2022年12月31日

ランボー超人Bの物語-17 ヒーローは孤独ってかB

大本(オオモト)の方って、言っちゃってから、なんか変な言い方だったかなぁ、って思ったけど、ま、しょうがない、言っちゃったんだから。黒幕って言うとギャングみたいだし、上司の方っていう感じじゃないだろうし…
こっちが、もやもや考えてたら「分かりました、連絡取ってみますので、電話を切ってしばらくお待ち下さい」って素直に答えたんで、びっくりした。どっちにしても、そんなに隠そうとしてる訳じゃあなさそうだな

5分もしないうちに、轟係長から電話が入って「先生がお会いしたいとおっしゃっていますので、これからお迎えに伺います」って言って来た。こっちも「はい、どうぞ」って返事しといたら、10分後に、ドアチャイムが鳴ったんで、ドア越しに透視すると、あの時の若い佐久間君が仏頂面で立っている
「まさか、今日の今日で返事が来るって、思ってなかったでしょ」こっちから打ち解けてやろうって思ったんで、気軽な調子で話しかけてみたんだけど、昼に来たときに機嫌悪くしたせいか、にこっともしないで「用意出来てるんなら、下に車待ってます」って、ぼそっと言うだけ

一緒にエレベーターに乗っても、車(黒塗りの高級車!)に乗り込むときにも、な〜んにも喋らず、俺を後ろの座席に案内してから、ドアを閉めて助手席に乗り込んだ
運転してる奴も、ただしっかりハンドル握って、黙って運転してるだけの無言で、面白くもなんともない
それでも、しばらく走って、なんかお屋敷町みたいな区画に入ると「もうすぐ着きますから」って、ぼそっと一言だけ声を出した
それから、なんか鉄柵の門に車が近づくと、門が一人でに開き(ま、当然自動扉なだけだけど)、車は静かに邸内(って言えるような大きなお屋敷)に入って停まる

俺って庶民だから、こういうのに弱いって言うか、位負けって言うのか、なんか緊張しちゃってる
佐久間君がさっと降りて、後部ドアを開けてくれる。ちょっと偉くなった気分
降りると「こちらです」と言って、どうぞみたいな感じで手を動かすと、後は俺を見ようともしないで、さっさと先に発って歩き出す
慌てて付いて行きながら、これじゃあ負けてるみたいじゃん、って思って、気を取り直して、歩く速度を上げて、佐久間君を追い越すと、今度は彼の方が慌てて、俺の前に出ようとする
そんな馬鹿やってると、結構広い敷地なんだけど、じきに玄関に到着してしまい「こちらからどうぞ」って、若干はあはあしながら佐久間君が、玄関の引き戸を開けてくれた(まるで和風旅館みたいな家じゃん!)
posted by 熟年超人K at 18:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説

2022年12月26日

ランボー超人Bの物語-17 ヒーローは孤独ってかA

三人が帰った後、以前教えてもらっていた星崎さんの番号に電話しようとして、その前に成森さんに電話した方がいいんじゃないか、って気が付いた(俺も大人になったもんだ、っていうか成森さんの方が話し易い)
それで、成森さんのスマホに電話すると「おっ勇太郎さんか、すまん今、会議中なんだ、後にしてくれ」って、すぐ切っちまった

しょうがないから、結局、星崎さんに掛けることにした
「上辻曲君か、いまどうしてるんだ。君からSITの退職願いが届いて驚いたよ。大方人事あたりからいろいろ言われたんだろうが、別に辞めなくてもよかったんだよ」…なんか、もう済んだことだっていう響き
「それはもうどうでもいいんですけど、ついさっき内調ってとこの人が訪ねて来たんで、星崎さんに相談しようかな、って思ったんで…」一発かましてみた
「なにっ、内調が来たのか!」思った通り、相当効いたみたいだ。公安と内調ってライバル同士だっていうの、ドラマでも有名だもんな

「それは…君も、慎重に対応した方が良いね。うん、相談してくれたのは正しい選択だよ」ほら、やっぱり
「でも、内調の人の言う通りにしないと、この先、俺、大変なことになるんだって言ってましたけど…」少し不安そうな声を出してみる
「いやいや、そんな、なにも君が急に日本の法律から分離されると言うのはあり得ない。すまんがこの件は、少し私に預からせてくれないか」いつもの自信家の星崎さんにしては、慎重って言うか弱気って言うか、あまりはっきりした言い方じゃない(って言うことは、結構やばくなってるんか俺)
「わかりました。じゃあ、向こうが催促して来たら、そう応えときます」「いや、それはまずい、私に相談していることは、伏せといてくれ。あくまで、君の判断で、もう少し待ってくれと言うんだ」困ってる困ってる
「分かりました。自分の考えでやることにします」どうも頼りにならなそうだって分かった。これからは、自分の判断で乗り切る気になれた

