なんかもう、隠さなくってもいいみたいな気になっちゃってるから、平気でどんどん空を飛べちゃう
正体だってばれてもいいか、って思うんだけど、さすがにまんまの俺じゃまずい気がする
まあ、徐々に知ってる人が増えるのはしょうがないな
それは芸能人と同じ感覚かも。人に、わあわあ言われるのって、気分いいこともあるし、めんどくさいときもあるしな
なんて、マンションから音楽事務所のある東麻布まで飛んで行く間、ほわっと考えてた
マンションから、ほぼ真西に東京タワーを目指して飛んで、その手前の首都高が交差して三角形になっている処で地上に降りた
やっぱりど派手な超人ランボーのコスチュームの威力は抜群で、ちょうど歩いていたカップルが立ち止る。走っている車がスピードを落とす
音楽事務所が入っているビルは、10階建てくらいの細いお洒落なビルで、何階にあるのかまではネットで分からなかったんで、入口脇の入居者名が書いてある看板で確認して、ビル内に入る
俺も大分慣れたな、このカッコ(入口のガラス戸に映る自分の姿)
エレベーターで8階に上がる。扉が開くと正面にガラスの衝立みたいな仕切りがあって、音楽事務所の英文字のロゴが書かれている
そのガラスの仕切りの前に、洒落た電話台があって、白に金色の電話が置いてあって[事務所に御用の方は内線12におかけ下さい]と書いたプレートが、閉じたドアに貼ってある
なんかお洒落っぽいが、面倒臭いなって思ったんだけど、しょうがないから受話器を取った。…たら「はい、なにかご用でしょうか」って、女の人の声がした
「あ、はい、ブルードラゴンズのマミさんにお会いしたいんですが…」「どちらさまでしょうか?」みたいな、会話にならない会話になった
「俺、超人ランボーって言いますが、先日、Nテレでマミさんに会ったんですが、少し訊きたいことがあるんで…」「……。恐れ入ります、只今は事務所におりませんので…」
何度も言うけど俺は超人なんで、ドアが閉まってても、部屋の中は相当見えてるし、声も聴こえてる
だから、ロックバンドっぽい五人組の中に、女の子が一人いるのも分かってる
その娘に「超人ランボーって貴女知らないよね。なんか変なフアンみたいだから、留守ってことにするからね」って、年上の女の人の声が話しかけて、女の子が「えーっ、マミの知ってるランボーさんかも〜」って言ったのも聴こえてる
「どうしても話があるんで、ここ開けてくれないと、ぶち破りますよー」ちょっと脅したった
ちょっと、部屋の中がしんとしたと思ったら、がちゃっとドア開いて、この前の女の子が顔を出した
「あー、やっぱり超人ランボーさんだぁ。山下さん、大丈夫だよ、この前Nテレさんでマミ会ってるから」
「超人ランボーって、あの首都高で衝突した車から人を助けた、あのランボーさん!?」後ろから、半分金色、半分銀色に染めた髪の毛を、ヤマアラシみたいにつんつんさせた、革ジャンの背の高い痩せた男が顔を出した
「あっ、ランボーさん、この人、リーダーの竜崎くん」「まあ、戸口ではなんですから、中にお入り下さい。すみません、最近、変なフアンの人が押しかけて来たりするもんですから、失礼しました」バブル時代みたいな、青い肩パット入りスーツのちょいケバの女の人が、無口な感じの竜崎くんが口を開く前に喋り出した
2023年01月30日
2023年01月24日
ランボー超人Bの物語-18 お気楽ヒーローで行こう!A
駒ちゃんが帰ろうとしたとき、「送ってくよ」って言ったんだけど、「いい、パパが車で迎えに来てくれるって連絡あったから」って突っ放されちった
なんか、突然パパの話なんか出て来たりして、一体どうなってんのかよく分かってなくて、あせった俺
駒ちゃんは目をそらしたまま、声掛け辛い雰囲気満載で、帰ってっちゃったんで、取り残された俺は、なんでこうなるのか、しばらくぼーっと考えてた
行っちゃったもんはしょうがないじゃん、って言う俺と、追っかけろよ!…ドラマだったら、ここは追っかけどきだぞって言う俺が、頭ん中で議論してるけど、体は動かない
もしかして、俺と付き合ってるのが親に知れて、なんか言われてるんと違うかなぁ…とか、考え始めると「超人なんかに嫁にはやれん!」とか、お父さん言いそう
お母さんも「ちゃんとしたお仕事してる人なの?」とか言ってたりして(結婚、なんてあるのか?)
いや、そもそも駒ちゃんの両親がどんな人かも知らないし(そんなことまで頭に浮かぶ)
…もう、妄想がどんどん膨らんでって止らない!
