どうやったの?」

「まあ、何人か吹っ飛ばして…、そう言えばナイフかなんかで切られたりもして…」
「そうか、そうなんだ。いい、いい、後は部屋が見つかったらでいいよ」顔が笑顔になってる

5分ほど待っていたら、さっきのADだかディレクターが戻ってきて、部屋に案内してくれた
割と広い会議室みたいなとこで、会議用のテーブルがロの字形に並べてあって、椅子が5脚あった

ロの字の一つの辺には椅子が2つ、その左右のテーブルにそれぞれ1つずつ、残った辺に1つ
その残った辺の椅子が俺のらしくて、メインキャスターの人と、遅れて入って来た太った人が並んで腰かけた

さらに、カーディガンをひっかけた人(チーフディレクターですと、紹介された)、それからきれいな女性
おお、この女(ヒト)は見たことあるぞ、って俺は思った

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企画会議、だなんて言うから、もっと会議らしいかと思っていたら、もっとぶっちゃけたものだった
結局、メインキャスターの人が喋り役で、チーフデイレクターと女のキャスターさんと太った男は頷き役で

「君、空は飛べるの?」手元の手帳に目を走らせながら、メインキャスターが訊いてきた
「ええ、飛べますけど」なんだかちょっと照れちまった

「そう…、じゃちょっと飛んでみてよ。いや、ここじゃ無理だな、ちょっと宙に浮いてみてくれればいいや」
はあ、と返事して立ち上がって、天井までの距離を目見当してから、よいしょっと軽く浮いてみた

「おおおー、飛べるね、飛べるねぇ。…ねえ、局長」メインキャスターさんは、笑顔になりながら隣りの太った男に話しかけた
うんうん、と頷いて太った(局長さんらしき)男の人が、視線をチーフデイレクターと女のキャスターに送る

「すごいわねぇ、貴方、どうやって飛べてるの?」
軽〜く体を浮かせたんだけど、もうちょっとで天井のシーリングライトにぶつかる寸前で止まれた俺としては、返事するどころじゃなかった

「そこで宙返りとか、できるの?」チーフディレクターが呑気な質問をしてくる
「い、いやぁ、いつもさぁーって飛んでるんで、こういう風に止まってるの初めてなんすよ」とりあえず返事

「そうか、スタジオなら空間もっとあるし、いけるねぇ、さぁーっと」メインキャスターさんが弾んだ声を出す
「いいですよねぇ、Bスタの天井辺りまでさぁーっと飛んで頂いて、なにか持っておりてくるとか」女のキャスターもノリに合せて口を出す

「ドローン使いましょう、ドローンで空中の…っと、ええ、おタクさんお名前は?」って、チーフD
「ドローン!いいねぇ。局長、ドローン飛ばして、こちらの…っと、超人くんとからませて…」メインキャス

「もう、降りていいっすか」声をかけながら、こんな風に浮いた状態から、上手く降りられるのかなぁ、って不安な俺
「ああ、いいよいいよ、降りてらっしゃい」メインキャスのOKが出た

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「さて、諸君、どうする?この超人青年」ちょっと強めにどん、と着床した俺をそっちのけにして、メインキャスターが悪戯っぽく微笑んだ

「ウチの局と、専属契約結んでもらえるのかな」太った局長さんが、ぼそっと喋った
「そこはもう、こうして来てもらったんだから、オーケーでしょ、ね、ええっとお宅、お名前は?」

「上辻曲勇太郎です。かみは上で、つじまがりは辻を曲る、ゆうたろうは勇ましい太郎です」
「ほう、珍しい苗字だねぇ。でも、ちょっと舌を噛みそうだから、勇太郎君でいいかな」まあ、大体皆そう呼ぶんだよね

「で、ちょっとビジュアルそのままって訳、いかないでしょう」女キャスターが眉をしかめて言う
「そうっすね、なんか超人って説得力、ないっすね」チーフDが相槌打つ

「まさか、アメリカの有名超人と同んなじ格好させる訳にもいかないだろうしねぇ…」
「なにか戦隊もののサンプルコスチュームの、不採用になったのから探しましょうか」

「うん、いいいい、それでいこう。レイコちゃんとザキさんで選んであげて。後、契約書も用意してあげてね。僕はこの後が詰まってるから、頼んだよ。局長、それでオーケー、ですよね」太った局長さんが片手をあげると、メインキャスターさんと一緒に、部屋を出て行った

「衣装、用意しますから、ちょっとここで、待っててください。レイさん、あとよろネ」と言って、チーフDも部屋を出て行き、後は美人の女性キャスターのレイコ(って言うのか)さんと二人になっちまった

それはそれで、ちょっと嬉しいんだけど、レイコさんの俺を見る目は、結構厳しいものがある
「勇太郎さん、じゃ超人っぽくないわよね。なにか、呼んで欲しい名前とか、あるの?」ちょっぴり棘っぽい話し方だよな

「う〜ん、最初は正義の味方、なんとかマンとか考えたんですけど…」
「えーっ、全然らしくないよ、そんな呼び方。古臭いしぃ」笑顔ひとつ見せず、ずけずけ言う

「ですよねぇ、俺もなんか変だなーとは思ってたんすけどね」きれいな女(ヒト)だと、ついつい合せちゃう俺
「なにか、貴方の好きなヒーローとか、いないの。なりたいヒーローとか、スポーツ選手とか、格闘技系の選手のリングネームとか」

「そうかぁ、俺がソンケーしてるって言うか、好きなヒーローだったら、ランボーかな、映画の」
「へぇ〜、ランボーかぁ。ちょっと昔のキャラだけど、まあ、さっきの暴力団に殴り込んだって言う、貴方の話が本当なら、それもアリかもね。それに、やり方が乱暴みたいだしね」

「じゃあ、ランボーマンっすかね」口に出すと、なにか変だな
「ダッサー、なんとかマンから離れた方がいいわよ、絶対。ランボルジャーとか、う…ん、それもパクリみたいかなぁ」

「単純に、超人ランボーって、どうですかねぇ」
「ふ〜ん、超人ランボーかぁ。まあ、いいかもね。ストレートでいいか」そうやって、考えてる横顔が、いいんだよなぁ。レイコさんのフアンになっちまったかなぁ…俺は
posted by 熟年超人K at 16:47| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説
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