「はあ?」って、思わず間抜けな声が口から出た。なに、なんか驚かせようって二人で企んでんの?って思ったけど、顔が真剣、空気が深刻、狭い玄関口に重苦しさが充満する
「とにかく中に入ってよ」って、言っといて自分が先に部屋に戻る(駒ちゃんが来る予定だったから、変なものは出てないはず)
俺が先に椅子に座ってると、駒ちゃんと荘田君が落ち着かない感じで入って来た
「ネットチェックしてないでしょ」椅子に腰かけながら、駒ちゃんが言う(そう、なんだかんだで、テレビ観てるだけで、ネットは雨雲レーダーとスポーツくらいしか見てない
「炎上っすよ、炎上しちゃってんです、ヒグマ退治」荘田君が煽る
「昨夜、放送あったでしょ。最初、あの時間帯では、まずまずの視聴率出してたんだけど、番組終了後に動物愛護団体のなにやらってとこから、クレームが入って…」「そうクレームを出しといて、そいつら局の対応を、まんまネットで生中継したんで、騒ぎがどんどん大きくなっちゃったんですよ」駒ちゃんに荘田君が続けて説明する
「えーっ、だって高松牧場の夫婦、あんなに喜んでたじゃん」あの時の、涙を浮かべていた夫婦の「牛たちの仇を取ってくれて、ありがとねぇ」って言う言葉が、忘れられない俺だった
「それがですねぇ、あの人たちも、北海道の視聴者も皆んな喜んでくれてたんですけど、愛護団体のクレームが、可哀そうなヒグマを殺さなくってもいいじゃないか、って論法だったんで、段々、ヒグマが可哀そうだっていう意見が多くなって…」
「ヒグマを空に持ってって、落っことしたのが、卑怯だっていうリプがどんどん増えて、次に、勇太郎さんは超人なんだから、適当にあしらえば、熊は山に逃げてったんじゃないの、とかも…」
「えーっ、だって俺、結構ぎりぎりで闘ってたんだけど」って俺。「そうでしたよねぇ。僕も一時期、やられるんじゃないかって、心配してたくらいでしたもん」荘田君が、観戦者としての感想を付け加える
「とにかく、それが夜が明けて、ますます炎上して、他局も悪乗りして超人ランボーのやりたい放題を糾弾!とか、どっかから連れてきた動物行動学の先生に動物好きのタレントを加えて、アンチTテレで言いたい放題なのよ」「ウチの局は、ばっくれてて知らん顔なんっすよ。僕、この先はないぞって言われました」荘田君の泣きが入る
本物のヒグマを見てもないのに、なに言ってんだ!っていう声が、俺の頭ん中から噴き上がった
「その連中の事務所って、場所、分かってるんです?」
「調べれば分かると思うけど、どうすんの?押しかけるの」「そうだね、ま、そんなとこかな」
「だめですよ〜。動物愛護団体って、世界中にネットワークあるんで、敵に回すと煩くってたまんないらしいっすよ」荘田君に続いて、駒ちゃんも「動物好きな人は、そこらじゅうにいるから、スー○ーマンだって敵わないわね」って言う
「動物好きって言うより、なんか悪意を感じるんですよ」荘田君
「どこかの誰かが、超人ランボーを貶めようとしてるって言うの、荘田さんは」って駒ちゃんが荘田君を見る
「だって、どう考えたって、牛を襲われ続けて困ってる牧場を助けたって話じゃないっすか。それを動物愛護団体が、ヒグマだけ可哀そうだなんて、どうかしてますよ」本気で怒ってる荘田君を見てると、俺の心の中も大分落ち着いてきて、なんか無茶苦茶暴れたくなってたのが、鎮まったのがわかる
その後、缶ビール飲みながら誰が、ウラで動いてるのかちょっと話したけど、結局、三人ともそういう世の中の裏なんて知らないんで、大して話も続かず、駒ちゃんと荘田君は「元気出してね」って言って、帰ってった
(駒ちゃんと荘田君は、偶然このマンションの玄関ホールで会ったとかで、まだ非公開の俺らだから、帰るしかなかったんだ…)
2023年04月29日
2023年04月20日
ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!G
俺が下に降りてくと、荘田君が「やりましたねー!お陰様でいい画撮れました、ありがとうございます!」って、大声で言いながら駆け寄って来た
「ヒグマ死んでるの、ちゃんと確認した?」って、訊くと「まだ調べてないです」って平気な顔で返事するんで、もし復活したら大変だっちゅうことで、俺が調べてちゃんと死んでるの確認した
それから、牧場主の高松さん夫婦が眺めてるところをカメラに収めて、やっと撮影終了
後は、荘田君、Dテレの杉浦ディレクターやスタッフたちと夕食(宴会?)の続きになり、腹が減った俺は残りの料理を全部たいらげちった