妄想を打ち止めにしてくれたのは、荘田君からのメールチャイムだった
<明日の会議は中止です。4月11日〜14日北海道行き決定!札幌のホテル ラフィナーレってとこで、午前11時にロビー集合です(添付:ホテルの所在地マップ)>
なに勝手なこと言ってんだよ、ってちょっと怒れたんで、すぐ電話した
「もしもし、上辻曲です。メール見たけど、ちょっと勝手だよね!自分だけ先に札幌に行くこと決まってるなんて」「あ、いや、それはですねぇ、あくまでウチの仕込じゃなくって、北海道で偶然お会いして、ヒグマの話になるってストーリーでいきたいんで。分かってくださいよ」はぁ〜ん、なるほどそういうことか
ウラの意味は分かったんで、そこは分かったと言っといた
だけど、そうなると俺は勝手に北海道に出かけて、11日の朝、ラフィナーレっていうホテルのロビーに行けばいいってことだよな。じゃあそれまで1週間、なにする?
で、思い出したのが渋谷の半グレ、金髪のジョーだった。確か、ロックバンドのブルーなんとかの女の子、マミとかが友達だったな。あいつに逢いに行ってみよう
確か、あのマミっていう娘がジョーは、城崎だからジョーなんだって言ってたよな
結構金持のぼんぼんなんだっても言ってた。でも、どこの城崎だかわかんねぇし、じゃあ、あのロックバンドのブルーなんたらのボーカルの娘に、逢いに行ってみるか(お気楽だな俺)
ネットにロックバンドとかボーカルのマミとかで検索かけたら、所属事務所が分かったんで行ってみることにした
なんだかんだ言っても、音楽事務所なんだから素の俺が行ったら、なかなかマミって娘に繋いでくれないだろうって思ったんで、圧しが効くように超人ランボーで行くことにした
なんか、突然パパの話なんか出て来たりして、一体どうなってんのかよく分かってなくて、あせった俺
駒ちゃんは目をそらしたまま、声掛け辛い雰囲気満載で、帰ってっちゃったんで、取り残された俺は、なんでこうなるのか、しばらくぼーっと考えてた
行っちゃったもんはしょうがないじゃん、って言う俺と、追っかけろよ!…ドラマだったら、ここは追っかけどきだぞって言う俺が、頭ん中で議論してるけど、体は動かない
もしかして、俺と付き合ってるのが親に知れて、なんか言われてるんと違うかなぁ…とか、考え始めると「超人なんかに嫁にはやれん!」とか、お父さん言いそう
お母さんも「ちゃんとしたお仕事してる人なの?」とか言ってたりして(結婚、なんてあるのか?)
いや、そもそも駒ちゃんの両親がどんな人かも知らないし(そんなことまで頭に浮かぶ)
…もう、妄想がどんどん膨らんでって止らない!
妄想を打ち止めにしてくれたのは、荘田君からのメールチャイムだった
<明日の会議は中止です。4月11日〜14日北海道行き決定!札幌のホテル ラフィナーレってとこで、午前11時にロビー集合です(添付:ホテルの所在地マップ)>
なに勝手なこと言ってんだよ、ってちょっと怒れたんで、すぐ電話した
「もしもし、上辻曲です。メール見たけど、ちょっと勝手だよね!自分だけ先に札幌に行くこと決まってるなんて」「あ、いや、それはですねぇ、あくまでウチの仕込じゃなくって、北海道で偶然お会いして、ヒグマの話になるってストーリーでいきたいんで。分かってくださいよ」はぁ〜ん、なるほどそういうことか
ウラの意味は分かったんで、そこは分かったと言っといた
だけど、そうなると俺は勝手に北海道に出かけて、11日の朝、ラフィナーレっていうホテルのロビーに行けばいいってことだよな。じゃあそれまで1週間、なにする?
