VIP用ブースで盛り上がってると、フロアの曲がブルードラゴンズのダンスナンバーに換った
メンバーが来てるのを知って、DJが気を利かしたんだろう。マミちゃんもノリノリになって、ダンスフロアに行こうって俺の手を引っ張る
もちろん、いくら引っ張ったって動きたくなきゃ、絶対動かん俺だけど、この時は踊りたいって気持ちが爆上がっちゃって、変なステップを不味ながら、マミちゃんと一緒にフロアに出てった
俺が踊るなんて、知ってる人が見てたらゼッテーやらないけど、なんか場の雰囲気も盛り上がりも気持ちよかったんで、つい俺もタガが外れて、人前で踊ることになっちまった
まあ、かなりでたらめなダンスだったんだけど、超人パワー(セーブしたけど)があるから、パンピーやパリピからすると、すんごいステップと身のこなしに見えるから、曲が終わったときの皆の拍手がど派手だった
マミちゃんなんて、俺に持ち上げられたり、ぶんぶん回転されたりしてたんだけど、怖がったりしないで、けらけら笑ってるから、そこも受けてたとこだと思う
VIP用ブースに戻ると、みんな大盛り上がりで、リーダーの竜崎さんなんて、戻って来た俺に抱き着くわ、シャンパンとグラス持ってきて、飲ませようとするわで、大騒ぎのレベルが爆上がりしてる
…だったのに、次の曲が終わろうとしたとき、フロアの方でガシャーンと何かが割れた音がして、何人かの女の子の悲鳴が聞こえて、こっちのブースもしんとなった
ブルードラゴンズの盛り上げ役のチャロっていうドラマーが、ささっとフロア近くに見に行って戻って「なんか、ヤバそうな奴が、女の子がいるグループにちょっかいかけて、断られたんで腹立ててボトル叩き割ったみたいっす」って報告してきた
なんとなく、メンバーの皆の視線が俺に集まるのが分かった
「だーめ!勇太郎さんが首突っ込んだら、このお店なんてぶっ壊れちゃうからね!」マミちゃんが、エスカレートを抑えようとしてるんだけど、ブースの中の勢いはイケイケモードにレベルアップしてるし、それよりなにより俺自身、やったるか!気分になっちゃってる
「俺らのホームグランド荒らされて、いいわきゃないっしょ!」って、元気に飛び出してったのはトランペット吹きのトンガリさんで、止めるのか一緒に行くのかはっきりしないけど、チャロさんが後を追ってく
マミちゃんを気にして、渋々の感じで俺が立ち上がると「ここ、壊しちゃわないように気を付けてね」って、俺やメンバーより店のことを心配して、マミちゃんが念押しの言葉をかけてくる
俺がフロアに降りると、黄色に染めた短髪に稲妻模様の剃り込みのムキムキ兄ちゃんと、黒のレザーパンツに黒シャツの殺し屋みたいな恰好の細身の奴と、赤のつなぎ着てる赤髪のいかれた感じの男と、こっちの二人が睨み合ってるとこだった
どうも、俺が行く前に言い合いになってたみたいで、俺がフロアに降りると「おめえかぁー、超人だって言ってるのはよぉー」って赤つなぎが即、絡んで来た
ああ、って答えると「さぞかし強えぇんだろーなー、おめえはよぉー」とか言いながら、少し首を下げといて、そこから俺を上目づかいに睨む
「いっちょ、おれらと遊んでくれよ−超人ランボーさんよぉ」おっと、そっちの呼び名も知ってるってか
「みんなで楽しくやってんだから、あんたらも大人しく楽しんでろよ」って、ちょっと上から目線で言うと、連中はイラついて、すぐにでも飛びかかってきそうな感じになった
俺の方も、どうせこんな連中は話なんて聞きゃしないの分かってるから、なんかきっかけが欲しかっただけで、こんな話の展開は奴らのいつもの手口なんで、あとはもうどっちが先に手を出すかだけだって分かってる
そんな調子で、俺とブルードラゴンズの二人と、半グレ風の三人が睨み合ってると、どやどやっとフロアに五人ほどの新手が降りて来た
「おいおい、あんた正義のチョージンなんだろ。こんな一般人相手に、暴力振るおうって、そんなんでいいのかなぁ」新手の中のボス格の190pくらいありそうな、ハーフのダークスーツ野郎が、妙に落ち着いた声で話しかけてきた
こりゃもしかすると、最初っから俺狙いで仕掛けて来たんじゃないの?って、最近、この手の事件に巻き込まれがちな俺は、なんとなくピンときた(実際は、今売れて来てるB.D狙いだったんだけど…)
こいつら全員と闘るんなら、どいつからいこうかと(俺も喧嘩慣れしてきた)新手も含めて、敵のメンツを改めて眺めてみる
どいつも喧嘩慣れしてそうって、言やぁ同じように見えるけど、やっぱ一番強そうなのはボスっぽいダークスーツで、次がその隣にいるシルバーのダブルにグレーのソフトハットのすかした野郎かな
最初の三人組は、鉄砲玉っぽいから、たいして強くなくても、荒っぽい攻撃をして来る可能性ありかな
そんなんで、睨み合ってると(どっちも相手に先に手を出してもらいたい?)、DJさんが「さあさあ、フロアの熱気が高まって来たところで、次のナンバーいってみよー!」って、変な仕切りをしてきた
この場面、マイケルジャクソンだったらビートイットだけど、さすがにそうじゃない似たようなアップテンポの曲がかかる(煽ってどーする!?)