それならすぐやっちゃおう!って、置いてった轟係長の名刺見て、電話してみた
「おお、上辻曲さんですか、ご連絡ありがとうございます。で、決心がついた訳ですか」乗り気な返事なんで、逆にちょっと警戒心が湧く
「決める前に、この話の大本の方に逢わせてもらえませんか?」別にそれほど考えてなかったんだけど、自分でも思いがけず、そんなセリフが口から出て来た
posted by 熟年超人K at 11:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説

2022年12月22日

ランボー超人Bの物語-17 ヒーローは孤独ってか@

俺的には、こんな風に上から目線で言われるのが大嫌いだったんだけど、警視庁勤めして、この手の人たちの傾向というか、特徴は分かっていたんで、ここは逆らわずに話を聞く振りだけでもしとくことにした

「まあ、なにも貴方に日本人を辞めてくれなんて言ってる訳ではないんです。ただ、対外的には、超人ランボーさんで通して頂きたいのです」中年の男は、妙に馴れ馴れしいというか、親切ぶった喋り方で、俺を口説いてる(怪しい通販のアレだ)
「まあ、いいんっすけど、俺、まだあなたの名前も知らないんだよね。それだったら、こんな話だけでいい返事なんて、できっこないっしょ」って、言ってやった
「まあまあ、我々にもいろいろ理由がありましてね。でもいいでしょう、私は溝口と申します。それから、こちらが4係の係長の轟で、同じく4係の佐久間です。今後、連絡等は轟に取って頂ければ結構です」いかにも偉そうな奴だ

「4係の轟雄作です」って、この人だけ名刺を出してくれた
「それで、俺、なにすればいいんですか?」ちゃんと挨拶があったんで、俺も真面目に訊いてみた
「それでは、こちらの書類に貴方のお名前と生年月日と、ここの住所をご記入下さい」轟係長が合図すると、佐久間と呼ばれた若いのが持っていたアタッシェケースから、お役所っぽい書類を出して、俺の前に置いた
「ちょっと訊いときたいんだけど、これ書くと俺って、どうなるの」書面を残すってのは、大事なことだから、相手が誰だろうと、ちゃんと訊いとけってのが、死んだ親父がいつも言ってたことだ
「簡単に言えば、君になにかあっても、警察とか救命の保護が無いということかな。まあ、君は超人だから、その辺りは問題ないんだろう?」溝口って名乗った、一番偉そうな人が、さばさば言う

「俺って、国籍とかも無くなるってことなの?例えば、結婚するとか、子供ができても籍が無いとか」駒ちゃんの顔が浮かんだんで、後の方を付足した
「いいえ、そんなことはありませんよ。貴方がするのは、一時的な国籍離脱ですから、ご結婚とかお子さんがお生まれになれば、その辺りは大丈夫です」なんか、変な話だけど、もう少し訊いておきたいこともある
「それで、俺はもう思ったままに超人として、いろんなことやってもよくなるの?」
「公序良俗に背かなければ、OKです。とは言っても。やりたい放題やれるという訳でもないんですが」なんか、ひっかかった言い方だなと思った俺は、ちょっと相談したい人がいるんで、サインは後日ってことで、お願いします」って、言い切ってみた

轟係長は困ったような表情になり、ちらっと溝口さんを見て「分かりました。それでは、明日一杯お待ちしますので、木曜日の午前11時にお伺いいたします」って言うと、お辞儀をして三人で帰っていった
部屋に残った俺の頭に、思いがけず警視庁の星崎さんの顔が浮かんだ(駒ちゃんじゃなく)
posted by 熟年超人K at 18:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説

2022年12月18日

ランボー超人Bの物語-16 大体ヒーローじゃんC

「仕方ないな」とかもう一人の囁き声がして(俺、超人だから聴こえちゃう)、続いて「内閣調査室の者で、怪しい者ではありませんので、お部屋でお話させて頂きたいのですが」って、真中の若い奴が言った
どっちみち、入って来る気だろうと思ったけど、俺もちょっと意地になって「だぁからぁ、用があるんならここで喋ってよ」って言ってみた(大体、内閣調査室なんて知らんし)

「つべこべ言うんなら、ここで言ってやろうかっ!」ついに頭にきたみたいで、若い奴がそう言うと俺の胸をど突いて来た。もち、俺はびくともしない。で、そいつは、運動量の法則かなんかで、自分の力が跳ね返ってよろめいた
「よせっ、この人は我々なんかの力じゃ歯が立たないんだから、とにかく頭を下げて話を聞いてもらうしかないんだぞ!」って、多分偉い人らしい中年の男の人が、若いのを叱った(なら、最初からお前が話せよ)