で、思い出したのが渋谷の半グレ、金髪のジョーだった。確か、ロックバンドのブルーなんとかの女の子、マミとかが友達だったな。あいつに逢いに行ってみよう
確か、あのマミっていう娘がジョーは、城崎だからジョーなんだって言ってたよな
結構金持のぼんぼんなんだっても言ってた。でも、どこの城崎だかわかんねぇし、じゃあ、あのロックバンドのブルーなんたらのボーカルの娘に、逢いに行ってみるか(お気楽だな俺)
ネットにロックバンドとかボーカルのマミとかで検索かけたら、所属事務所が分かったんで行ってみることにした
なんだかんだ言っても、音楽事務所なんだから素の俺が行ったら、なかなかマミって娘に繋いでくれないだろうって思ったんで、圧しが効くように超人ランボーで行くことにした
2023年01月17日
ランボー超人Bの物語-18 お気楽ヒーローで行こう!@
Gネットによると、ヒグマの被害は冬眠明けの4〜5月と、冬眠準備の9〜10月に集中していると言うことだ
ってことは、少し待たないといけないってことだ
どっちみち荘田君の準備もあるだろうから、4月に入ってから出かければいいだろう、ってここまで調べて、もう行く気になってる俺
なんか、これでもうOKみたいな感じになっちゃったけど、それでも寝る前に、駒ちゃんに電話して、今日あったことを話しとこうかな、なんて思った。結局、2回かけても繋がらなかったんで、一応短いメールで<今度ヒグマ退治に行くよ>って打っといた
俺的には、なんかいろいろあった一日はこうして終わって、その週は荘田君も駒ちゃんも、何度かメール送ってもなにも連絡なくて…。そしたら日曜日の朝、珍しく荘田君から電話があって「ヒグマ、決まりです。明日、午前10時に第3会議室に来られます?」だって
その電話から1時間もしないうちに、駒ちゃんからも電話「今、部屋?近くまで来てるんで、行っていいかな?」だって
なんで、急に二人とも連絡して来たんだろって、ちょっと気になったけど、まあどっちも待ってた連絡だったんで、俺としては機嫌が良くなったわけ
駒ちゃんが来ると、部屋が俄然明るくなる。スーパーの袋に入った食料をてきぱき冷蔵庫に入れ、キッチンシンクに溜まってるコンビニ弁当容器を洗って、ぽんぽんプラスチックごみ袋に入れてく
「お昼、まだなんでしょ」とか言いながら、キャベツを刻んでベーコンを焼き、目玉焼きにした卵3個分を皿に載せ、フランスパンを持って来たぎざぎざ刃のナイフで切って、テーブルに並べ「食べよっ」って言う
もうこれだけで、俺の幸せ度は沸点を突破して、体が宙に浮きだす
バター風味のマーガリンを塗ったフランスパンを、俺の前に置くと、駒ちゃんも可愛い口でかりっと齧る
「あっ、忘れてた!」った途端、さっと立ち上がって、まず冷蔵庫開けて首振って、やかんに水入れて、ガスのスイッチ押して、お湯沸かし始めて「コーヒーあったよね」って言いながら、キッチンの戸棚探して、インスタントコーヒー見つける
俺は、ぼーっとそれを見るだけだった。いいよなぁ…って、心の中で幸せの粉、スプーンで混ぜてる気分
「でね、今度ヒグマ退治に行くんだよね。荘田君、Dになれるって、ご機嫌だったよ」「へぇ〜」
「殿倉さんも、今度GOGOGOにも出てもらいたいなぁ、とか言ってたよ」「そうなんだ」
「超法規対象って、勇太郎さんだけの特例なんですってね」「まあ、多分ほかにいないからだね」「ふ〜ん」
駒ちゃんは、少し心配なことがあったみたいだけど、結局、話題はほかに移って、そうしてお昼食べ終わってから、俺はその気になってたんだけど、駒ちゃんは「今日はパパの誕生日なの。で家に帰るの」って、帰ってった
ってことは、少し待たないといけないってことだ
どっちみち荘田君の準備もあるだろうから、4月に入ってから出かければいいだろう、ってここまで調べて、もう行く気になってる俺
なんか、これでもうOKみたいな感じになっちゃったけど、それでも寝る前に、駒ちゃんに電話して、今日あったことを話しとこうかな、なんて思った。結局、2回かけても繋がらなかったんで、一応短いメールで<今度ヒグマ退治に行くよ>って打っといた
俺的には、なんかいろいろあった一日はこうして終わって、その週は荘田君も駒ちゃんも、何度かメール送ってもなにも連絡なくて…。そしたら日曜日の朝、珍しく荘田君から電話があって「ヒグマ、決まりです。明日、午前10時に第3会議室に来られます?」だって
その電話から1時間もしないうちに、駒ちゃんからも電話「今、部屋?近くまで来てるんで、行っていいかな?」だって
なんで、急に二人とも連絡して来たんだろって、ちょっと気になったけど、まあどっちも待ってた連絡だったんで、俺としては機嫌が良くなったわけ
駒ちゃんが来ると、部屋が俄然明るくなる。スーパーの袋に入った食料をてきぱき冷蔵庫に入れ、キッチンシンクに溜まってるコンビニ弁当容器を洗って、ぽんぽんプラスチックごみ袋に入れてく