翌朝、荘田君は北海道に残って、編集作業にメド付けてから帰るって言うんで、俺は一人で気楽に飛んで帰ることになった
その日から1週間経ち、俺がダイニングでカップヌードルにお湯を注いでると、スマホにメール着信、荘田君からで、今夜11時55分からの深夜バラエティ『びっくり映像グランプリ』で、北海道ヒグマ退治を放映するので、ぜひご覧くださいとなってる
俺が、了解、必ず見るから…とか返事を文字打ちしてるうちに、続いて駒ちゃんから久しぶりのメール着信
荘田君に返事しといて、駒ちゃんのメールをクリック
“深夜バラエティ決まったね こちらのチームでも話題になってるよ 明日19時前後に行ってよい?”って、なってる。もちろん、OKって返信してから、胸がわくわくしてるのに自分でも驚いてる
駒ちゃんと、随分会ってないんで、メールがあっただけでもう有頂天になったんだけど、超人だって未来の予知能力なんてのがあるはずなく、この先、俺が巻き込まれる大騒動なんて、全然予想付かんかった
とにかく、その夜の『びっくり映像グランプリ』は、北海道でのヒグマ探しの苦労話と、高松牧場に行って、狙ってた巨大ヒグマとの邂逅からの決戦という流れに、東京に戻ってからのスタジオ収録が組み合わされるという、なかなかの力作で、正直、自分で言うのもなんだけど、結構感動できる出来だった
深夜の番組観てたんで、翌朝は少し寝坊して、9時過ぎ起きだった(警視庁辞めてからだーだーな生活だ)
遅い朝飯食って、それでも夜は駒ちゃんが来るってんで、部屋の掃除なんかもやったり、近所の八百屋さんスーパーで、冷蔵庫の中身の補充に出たりして、なんとなく忙しい一日
そのうち、窓の久しぶりの夕焼けが消えて、外が暗くなったんでカーテン閉めて、準備万端そわそわタイム
ドアホンが鳴って、お待ちかねの駒ちゃんの声に、俺は瞬速でドアを開けに走る
ばん、ってドアを開けると、駒ちゃん一人じゃなく、なぜか荘田君も一緒!(どゆこと?!)
「すみません、一緒に伺っちゃいまして…」弱々しい荘田君の声にかぶせて「局の方、今、大変なのよ」って、駒ちゃんが続く
「ヒグマ死んでるの、ちゃんと確認した?」って、訊くと「まだ調べてないです」って平気な顔で返事するんで、もし復活したら大変だっちゅうことで、俺が調べてちゃんと死んでるの確認した
それから、牧場主の高松さん夫婦が眺めてるところをカメラに収めて、やっと撮影終了
後は、荘田君、Dテレの杉浦ディレクターやスタッフたちと夕食(宴会?)の続きになり、腹が減った俺は残りの料理を全部たいらげちった
翌朝、荘田君は北海道に残って、編集作業にメド付けてから帰るって言うんで、俺は一人で気楽に飛んで帰ることになった
その日から1週間経ち、俺がダイニングでカップヌードルにお湯を注いでると、スマホにメール着信、荘田君からで、今夜11時55分からの深夜バラエティ『びっくり映像グランプリ』で、北海道ヒグマ退治を放映するので、ぜひご覧くださいとなってる
俺が、了解、必ず見るから…とか返事を文字打ちしてるうちに、続いて駒ちゃんから久しぶりのメール着信
荘田君に返事しといて、駒ちゃんのメールをクリック
“深夜バラエティ決まったね こちらのチームでも話題になってるよ 明日19時前後に行ってよい?”って、なってる。もちろん、OKって返信してから、胸がわくわくしてるのに自分でも驚いてる
駒ちゃんと、随分会ってないんで、メールがあっただけでもう有頂天になったんだけど、超人だって未来の予知能力なんてのがあるはずなく、この先、俺が巻き込まれる大騒動なんて、全然予想付かんかった
とにかく、その夜の『びっくり映像グランプリ』は、北海道でのヒグマ探しの苦労話と、高松牧場に行って、狙ってた巨大ヒグマとの邂逅からの決戦という流れに、東京に戻ってからのスタジオ収録が組み合わされるという、なかなかの力作で、正直、自分で言うのもなんだけど、結構感動できる出来だった
深夜の番組観てたんで、翌朝は少し寝坊して、9時過ぎ起きだった(警視庁辞めてからだーだーな生活だ)
遅い朝飯食って、それでも夜は駒ちゃんが来るってんで、部屋の掃除なんかもやったり、近所の八百屋さんスーパーで、冷蔵庫の中身の補充に出たりして、なんとなく忙しい一日
そのうち、窓の久しぶりの夕焼けが消えて、外が暗くなったんでカーテン閉めて、準備万端そわそわタイム
ドアホンが鳴って、お待ちかねの駒ちゃんの声に、俺は瞬速でドアを開けに走る
ばん、ってドアを開けると、駒ちゃん一人じゃなく、なぜか荘田君も一緒!(どゆこと?!)
