2023年05月27日

ランボー超人Bの冒険-20 好きなことだけやろうB

「皆んなー静かにしろー!」制服警官の中の一人が大声を出した
俺らにちょっかい出して来たダークスーツ野郎の仲間は、警察がよっぽど嫌いとみえて、ばらばらになって客席の中に逃げ出し、どっちかって言うと正義の味方気分だったブルードラゴンズのメンバーは、警察が来てくれて良かったー、みたいな感じで、安心して突っ立ってる
だけど警察の方から見ると、あっちもこっちも同じように見えるらしく、思ったより暴れそうな連中が多いと見て、増援を要請してる(俺には聞こえてる)

入口と裏口を塞がれちゃったんで、40〜50人いる客は、仲間同士でがやがやしてるだけ。俺らとダークスーツ野郎の仲間以外は、ただ見てただけだって思ってるから、そんなにあせってない
俺ら、特に引率の先生みたいな立場になっちゃった山下さんは、大分パニくってて、おろおろしてるのをリーダーとマミちゃんが慰めてて、他のメンバーと俺は、もうしょうがねぇなーな感じでVIP用ブースに戻る
ダークスーツたちは、なんとかばっくれたくって、警官に体当たりして幹部だけでも逃がそうとしてるみたいで、あっちこっちで小競り合いしてる

俺の方は、別に拘置所に放り込まれたって、勝手に出て行けるけど、ブルードラゴンズの皆んなのこと思うと、それは無理かなーとか、のんびり考えてる
そのうちに、応援の警察官も到着して、まずダークスーツ組が、かなり乱暴に扱われて連れ出され始め、続いて俺らが居るVIP用ブースにも、警官が来て「任意聴取するから、同行願います」みたいなこと告げて、連れてこうとする
山下さんが、大分気を取り直して警官たちに「自分らは絡まれてただけだから」とか、一生懸命言い訳してるけど、どっちみち警察は全員連れてく気なんで、聞いてもくれない

結局、店のスタッフも含めて、見物してただけの客も、全員警察署に連行された
ダークスーツ組の連中は、別扱いになって、見物してただけの連中と店スタッフは、会議室みたいな大部屋に連れてかれ、俺らはどっちかって言うと別扱い系の、そこそこの広さの部屋に入れられ、一人ずつ小部屋で話を訊かれることになった

俺は、ダークスーツ連中と揉めてたのを見物組の何人かが、チクッたみたいで、ドラマで観るような(部屋に向うから誰かが見てる鏡がある)取調室に入れられた
一緒に入った(制服じゃない)刑事らしいゴツイ二人と、記録係みたいなのが一人とで、俺から調書を取りたいらしい

「名前は」ぶっきら棒に、対面に座ってる30代くらいの刑事が、ぼそっと喋った
「かみつじまがりゆうたろう、です」言いたくない、っていうのも言ってみようかと思ったけど、ここはブルードラゴンズに迷惑掛けないように、素直に返事することにした
「なに?かみ、つじまがり、だってぇ。どんな字を書くんだ」って、言うんで、出したノートに漢字でちゃんと書いてやった
「ふーん、変わった名前だなぁ」って、向かいの奴がちょっと感心した風に言うと、横に立ってる少し若い刑事が、慌てて年上の方の耳元に口を寄せて、ごにょごにょ告げると、びっくり顔になった向かいの刑事が
「お前、いや、あんたって、あの超人ランボーとかいう、あの超人なのか?」って言った

俺が「はあ」って答えると、年上刑事が立ち上がって「ちょっと、待っててくれ」って言うと、慌てて部屋を出て行き、残った若い方の刑事と、記録係の制服の人が、なんかどぎまぎした風に黙っちまった
しばらく、部屋の中が静まり返っていたんで、俺は我慢できなくなって「どうなんっすかねぇ、もう帰っていいんですかねぇ」って、低姿勢で声掛けたけど、若い刑事さんは「自分はなんにも言えない立場なんで…」って、困るばかりで、なんにも言えない状態

そのうち、廊下を何人かがやって来る音がしたんで、ドアを透視して見ると、さっきの年上刑事と、中年のもっと偉そうな私服刑事と、制服を着たもっと偉そうな年配の警察官が、あせあせした様子で、駆けつけて来て、制服は隣の部屋(多分鏡の奥)入り、刑事二人が、こっちの部屋に入って来た
「お待たせしました。恐れ入りますが、もう少しだけDJバーであったことをお話頂ければ、もうお帰り頂いて結構ですので」って、むちゃくちゃ低姿勢になってる
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2023年05月19日