「お昼、まだなんでしょ」とか言いながら、キャベツを刻んでベーコンを焼き、目玉焼きにした卵3個分を皿に載せ、フランスパンを持って来たぎざぎざ刃のナイフで切って、テーブルに並べ「食べよっ」って言う
もうこれだけで、俺の幸せ度は沸点を突破して、体が宙に浮きだす
バター風味のマーガリンを塗ったフランスパンを、俺の前に置くと、駒ちゃんも可愛い口でかりっと齧る
「あっ、忘れてた!」った途端、さっと立ち上がって、まず冷蔵庫開けて首振って、やかんに水入れて、ガスのスイッチ押して、お湯沸かし始めて「コーヒーあったよね」って言いながら、キッチンの戸棚探して、インスタントコーヒー見つける
俺は、ぼーっとそれを見るだけだった。いいよなぁ…って、心の中で幸せの粉、スプーンで混ぜてる気分
「でね、今度ヒグマ退治に行くんだよね。荘田君、Dになれるって、ご機嫌だったよ」「へぇ〜」
「殿倉さんも、今度GOGOGOにも出てもらいたいなぁ、とか言ってたよ」「そうなんだ」
「超法規対象って、勇太郎さんだけの特例なんですってね」「まあ、多分ほかにいないからだね」「ふ〜ん」
駒ちゃんは、少し心配なことがあったみたいだけど、結局、話題はほかに移って、そうしてお昼食べ終わってから、俺はその気になってたんだけど、駒ちゃんは「今日はパパの誕生日なの。で家に帰るの」って、帰ってった
2023年01月12日
ランボー超人Bの物語-17 ヒーローは孤独ってかE
お屋敷から、また車に乗せてもらって、なんにも口をきかない運転手の後姿見てるうちに、なんか、段々むしゃくしゃしてきた
よく考えたら、別に超法規とか、してもらわなくっても、俺は超人だから自由にやれるじゃん、っていう考えになって、あの黒沢とか言う元大臣に、ごちゃごちゃ言われたのが、マジ腹立って来た
大体、いつだって俺は、ワルが相手でも殺さんように気を遣ってたし、一般の人が困ってるときは、特に慎重にやってきた。それなのに、いかにもお前に教えてやるぞ、みたいな言い方してきたことが怒れる
で、この車に乗せてもらってるのも癪に障ってきたんで「すんません、俺、飛んで帰るんで、ここらで下してください」って、だんまり運転手に言ってやった
突然、車が停まって「どうぞ」って運転手がそっけなく言う。どこら辺に停まったのか、よく分からんかったけど、俺は黙って降りた。車は、そのまま行っちまう
どうせどこに置いてかれても、空に上がればなんてことないんで、宙に浮いてゆっくり高度を上げてった
上りながら下界をチェックしてくと、広い河川敷のある川、多摩川が分かった。川に沿ってどんどん下流に行けば、いつかは東京湾の前に羽田空港があるはず。ついでに、航空管制に引っかかるか試すのも面白そう
俺は余裕で、そのプラン通りに飛んでいく
まあ、俺には航空管制の無線なんて付いてないから、どんな騒ぎになってるかなんて、関係ない
さすがに、羽田空港は着く前に、遠目でも確認できたんで、そこから北に向かってマンションまで一直線
部屋に戻ると、なんか腹が減ってるのに気が付いた。冷蔵庫の中は、ほぼ空なので近所のコンビニで、弁当3つと缶ビール買って又、部屋に戻る
あっという間に弁当2個を食べ切って、最後の1個にかかる前に、スマホに電話が入った。成森さんだ
「おい、SIT辞めちまったってほんとか?」「ええ、人事課の人に言われたんで、そういうことにしました」
「課長は、なにか言ったか?」「俺の判断なら仕方ない、みたいな感じですかね」そうは言ってなかったけど、まあ大体そんなニュアンスもあったから、そう言っといた
成森さんは、しばらく黙った後「課長のとこにもいろいろ言ってきたみたいだったからなぁ…」って言って、それから、なにか困ったことあったら、あんまり力にはなれないけど、俺に相談してくれ、さっきは会議中で申し訳なかった、みたいなこと言って電話を切った
なんだか、成森さんに言われると、辞めるの早まったかなって思っちゃうが、そうしたお蔭で、新しい展開も出て来たんだから、こういうときはポジティブで行くのが一番、って考えたらやる気が湧いて来たんで、
荘田君からもらってた名刺を見て、電話を入れてみた
「上辻曲でーす。今、電話、大丈夫?」「ああ、はい、いいですよ。ちょうど、僕もお電話しようかな、って思ってたとこですから」おっ、意外に元気だ「もっとへこたれてるかなって思ってたけど、この間の取材は、どうなったの?」「そう、それですよ。僕も穴山さんも、大分、ごちゃごちゃ言われちゃいまして、結局、僕は深夜枠の『びっくり映像グランプリ』に異動で、今、お笑いキングの松久さんと新コーナーの企画練ってるんですよ」「松久さんって、マツタカのこと?」「そうっすよ、松久隆利っすよ!」
そう言えば、深夜バラエティを松久隆利と女優の末広直子がやってるって、ちらっと聞いたことがある
「とにかく、インパクトがある画と結果があるネタなら、なんでも来いの番組っすから、いけるかなって猪を観てもらったんですよ。そしたら、ええやないかぁ!って」「で、ヒグマも売り込んだ?」「そっす!」
何か、面白くなってきたっぽくない!?