「すみません、一緒に伺っちゃいまして…」弱々しい荘田君の声にかぶせて「局の方、今、大変なのよ」って、駒ちゃんが続く
2023年04月09日
ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!F
「うおーっ、やったー!」って、荘田君が叫んだ声が聞こえた
だけど、それはただ熊を撥ね退けただけで、致命傷どころか、ほとんど痛手を負わせていなかったのも事実
まあ、どさっなんて軽い感じじゃなく、どっさーんだったけど
とにかく、俺的にはのしかかってたのが取れたんで、ぱっと体勢立て直して、次の攻撃に備えて構えた状態
すると、熊公はもうやる気失くして、逃げ出そうとしてるのが分かった
「熊、熊が逃げちゃいますよー!」って、元気が出た荘田君とDテレのスタッフたちが、大声出すんで「おおー」って返事して、くるっと向きを変えて逃げ出そうとしているヒグマの背中に飛び乗ってやった
とにかくでかい熊なんで、背中に乗っても全然止らん。俺を乗っけたまま、ばばーっとめちゃくちゃ走り出す
俺としても、多分こいつが牛を何十頭も殺して喰っちゃった奴だから、ここで逃がしちゃまずいってんで、どどどーって走ってる熊の、耳の付け根辺りに空手チョップを何発もお見舞いしてるんだけど、超人チョップでも効き目がない
こっちもアドレナリン出まくり状態なんで、今度は両耳を引っ掴んでぎゅーっと持ち上げた
それでも止らないんで、今度は両目の辺りをばりばり引っ掻いてやる
これは効き目があったのか、急に走るのやめて、ぐわーっと立ち上がると、両手で頭の後ろにくっついてる俺を引っぺがそうと、長い爪のついたぶっとい腕で、がしがし引っ掻いて来る
まあ普通の人間だったら、もうとっくにずたずたにされてるんだろうけど、なんせ俺は超人だから、爪は引っ掻いても滑っちゃって、俺は落ちない
腕を首に巻いて絞めてやろうかって思ったけど、太すぎてそれは無理だ(超人だって無理は無理)
これじゃあ、お互いどうしようもないこう着状態ってやつにはまり込んでる。で、俺は熊の体を持って宙に持ち上げてみることにした
だけど、持つとこが無い。体中に生えてる毛を握って持ち上げようとしてみたけど、力が入らない
こりゃだめだ、って思った俺は、熊公の背中から飛び立って、くるっと目の前に降りてやった
背中にしがみ付いてた俺が、急に目の前に現れたんで、熊だってびっくりしたと思う(多分)
びっくりして、両手(両前足)を下に着いたんで、顔が殴り易い位置に来た。すかさず、俺は右フックを振う
なんと言っても超人力、熊公の顔が右にぐるんと廻る
殴った俺にも手応えはあって、今度はいいパンチが入ったって確信できた
連続して左脇腹に、右のミドリキックをお見舞いする。続いて、熊の横脇に飛び込んで、ぐいっと手を差し込んで、すくい投げみたいな感じで投げ飛ばした
闘ってる場所が牧場の木柵の傍だったんで、熊が飛んだ先に柵があって、そいつにでかい熊がぶつかったから、当然柵が壊れて牛たちが騒然となる
騒然となったのはテレビクルーたちも同じくで、果たしてカメラがこの乱戦をしっかり収めてるかどうかなんて、全く分からない
でも、俺的には大分余裕が出て来たんで、熊が飛んだ先にすぐに駆け寄って、でかい腹のあたりに右足を乗せて、やったーポーズを取ってみた。で、周りを振り返ると、北海道のテレビクルーは、どうやらちゃんとカメラに収めたみたいで、俺にVサインを送っている
荘田君は、気持ちが追いついてけないって感じで、呆然として突っ立っている。いや、なんか慌てて、手を大きく横に振り始めた
熊のでかい腹に載せてる足がずりっと滑って地面に落ちた。はっと気づいて、横に飛ぼうと思ったら、その寸前に熊の赤い口が大きく開いて、ばっくり俺の右足に噛みついてきた
ぎゅっと右足首に圧力がかかったのが分かる。一瞬、俺はどきっとしたけど、別に痛くないからパニくることはなかった