ランボー超人Bの冒険-20 好きなことだけやろう!A

もちろん、新しい曲が掛かったって、フロアに降りて来る客なんてあるわきゃなく、喧しい音の渦巻きの中、俺たちは均衡状態をどうにか保ってる
「おい、おまえだろ、可哀相なクマ公を殺しちまった野郎はよお!」稲妻剃り込みムキムキ兄ちゃんが、憎まれ口叩く。なに言ってんだこの野郎、って思った俺は
「なぁ〜に言ってんだ、見てもないくせに」って言い返すと、「見たよぉ、テレビでやってたじゃねぇか」って、赤髪赤つなぎに言い返される

こんな連中と、無駄に話していてもしょうがない、って思った俺は一気に局面転換に出た
「うだうだ言ってないで、やるのか、それともしっぽ捲いて引っ込むのか、はっきりしろよっ」って、ボスっぽいダークスーツ野郎の顔を見据えて、びしっと言ってやった
狙い通り、ボスらしいダークスーツ野郎の顔が歪んで、みるみる赤くなった…けど、どうにも我慢強い奴みたいで、両手の拳をぎゅっと握って「そんな挑発には引っかかるもんか。どうせ、てめえは超人だから、俺らをやっつけられると思ってんだろうが、そうはいかねぇよ」って言い返して来た

こう出られるとは思ってなかった俺は、正直困ってしまった(相手が暴力を振るって来ないとブッ飛ばせないってことか!)
そんな空気をぶち破ってくれたのが、酔って寝ちゃってた山下さんと元気なマミちゃんだった
山下さんが急に目を覚まして、俺らがフロアでヤバイ連中と睨み合ってるのを見つけ「あたし、助けに行かなきゃ」とか言って、だだっとフロアに向かったんで、すぐマミちゃんが追いかけて、様子見てたリーダーとベースのグンタイさんまで、フロアに降りて来た

俺らと睨み合ってた半グレ連中は、新手が来たって身構えたけど、そこにイライラパワー満タンの山下さんと、マミちゃんが「あんたたち!やめときなさい!どうせ敵いっこないんだから!」って、噛みついた
女の子(?)に怒鳴られるなんて、全然引っ込みがつかなくなった赤髪赤つなぎが、「引っ込めっババア!」とか言いながら、山下さんを突き飛ばした
「ひゃぁー!」ってマミちゃんが叫びながら、フロアに倒れてる山下さんに駆け寄ると「なんて人たちなの!勇太郎さん、もうやっつけっちゃって!」って、俺を見て叫んだ

なんか、お許しが出たから、みたいなシチュエーションになっちまったけど、俺としてはワルとは言え、一般人を相手にするのに、躊躇してたとこだから、リードを放してもらえた猟犬みたいになっちゃって、まずは山下さんを突き飛ばした、赤髪赤つなぎの前に瞬速移動して、胸の辺りを半分の力の掌底打で、突き飛ばしてやった(力の加減は大分上手くなってるが、この前の相手がヒグマだったから少し強かったか?)
赤髪野郎は、大きく後ろに吹っ飛んで、先にフロアに居た稲妻剃り込みと殺し屋ファッションの二人にぶつかって、まとめてフロアに転がった(ストラーイク!)

次の瞬間、ソフトハットが素早く動いて、まだ転んだままの山下さんの傍に居るマミちゃんに抱き付くと、手品みたいに銀色スーツの袖から出て来たナイフを、ほっぺたにくっつけた
「よぉし、そこまでだ。超人さんはもう何にもするんじゃないぞ」って、悪人がよくやる人質作戦に出てきた
そのあたりは、俺もある程度予測してたんで、瞬速でソフトハットのナイフを持った手を掴んで、マミちゃんの頬に当ててるナイフが動かないようにし、そのまま握りつぶしてやった

べきっと、嫌な音をさせて、ソフトハットの右手首が、ぶらんと変な恰好でぶら下がり、次の瞬間「うぎゃーっ!」って叫び声がほとばしって、ソフトハット銀スーツは帽子を落として、山下さんの隣に転がった
その一連の動きは、多分1〜2秒くらいしか経たずに起こったんで、ボスのダークスーツ野郎は、あっけにとられて突っ立ってるし、他の家来も動きが止ったままで、こっちのブルードラゴンズの皆も動けてない状態
そのとき、騒ぎが始まった頃、お店のスタッフが連絡してたらしく、制服の警官が5〜6人、どやどやっと店に入って来た
posted by 熟年超人K at 19:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説