「一応、売込み動画って体裁ですから、また、僕とランボーさんの二人ロケってことですかね」「OK、やろうよ!」
神戸の猪退治も、そんな編集でいくみたい。俺も、なんか俺のやること超法規になるんだって、って荘田君に言ったら、随分喜んでた
電話終わって、残りの弁当も食って、やる気満々の俺だったけど、荘田君だけに任せず、ヒグマのことも調べんといかんって思って、PCのフタを開けた
よく考えたら、別に超法規とか、してもらわなくっても、俺は超人だから自由にやれるじゃん、っていう考えになって、あの黒沢とか言う元大臣に、ごちゃごちゃ言われたのが、マジ腹立って来た
大体、いつだって俺は、ワルが相手でも殺さんように気を遣ってたし、一般の人が困ってるときは、特に慎重にやってきた。それなのに、いかにもお前に教えてやるぞ、みたいな言い方してきたことが怒れる
で、この車に乗せてもらってるのも癪に障ってきたんで「すんません、俺、飛んで帰るんで、ここらで下してください」って、だんまり運転手に言ってやった
突然、車が停まって「どうぞ」って運転手がそっけなく言う。どこら辺に停まったのか、よく分からんかったけど、俺は黙って降りた。車は、そのまま行っちまう
どうせどこに置いてかれても、空に上がればなんてことないんで、宙に浮いてゆっくり高度を上げてった
上りながら下界をチェックしてくと、広い河川敷のある川、多摩川が分かった。川に沿ってどんどん下流に行けば、いつかは東京湾の前に羽田空港があるはず。ついでに、航空管制に引っかかるか試すのも面白そう
俺は余裕で、そのプラン通りに飛んでいく
まあ、俺には航空管制の無線なんて付いてないから、どんな騒ぎになってるかなんて、関係ない
さすがに、羽田空港は着く前に、遠目でも確認できたんで、そこから北に向かってマンションまで一直線
部屋に戻ると、なんか腹が減ってるのに気が付いた。冷蔵庫の中は、ほぼ空なので近所のコンビニで、弁当3つと缶ビール買って又、部屋に戻る
あっという間に弁当2個を食べ切って、最後の1個にかかる前に、スマホに電話が入った。成森さんだ
「おい、SIT辞めちまったってほんとか?」「ええ、人事課の人に言われたんで、そういうことにしました」
「課長は、なにか言ったか?」「俺の判断なら仕方ない、みたいな感じですかね」そうは言ってなかったけど、まあ大体そんなニュアンスもあったから、そう言っといた
成森さんは、しばらく黙った後「課長のとこにもいろいろ言ってきたみたいだったからなぁ…」って言って、それから、なにか困ったことあったら、あんまり力にはなれないけど、俺に相談してくれ、さっきは会議中で申し訳なかった、みたいなこと言って電話を切った
なんだか、成森さんに言われると、辞めるの早まったかなって思っちゃうが、そうしたお蔭で、新しい展開も出て来たんだから、こういうときはポジティブで行くのが一番、って考えたらやる気が湧いて来たんで、
荘田君からもらってた名刺を見て、電話を入れてみた
「上辻曲でーす。今、電話、大丈夫?」「ああ、はい、いいですよ。ちょうど、僕もお電話しようかな、って思ってたとこですから」おっ、意外に元気だ「もっとへこたれてるかなって思ってたけど、この間の取材は、どうなったの?」「そう、それですよ。僕も穴山さんも、大分、ごちゃごちゃ言われちゃいまして、結局、僕は深夜枠の『びっくり映像グランプリ』に異動で、今、お笑いキングの松久さんと新コーナーの企画練ってるんですよ」「松久さんって、マツタカのこと?」「そうっすよ、松久隆利っすよ!」
そう言えば、深夜バラエティを松久隆利と女優の末広直子がやってるって、ちらっと聞いたことがある
「とにかく、インパクトがある画と結果があるネタなら、なんでも来いの番組っすから、いけるかなって猪を観てもらったんですよ。そしたら、ええやないかぁ!って」「で、ヒグマも売り込んだ?」「そっす!」
何か、面白くなってきたっぽくない!?