そのまま熊の首を両手で持って、空に飛び上がる。熊が驚いてるのかどうかは分からないけど、とにかくそのまま高度を上げてくと、四足動物の弱点がはっきり出て、もはや顎を閉じていることが出来ないで、吠えようとしたのか、逃げようとしたのか口を開いたんで、俺も両手を放してそのまま空中に熊を逃がしてやった
つまり、100mくらいのところから地上に落ちて、こんどこそ動かなくなった
だけど、それはただ熊を撥ね退けただけで、致命傷どころか、ほとんど痛手を負わせていなかったのも事実
まあ、どさっなんて軽い感じじゃなく、どっさーんだったけど
とにかく、俺的にはのしかかってたのが取れたんで、ぱっと体勢立て直して、次の攻撃に備えて構えた状態
すると、熊公はもうやる気失くして、逃げ出そうとしてるのが分かった
「熊、熊が逃げちゃいますよー!」って、元気が出た荘田君とDテレのスタッフたちが、大声出すんで「おおー」って返事して、くるっと向きを変えて逃げ出そうとしているヒグマの背中に飛び乗ってやった
とにかくでかい熊なんで、背中に乗っても全然止らん。俺を乗っけたまま、ばばーっとめちゃくちゃ走り出す
俺としても、多分こいつが牛を何十頭も殺して喰っちゃった奴だから、ここで逃がしちゃまずいってんで、どどどーって走ってる熊の、耳の付け根辺りに空手チョップを何発もお見舞いしてるんだけど、超人チョップでも効き目がない
こっちもアドレナリン出まくり状態なんで、今度は両耳を引っ掴んでぎゅーっと持ち上げた
それでも止らないんで、今度は両目の辺りをばりばり引っ掻いてやる
これは効き目があったのか、急に走るのやめて、ぐわーっと立ち上がると、両手で頭の後ろにくっついてる俺を引っぺがそうと、長い爪のついたぶっとい腕で、がしがし引っ掻いて来る
まあ普通の人間だったら、もうとっくにずたずたにされてるんだろうけど、なんせ俺は超人だから、爪は引っ掻いても滑っちゃって、俺は落ちない
腕を首に巻いて絞めてやろうかって思ったけど、太すぎてそれは無理だ(超人だって無理は無理)
これじゃあ、お互いどうしようもないこう着状態ってやつにはまり込んでる。で、俺は熊の体を持って宙に持ち上げてみることにした
だけど、持つとこが無い。体中に生えてる毛を握って持ち上げようとしてみたけど、力が入らない
こりゃだめだ、って思った俺は、熊公の背中から飛び立って、くるっと目の前に降りてやった
背中にしがみ付いてた俺が、急に目の前に現れたんで、熊だってびっくりしたと思う(多分)
びっくりして、両手(両前足)を下に着いたんで、顔が殴り易い位置に来た。すかさず、俺は右フックを振う
なんと言っても超人力、熊公の顔が右にぐるんと廻る
殴った俺にも手応えはあって、今度はいいパンチが入ったって確信できた
連続して左脇腹に、右のミドリキックをお見舞いする。続いて、熊の横脇に飛び込んで、ぐいっと手を差し込んで、すくい投げみたいな感じで投げ飛ばした
闘ってる場所が牧場の木柵の傍だったんで、熊が飛んだ先に柵があって、そいつにでかい熊がぶつかったから、当然柵が壊れて牛たちが騒然となる
騒然となったのはテレビクルーたちも同じくで、果たしてカメラがこの乱戦をしっかり収めてるかどうかなんて、全く分からない
でも、俺的には大分余裕が出て来たんで、熊が飛んだ先にすぐに駆け寄って、でかい腹のあたりに右足を乗せて、やったーポーズを取ってみた。で、周りを振り返ると、北海道のテレビクルーは、どうやらちゃんとカメラに収めたみたいで、俺にVサインを送っている
荘田君は、気持ちが追いついてけないって感じで、呆然として突っ立っている。いや、なんか慌てて、手を大きく横に振り始めた
熊のでかい腹に載せてる足がずりっと滑って地面に落ちた。はっと気づいて、横に飛ぼうと思ったら、その寸前に熊の赤い口が大きく開いて、ばっくり俺の右足に噛みついてきた