2023年05月14日

ランボー超人Bの冒険-20 好きなことだけやろう!@

VIP用ブースで盛り上がってると、フロアの曲がブルードラゴンズのダンスナンバーに換った
メンバーが来てるのを知って、DJが気を利かしたんだろう。マミちゃんもノリノリになって、ダンスフロアに行こうって俺の手を引っ張る
もちろん、いくら引っ張ったって動きたくなきゃ、絶対動かん俺だけど、この時は踊りたいって気持ちが爆上がっちゃって、変なステップを不味ながら、マミちゃんと一緒にフロアに出てった

俺が踊るなんて、知ってる人が見てたらゼッテーやらないけど、なんか場の雰囲気も盛り上がりも気持ちよかったんで、つい俺もタガが外れて、人前で踊ることになっちまった
まあ、かなりでたらめなダンスだったんだけど、超人パワー(セーブしたけど)があるから、パンピーやパリピからすると、すんごいステップと身のこなしに見えるから、曲が終わったときの皆の拍手がど派手だった
マミちゃんなんて、俺に持ち上げられたり、ぶんぶん回転されたりしてたんだけど、怖がったりしないで、けらけら笑ってるから、そこも受けてたとこだと思う

VIP用ブースに戻ると、みんな大盛り上がりで、リーダーの竜崎さんなんて、戻って来た俺に抱き着くわ、シャンパンとグラス持ってきて、飲ませようとするわで、大騒ぎのレベルが爆上がりしてる
…だったのに、次の曲が終わろうとしたとき、フロアの方でガシャーンと何かが割れた音がして、何人かの女の子の悲鳴が聞こえて、こっちのブースもしんとなった
ブルードラゴンズの盛り上げ役のチャロっていうドラマーが、ささっとフロア近くに見に行って戻って「なんか、ヤバそうな奴が、女の子がいるグループにちょっかいかけて、断られたんで腹立ててボトル叩き割ったみたいっす」って報告してきた

なんとなく、メンバーの皆の視線が俺に集まるのが分かった
「だーめ!勇太郎さんが首突っ込んだら、このお店なんてぶっ壊れちゃうからね!」マミちゃんが、エスカレートを抑えようとしてるんだけど、ブースの中の勢いはイケイケモードにレベルアップしてるし、それよりなにより俺自身、やったるか!気分になっちゃってる
「俺らのホームグランド荒らされて、いいわきゃないっしょ!」って、元気に飛び出してったのはトランペット吹きのトンガリさんで、止めるのか一緒に行くのかはっきりしないけど、チャロさんが後を追ってく

マミちゃんを気にして、渋々の感じで俺が立ち上がると「ここ、壊しちゃわないように気を付けてね」って、俺やメンバーより店のことを心配して、マミちゃんが念押しの言葉をかけてくる
俺がフロアに降りると、黄色に染めた短髪に稲妻模様の剃り込みのムキムキ兄ちゃんと、黒のレザーパンツに黒シャツの殺し屋みたいな恰好の細身の奴と、赤のつなぎ着てる赤髪のいかれた感じの男と、こっちの二人が睨み合ってるとこだった

どうも、俺が行く前に言い合いになってたみたいで、俺がフロアに降りると「おめえかぁー、超人だって言ってるのはよぉー」って赤つなぎが即、絡んで来た
ああ、って答えると「さぞかし強えぇんだろーなー、おめえはよぉー」とか言いながら、少し首を下げといて、そこから俺を上目づかいに睨む
「いっちょ、おれらと遊んでくれよ−超人ランボーさんよぉ」おっと、そっちの呼び名も知ってるってか

「みんなで楽しくやってんだから、あんたらも大人しく楽しんでろよ」って、ちょっと上から目線で言うと、連中はイラついて、すぐにでも飛びかかってきそうな感じになった
俺の方も、どうせこんな連中は話なんて聞きゃしないの分かってるから、なんかきっかけが欲しかっただけで、こんな話の展開は奴らのいつもの手口なんで、あとはもうどっちが先に手を出すかだけだって分かってる

そんな調子で、俺とブルードラゴンズの二人と、半グレ風の三人が睨み合ってると、どやどやっとフロアに五人ほどの新手が降りて来た
「おいおい、あんた正義のチョージンなんだろ。こんな一般人相手に、暴力振るおうって、そんなんでいいのかなぁ」新手の中のボス格の190pくらいありそうな、ハーフのダークスーツ野郎が、妙に落ち着いた声で話しかけてきた