「一応、売込み動画って体裁ですから、また、僕とランボーさんの二人ロケってことですかね」「OK、やろうよ!」
神戸の猪退治も、そんな編集でいくみたい。俺も、なんか俺のやること超法規になるんだって、って荘田君に言ったら、随分喜んでた
電話終わって、残りの弁当も食って、やる気満々の俺だったけど、荘田君だけに任せず、ヒグマのことも調べんといかんって思って、PCのフタを開けた
2023年01月07日
ランボー超人Bの物語-17 ヒーローは孤独ってかD
なんでこの人は、こんなに偉そうにしてるんだろーって俺が思ってるのを、部屋に居る誰もが分かってないのが可笑しくって、ちょっと笑っちゃった
「いやぁ、わしも若い人にそこそこ人気あると思っとったんだが、そうかそうか知らんかったか。民自党の漫画好きオヤジの黒沢太郎です。どうぞ、顔、覚えちゃってくれんね」笑顔になると意外に人が好さそうに見えるけど、まあ、政治家だもん、あてにはならんだろな
「すみません、政治家さんが出るような番組、あんまり見てないんで…」ということにしといた
「そりゃそうだな、君らの歳なら知らんでも不思議じゃないわな。はっはっは」って、取って付けたように笑ってごまかしてる
「で、俺になんの用なん?」なんか気に入らんので、わざとぶっきら棒に言ってやる
「おい、君、失礼だぞ、そんなもの言いは!」茶色スーツが、我慢できんって感じで言って来た
「いい、いい。なんせ、こちらは超人さんなんだから」やっぱり、大物ぶってるよこの人
「いやなに、今度、政府の方針で、君の日本国籍をはく奪しようっちゅう意見が出てなあ。聞いとるだろ?」
「へぇーそうなの。そうなると、俺って日本に居らんくなるの」そんなことないだろうって思いながら訊く
「う〜ん、それはないだろう。だが、君があまり無茶続けたら、あるのかも知れんぞ。まあ、そんなことより、これまでの君のやってきたことを見れば、大体は大丈夫だろう。ただな、君が暴れると、必ず損害賠償の対象になるような被害が出る。これまでは、警察庁が君を手駒にしたくて、庇っていたようだが、今回の退職でそれも無くなる。そこで、君のやるあれやこれやを、引き受ける省庁が出て来なかったら、いくら正義だとかなんだとか言っても、君に降りかかって来る訴訟や罰則の対処ができん」うわっめんどくさい話し!
「じゃ、俺に正義の味方はやれないってことですか。か、うんと考えてやるしかないとか」
「それじゃあ、いざってときに動けんだろ。そこでだ、君を超法規の存在にして、自由に正義を執行できるようにするという案が出て来たんだよ」その自信たっぷりの顔を見ると、あの大手組の親分そっくりだった
「その案は誰が出したんですか」訊いといて、なんか答えが分かった気がしたんだけど、やっぱり「わしだよ」って、得意そうな顔になった
「じゃあ、俺は自由に正義の味方やっていいんですね?」一応、そう言うしかないじゃん
「そう、わしと、この浪岡官房副長官が、バックアップするから、思う存分やってくれ」茶色スーツが片手を軽く上げて、俺が官房副長官だよっていうように、頷いた
「じゃあ、なんとか法違反とか、空飛ぶときの高度とかなんとか、いちいち言われないってことですね」
「おお、その辺りは超法規だ。ただし、君に言っとくが、大衆に嫌われるようなことはなるべくやるなよ。後で、説明がつくようなことなら問題ないが、その場に居合わせた人には嫌われんように。まあ、ネット民にはあれこれ言われても、ほっとけばいいんだが、それから、人は殺しちゃあいかん。悪人でもだ。事故や事件に関わって、たまたま死者が出た場合は仕方ないが、とにかく人が死ぬ事態だけは避けるんだぞ」
言ってることは分かったんで、俺はちゃんと約束して、それから京美人が持って来たお茶と和菓子を飲み食いして、俺はお屋敷を後にした(どうせ裏があるんだろうけど、自由に動けるってのは大歓迎ってことで)
「いやぁ、わしも若い人にそこそこ人気あると思っとったんだが、そうかそうか知らんかったか。民自党の漫画好きオヤジの黒沢太郎です。どうぞ、顔、覚えちゃってくれんね」笑顔になると意外に人が好さそうに見えるけど、まあ、政治家だもん、あてにはならんだろな
「すみません、政治家さんが出るような番組、あんまり見てないんで…」ということにしといた
「そりゃそうだな、君らの歳なら知らんでも不思議じゃないわな。はっはっは」って、取って付けたように笑ってごまかしてる
「で、俺になんの用なん?」なんか気に入らんので、わざとぶっきら棒に言ってやる
「おい、君、失礼だぞ、そんなもの言いは!」茶色スーツが、我慢できんって感じで言って来た
「いい、いい。なんせ、こちらは超人さんなんだから」やっぱり、大物ぶってるよこの人
「いやなに、今度、政府の方針で、君の日本国籍をはく奪しようっちゅう意見が出てなあ。聞いとるだろ?」
「へぇーそうなの。そうなると、俺って日本に居らんくなるの」そんなことないだろうって思いながら訊く
「う〜ん、それはないだろう。だが、君があまり無茶続けたら、あるのかも知れんぞ。まあ、そんなことより、これまでの君のやってきたことを見れば、大体は大丈夫だろう。ただな、君が暴れると、必ず損害賠償の対象になるような被害が出る。これまでは、警察庁が君を手駒にしたくて、庇っていたようだが、今回の退職でそれも無くなる。そこで、君のやるあれやこれやを、引き受ける省庁が出て来なかったら、いくら正義だとかなんだとか言っても、君に降りかかって来る訴訟や罰則の対処ができん」うわっめんどくさい話し!