ぎゅっと右足首に圧力がかかったのが分かる。一瞬、俺はどきっとしたけど、別に痛くないからパニくることはなかった
そのまま熊の首を両手で持って、空に飛び上がる。熊が驚いてるのかどうかは分からないけど、とにかくそのまま高度を上げてくと、四足動物の弱点がはっきり出て、もはや顎を閉じていることが出来ないで、吠えようとしたのか、逃げようとしたのか口を開いたんで、俺も両手を放してそのまま空中に熊を逃がしてやった
つまり、100mくらいのところから地上に落ちて、こんどこそ動かなくなった
2023年04月05日
ランボー超人Bの物語-19 超人パワーでGo!E
すぐにヒグマの目の前に降りてやろうって思ったんだけど、荘田君たちがまだ来てないから、どうしたらいいか、ちょっと迷った。また映像を撮れなきゃ、今度も失敗になっちまうからなぁ…
そのうち、母屋の方から人が出て来る音がして「こっちじゃないのぉ」とか「あっちじゃないの」とか、がやがや声が聞こえて来る
その間にも、牧場の牛たちは危険が迫っている気配を感じてるようで、足を踏み換えたり、荒い息を吐いたりして、もう待ってらんない、って俺が急降下しようとしたとき、牧場の方に人が来るのが分かったのか、ヒグマは首を持ち上げて匂いを嗅いでから、牛を襲うのを止めて、逃げ出す体勢に入る
ここで逃がしちゃいかん、って思ったんで、俺は急降下して熊の真ん前に降り立った
ヒグマの奴、絶対びっくりしたと思う、急に目の前に俺が降って来たんで、急ブレーキで止る
デニム上下の俺は、人間としても背は大きい方ではない(って言うか小さい部類)、それが突然目の前に突っ立ったんだから、熊だって驚くだろ。こっちをじっと見てる
俺って、小さい頃から動物園が割と好きで、特にお気に入りはライオン、トラ、ヒョウなどのネコ科の肉食獣で、熊は全体にもこっとして可愛いく見えるんで、どっちかって言うと軽く見てたんだ
そいつが俺の目の前で、こっちをじっと見てる状態になってみると、なんか正体不明の怖さを感じる
それにしても、こいつはでかい。でかいやつを小山のような、っていうけど、まさにそれだ
だけど、びびっちゃあいられない。前回のヒグマ対戦を参考に、鼻っ面に右ストレートかな、って考えてると、相手はぶわっと立ち上がった
うおっと、これはでかい!立ち上がると2mは超えてそうだ。そいつが両手を広げて、ぐあっと口を開くと黄色い牙がむき出しになって、ド迫力だ!
鼻っ面にストレートっていう俺の作戦は中止だ。宙に浮けば手は届くだろうけど、力が入りそうにない
っていうことは、でかい熊のどっかーんと分厚い、胸か腹を狙うしかない
ま、いいやってんで、とりあえずあばら骨ブチ折る気で、どーんと胸に正拳突きをお見舞いしてやった、つもりだったが、思ったよりでかくて、胸じゃなくてお腹に突きが入ることになった
熊の身体をぶち抜くくらいのスピードで打ったんだけど、お腹をぼっこんって殴ったんで、効き目はなく、逆に怒ったヒグマが全体重乗せて、俺に覆い被さってくる格好になっちまった
これは俺の失敗で、いつもの人間相手なら、ぱっと打ってぱって下がってるから、相手の反撃なんて喰わないんだけど、今回は全力打撃でいこうって思ってたんで、足留めて必殺パンチみたいな攻撃をしちまった
それと、やっぱり野生の熊は動きが早くて、それもあって俺には7〜800sくらいの大熊の体重が乗っかって、おまけに首筋を思いっ切り噛まれたんで、一瞬、俺もパニ食っちまった
まあ、超人のありがたいことに噛まれても、牙は身体を傷つけず、ぶっとい腕に付いてる長い爪も、俺を傷つけられないんで、後は超人力で撥ね退ければいいんだけど、案外がっちり組みついてきてるんで、ちょっとそのままの格好になっちまった
「ああー、やられてるー!」「だめだー、喰われちまったー!」って、荘田君とか北海道の系列テレビのDテレのディレクターとかが、悲鳴を上げてるのがちゃんと聞こえてて、大したことないよ、って強がってみたいんだけど、なかなか動かん