こりゃもしかすると、最初っから俺狙いで仕掛けて来たんじゃないの?って、最近、この手の事件に巻き込まれがちな俺は、なんとなくピンときた(実際は、今売れて来てるB.D狙いだったんだけど…)
こいつら全員と闘るんなら、どいつからいこうかと(俺も喧嘩慣れしてきた)新手も含めて、敵のメンツを改めて眺めてみる
どいつも喧嘩慣れしてそうって、言やぁ同じように見えるけど、やっぱ一番強そうなのはボスっぽいダークスーツで、次がその隣にいるシルバーのダブルにグレーのソフトハットのすかした野郎かな
最初の三人組は、鉄砲玉っぽいから、たいして強くなくても、荒っぽい攻撃をして来る可能性ありかな

そんなんで、睨み合ってると(どっちも相手に先に手を出してもらいたい?)、DJさんが「さあさあ、フロアの熱気が高まって来たところで、次のナンバーいってみよー!」って、変な仕切りをしてきた
この場面、マイケルジャクソンだったらビートイットだけど、さすがにそうじゃない似たようなアップテンポの曲がかかる(煽ってどーする!?)
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2023年05月05日

ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!I

二人が帰った後、俺はインターネット中の“北海道ヒグマ退治”への、ネット民の発言をチェックし捲った
大体の内容をまとめると、ヒグマ=北海道の先住動物だから、あとから入って来た人間が育てている牛を襲うのは、本能だから仕方ないという意見が基になっていて、そこに、動物好きだの、クマが丸っこくてかわいいから好きだの、プーさんやパディントンが好きだのと言う人がいろいろ集まって、俺のやり方を批判してるって感じ

その中に、特に超人が許せないって話が割り込んで来て、超人ランボーを攻撃する強硬派がいるかと思うと、理由は特にないけど、なんか個人的にこいつが許せん、みたいな書き方してる悪意満載の意見もある
荘田君が言ってたように、局としてはこの手の言い合いをしても、何の得にもならないって言うか、スポンサーが困るから、できるだけ触れたくないのもわかる
読んでるうちに、俺はどんどん怒れて来て、なんか無茶苦茶にぶっ壊すとか、暴れるとかしたくなってきたけど、さすがに、それはできんだろって良識が働いて、とりあえず変装して街に出て行きたくなった

変装については、暇なときにいろいろチャレンジしてたんで、衣装は一応揃ってる
元々、俺はオーラなんて全然ないから、ちょっといつもは着てないような服着て、サングラスかなんかかけたら、渋谷じゃ全く目立たなくなる
だけど、いつもは着ない服っていうと、ばりっとしたリーマンスーツか、思いっきりパンクな服ってことなんで、さすがにそういうのはない

どーにか街でお洒落に見えそうなスケーターブランドの長袖Tシャツに、細身の黒パンツにサングラスって恰好で、初めてのDjバーに繰り出した
夜の9時の渋谷駅あたりの人出はすごいもので、とにかく人がぞろぞろぞろと、どこにも溢れてる状態で、その中で俺だけが、特に行く先も決めずにふわっと歩いてる
さすがに、超人能力はこんなときでも発揮できてて、どんなに人が多くても(もう酔っ払ってる奴もいるが)絶対、ぶつからずにすいすい歩けてる

駅近くの雑居ビルに、お目当てのDJバーがあるはずと思って、そのあたりをうろうろしたけど、飲み屋ばかり目に付いて見つからない
「あぁーっ、ランボーだぁ!」後ろから、聞き覚えのある声が聞こえた。マミ!?
「おーっ、そうじゃん、ランボーの人じゃん!」振り返ると、ブルードラゴンズのメンバーと、今日は銀色の肩パット入りスーツで決めている山下さんもいる

「どうしたんっすか?どっか、遊びに行くとこっすか」メンバーの中の一番若い子(山根だったか山路だったか)が、にこにこしながら、話しかけてくる
「うん、まあ…」とか言いながら、渋谷で遊ぶ場所も知らないってのは、カッコつかんなぁって思ってると
「俺らと一緒、しません?」「そーそー、行こっ!一緒に行こうよ」って、リーダーの竜崎さんとマミちゃんが、強く誘ってくれる
「いいじゃにですか、一緒に繰り込みましょ!あたしたち、これから知ってるオーナーのお店に行くとこなんですよ」って、山下さんも、熱心に勧めてくれる

じゃあ、って誘われた形で、俺はブルードラゴンズのみんなと、一緒することに決めた
みんなでぞろぞろ入ってったお店は、なんと行こうとしてたDJバーの『ツィース』だった
店内は、なんかきらきらで、でかい音でダンスナンバーを流してる店で、DJバーっていうだけあって、かっこいいDJが、なんか掛け声みたいに話を入れながら、次から次に曲をかけている
VIP席みたいなブースにメンバーと一緒に入って、すぐに出てきたカクテルとつまみを口にしながら、わいわい騒ぐのが楽しい
posted by 熟年超人K at 22:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説