「じゃ、俺に正義の味方はやれないってことですか。か、うんと考えてやるしかないとか」
「それじゃあ、いざってときに動けんだろ。そこでだ、君を超法規の存在にして、自由に正義を執行できるようにするという案が出て来たんだよ」その自信たっぷりの顔を見ると、あの大手組の親分そっくりだった
「その案は誰が出したんですか」訊いといて、なんか答えが分かった気がしたんだけど、やっぱり「わしだよ」って、得意そうな顔になった
「じゃあ、俺は自由に正義の味方やっていいんですね?」一応、そう言うしかないじゃん
「そう、わしと、この浪岡官房副長官が、バックアップするから、思う存分やってくれ」茶色スーツが片手を軽く上げて、俺が官房副長官だよっていうように、頷いた
「じゃあ、なんとか法違反とか、空飛ぶときの高度とかなんとか、いちいち言われないってことですね」
「おお、その辺りは超法規だ。ただし、君に言っとくが、大衆に嫌われるようなことはなるべくやるなよ。後で、説明がつくようなことなら問題ないが、その場に居合わせた人には嫌われんように。まあ、ネット民にはあれこれ言われても、ほっとけばいいんだが、それから、人は殺しちゃあいかん。悪人でもだ。事故や事件に関わって、たまたま死者が出た場合は仕方ないが、とにかく人が死ぬ事態だけは避けるんだぞ」
言ってることは分かったんで、俺はちゃんと約束して、それから京美人が持って来たお茶と和菓子を飲み食いして、俺はお屋敷を後にした(どうせ裏があるんだろうけど、自由に動けるってのは大歓迎ってことで)
2023年01月02日
ランボー超人Bの物語-17 ヒーローは孤独ってかC
こんな家がなんだってんだ!って反発して、俺は勢いよくドンっと玄関に踏み込んでやった
「ようこそお越しやす」って、きれいな女の人がきれいな声で、玄関を上がるとすぐの部屋に居て、すんごく丁寧に、座って手をついて頭を下げて、迎えてくれた
そんな挨拶してもらったことない俺は、あせっちゃって「あっ、どーもっす」なんて、めちゃ間抜けな返事をしちまった
こういうのが待ってるなんて、考えてなかったんで、ついついどぎまぎしちまって…。それでも、こりゃあ敵の策略だな、って心の底では気が付いてる俺も、なかなかのもんだろ
だって、ここ東京だし、京都の女の人が出て来るなんて、変でしょ
「呼ばれたんで来ました、上辻曲っす」「お待ち申しておりました。どうぞお上がりやす」みたいな流れで、俺は靴を脱いで、畳敷きになってる小部屋に上がる。女の人が、俺の靴を直すと「さ、こちらにどうぞ」って言って、部屋の右に続く廊下を、つつつつってな感じで先に進んで行く
まさか時代劇じゃあるまいし、って思いながらもまあ、きれいな女の人には逆らえない俺なんで、大人しく後に続いて長い廊下を歩いた
少し歩くと、前方が明るくなってきた。襖で隠された部屋の角を曲ると、ぱぁっと前が開けて旅館っぽい日本式の庭園が見えた
しずしずって感じで前を歩いていた京都美人が、すっと停まると頭を下げて「上辻曲さまをお連れしました」って、部屋の中の人に声を掛けた
「おう、まあこっちにどうぞ」って、ややどすが効いてる系の親分っぽい声が聞こえ、部屋の中から黒いスーツの男が出て来て「こちらにどうぞ」って、声を掛けてきた
ここまでの間に、なんか負けそうな気分になってた俺の心に、なんか脅かされてるんかな、って気持ちが段々強くなってきてた
部屋の入口に立って、中を見ると(本当は透視できてたんだけど、それも思いついてなかったくらいあがってたんか)、やけに迫力のあるおっさんが、和式の黒いテーブルの向こうに、どしっと座ってて、こっちに来いよみたいな感じで手招きしてる
部屋から出て来た黒スーツが「さあ」って言って、テーブルのこっち側に置いてある、やけに厚い座布団に座れ、って感じで勧めてきた