それで思い出したのが、相撲で小いさな力士が大きい相手を、下に潜り込んで投げる“居反り”って技だ
で、巨大熊乗っけたまま、首の力と背筋を使って、思いっ切り後ろに反って放り投げた
さすがに、がっちりかぶりついてた熊のあごも牙も外れて、どっさっと俺の後に落ちたのが分かった
そのうち、母屋の方から人が出て来る音がして「こっちじゃないのぉ」とか「あっちじゃないの」とか、がやがや声が聞こえて来る
その間にも、牧場の牛たちは危険が迫っている気配を感じてるようで、足を踏み換えたり、荒い息を吐いたりして、もう待ってらんない、って俺が急降下しようとしたとき、牧場の方に人が来るのが分かったのか、ヒグマは首を持ち上げて匂いを嗅いでから、牛を襲うのを止めて、逃げ出す体勢に入る
ここで逃がしちゃいかん、って思ったんで、俺は急降下して熊の真ん前に降り立った
ヒグマの奴、絶対びっくりしたと思う、急に目の前に俺が降って来たんで、急ブレーキで止る
デニム上下の俺は、人間としても背は大きい方ではない(って言うか小さい部類)、それが突然目の前に突っ立ったんだから、熊だって驚くだろ。こっちをじっと見てる
俺って、小さい頃から動物園が割と好きで、特にお気に入りはライオン、トラ、ヒョウなどのネコ科の肉食獣で、熊は全体にもこっとして可愛いく見えるんで、どっちかって言うと軽く見てたんだ
そいつが俺の目の前で、こっちをじっと見てる状態になってみると、なんか正体不明の怖さを感じる
それにしても、こいつはでかい。でかいやつを小山のような、っていうけど、まさにそれだ
だけど、びびっちゃあいられない。前回のヒグマ対戦を参考に、鼻っ面に右ストレートかな、って考えてると、相手はぶわっと立ち上がった
うおっと、これはでかい!立ち上がると2mは超えてそうだ。そいつが両手を広げて、ぐあっと口を開くと黄色い牙がむき出しになって、ド迫力だ!
鼻っ面にストレートっていう俺の作戦は中止だ。宙に浮けば手は届くだろうけど、力が入りそうにない
っていうことは、でかい熊のどっかーんと分厚い、胸か腹を狙うしかない
ま、いいやってんで、とりあえずあばら骨ブチ折る気で、どーんと胸に正拳突きをお見舞いしてやった、つもりだったが、思ったよりでかくて、胸じゃなくてお腹に突きが入ることになった
熊の身体をぶち抜くくらいのスピードで打ったんだけど、お腹をぼっこんって殴ったんで、効き目はなく、逆に怒ったヒグマが全体重乗せて、俺に覆い被さってくる格好になっちまった
これは俺の失敗で、いつもの人間相手なら、ぱっと打ってぱって下がってるから、相手の反撃なんて喰わないんだけど、今回は全力打撃でいこうって思ってたんで、足留めて必殺パンチみたいな攻撃をしちまった
それと、やっぱり野生の熊は動きが早くて、それもあって俺には7〜800sくらいの大熊の体重が乗っかって、おまけに首筋を思いっ切り噛まれたんで、一瞬、俺もパニ食っちまった
まあ、超人のありがたいことに噛まれても、牙は身体を傷つけず、ぶっとい腕に付いてる長い爪も、俺を傷つけられないんで、後は超人力で撥ね退ければいいんだけど、案外がっちり組みついてきてるんで、ちょっとそのままの格好になっちまった
「ああー、やられてるー!」「だめだー、喰われちまったー!」って、荘田君とか北海道の系列テレビのDテレのディレクターとかが、悲鳴を上げてるのがちゃんと聞こえてて、大したことないよ、って強がってみたいんだけど、なかなか動かん
それで思い出したのが、相撲で小いさな力士が大きい相手を、下に潜り込んで投げる“居反り”って技だ
で、巨大熊乗っけたまま、首の力と背筋を使って、思いっ切り後ろに反って放り投げた
さすがに、がっちりかぶりついてた熊のあごも牙も外れて、どっさっと俺の後に落ちたのが分かった