畳敷きの座敷に座るっていう機会は、そんなに無いんで、俺はちょっとどぎまぎしたんだけど、なんか慣れないことやらされてるみたいで、腹も立って来たんで、勢いつけてどかっと座ってやった
「おう、元気がいいなぁ、結構結構」って、なにが結構なんか分からんけど、とにかく親分っぽい感じ満タンで、こういう奴は人に話し掛けといて、相手の話を聞かんタイプなんだな
雄仁塚建設にいた頃、滑川さんと一緒に会ったお施主さんで、こんな感じの人がいたな
「こちらは黒沢先生でございます。貴方もご存知でしょうが」って、もう一人の代議士秘書っぽい茶色スーツの人が声掛けて来たんだけど、俺知らんなぁ…って言うか、この人は何時からこの部屋に居たのかが気になった
「すみませんが、俺、こちらの方、存じ上げてないんですけど…」って、言っときながら、はっと気が付いた。民自党のなんとか大臣やってた人だよな(俺の返しで気を悪くした?)
「ようこそお越しやす」って、きれいな女の人がきれいな声で、玄関を上がるとすぐの部屋に居て、すんごく丁寧に、座って手をついて頭を下げて、迎えてくれた
そんな挨拶してもらったことない俺は、あせっちゃって「あっ、どーもっす」なんて、めちゃ間抜けな返事をしちまった
こういうのが待ってるなんて、考えてなかったんで、ついついどぎまぎしちまって…。それでも、こりゃあ敵の策略だな、って心の底では気が付いてる俺も、なかなかのもんだろ
だって、ここ東京だし、京都の女の人が出て来るなんて、変でしょ
「呼ばれたんで来ました、上辻曲っす」「お待ち申しておりました。どうぞお上がりやす」みたいな流れで、俺は靴を脱いで、畳敷きになってる小部屋に上がる。女の人が、俺の靴を直すと「さ、こちらにどうぞ」って言って、部屋の右に続く廊下を、つつつつってな感じで先に進んで行く
まさか時代劇じゃあるまいし、って思いながらもまあ、きれいな女の人には逆らえない俺なんで、大人しく後に続いて長い廊下を歩いた
少し歩くと、前方が明るくなってきた。襖で隠された部屋の角を曲ると、ぱぁっと前が開けて旅館っぽい日本式の庭園が見えた
しずしずって感じで前を歩いていた京都美人が、すっと停まると頭を下げて「上辻曲さまをお連れしました」って、部屋の中の人に声を掛けた
「おう、まあこっちにどうぞ」って、ややどすが効いてる系の親分っぽい声が聞こえ、部屋の中から黒いスーツの男が出て来て「こちらにどうぞ」って、声を掛けてきた
ここまでの間に、なんか負けそうな気分になってた俺の心に、なんか脅かされてるんかな、って気持ちが段々強くなってきてた
部屋の入口に立って、中を見ると(本当は透視できてたんだけど、それも思いついてなかったくらいあがってたんか)、やけに迫力のあるおっさんが、和式の黒いテーブルの向こうに、どしっと座ってて、こっちに来いよみたいな感じで手招きしてる
部屋から出て来た黒スーツが「さあ」って言って、テーブルのこっち側に置いてある、やけに厚い座布団に座れ、って感じで勧めてきた
畳敷きの座敷に座るっていう機会は、そんなに無いんで、俺はちょっとどぎまぎしたんだけど、なんか慣れないことやらされてるみたいで、腹も立って来たんで、勢いつけてどかっと座ってやった
「おう、元気がいいなぁ、結構結構」って、なにが結構なんか分からんけど、とにかく親分っぽい感じ満タンで、こういう奴は人に話し掛けといて、相手の話を聞かんタイプなんだな
雄仁塚建設にいた頃、滑川さんと一緒に会ったお施主さんで、こんな感じの人がいたな
「こちらは黒沢先生でございます。貴方もご存知でしょうが」って、もう一人の代議士秘書っぽい茶色スーツの人が声掛けて来たんだけど、俺知らんなぁ…って言うか、この人は何時からこの部屋に居たのかが気になった
「すみませんが、俺、こちらの方、存じ上げてないんですけど…」って、言っときながら、はっと気が付いた。民自党のなんとか大臣やってた人だよな(俺の返しで気を悪くした?)