「失礼した。突然の訪問で、訝しむ気持ちは理解しますが、なにぶん国家の機密事項でもありますので、この場でお話しするわけにはいかないのです」今度は、やけに下手に出て来たから、俺としてはまあ満足なんだけど、なぜこういう段取りになるのかねぇ…
「わかりました、そういうことならお入り下さい」ってな風になって、三人が部屋に入って来た

残念ながら、特に応接っぽい家具がないんで、ダイニングテーブルのとこに、アウトドア用の折り畳み椅子を足して、三人に座ってもらい「インスタントしかないんで、それでいいっすか?」って、訊いた
もちろん三人は断ったんだけど、俺としてもなんか恰好がつかないんで、客用にって駒ちゃんが持ってきてくれてたマグカップに、インスタントコーヒーの粉をスプーンで入れて、慌てて沸かしたお湯を注いで、来客に出してやった(もち、自分のも用意)

「で、なんの御用なの?」改めて訊いてみたけど、すぐ返事ってことない訳だから、コーヒーを一口
「実は、内閣で貴方のことが議題に上りまして」って、中年の偉そうな人が口を利くとすぐ「日本政府としては、君のことをカバーできなくなる先に備えて、君を日本国籍から切り離すことを考えている」ってそれまで口を開かなかった最後の一人が、声優みたいないい声で話を繋いだ
「はあ?」ってなるよね

「その方が、貴方も自由にやってもらえそうだし、第一、どうせ我々には貴方を止める手がないんだから。国民としての国の保護の必要もなさそうだし、その方がスーパーマンやり易いんでしょ」って中年の人
「えっ、ちょっと待ってくださいよ。俺、日本から追い出される、ってことなんですか?」急に不安になる

「そうじゃあない。むしろ我が国としては、君の存在価値が高まっているのは百も承知なのだ。ただ、現行法に照らすと、君のやりたい放題では支障が多いのも事実。我々が、そこに対処しなければならなくなれば、おのずと君との対峙を覚悟せねばならなくなる。そんなことになれば、テレビ局の彼女との関係も含め、今の君の生活環境は成立できなくなる」…三人目の人が何を言いたいのかあまりよく分からなかったんだけど、駒ちゃんのことが出たんで俺はかっとなって、すぐはっと気が付いた。いくら俺が超人でも、全部は守り切れないってことに

「じゃあ、俺はどうすればいいんですか?」「それでそこをご案内に、こうしてお伺いした訳なんです」中年の人が、ちょっと嫌味な感じで付け加えてきた
posted by 熟年超人K at 11:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説

2022年12月11日

ランボー超人Bの物語-16 大体ヒーローじゃんB

雄仁塚建設に顔を出すって言っても、本当にただ顔を出して、合田社長が居たら挨拶して、居なけりゃ建築工事課の滑川さんと、少しお喋りして帰るくらいのことで、俺的には只今失業中みたいな感じだったけど、まあいいかってなもんで、真面目に働いてた頃の貯金で飯食ってた
それと、やっぱ駒ちゃんの存在が大きかったかな。だから、別に慌てて仕事探しなんかしてなかった

そんなふわふわの幸せ時間が消えるのも、あっと言う間だったな
3月最後の火曜日、俺がマンションで昼飯用のウインナーをフライパンで焼いてると、ドアのチャイムが鳴った
俺の住んでるマンションは、館内に入る為のオートロックなんてものが無い(だからこの辺りにしちゃあ安い)
だもんで、来客とか不審者とかは直接玄関ドアのチャイムを鳴らすのだ
何が来たって怖くないってのは、いいときもあるが良くないときもあって、その日のチャイムは良くない方だった

で、その時の俺は、フライパンの中のウインナソーセージを菜箸で掻き回しながら、ドアを透視して、宅配便でもなければ、もちらん駒ちゃんでもない、ダークスーツの三人組が、全く見知らぬ奴だったんで、もしや丸暴か半グレが仕返しに来たんかな、ってのんびり構えて、ちゃんとフライパンの火を止めてから、ドアんとこに行き、どっちみち何が来ようとやっつけられる自信があるから、俺は平気でドアを開けてやった

ドアの向こうで突っ立ってる三人の真中のが「上辻曲勇太郎さんですね」ときた
「ええ、そうですけど」って返すと「お話があるので、お部屋に入れて頂けませんか」って、馬鹿丁寧に訊いてくる
「なんかの勧誘っすか?」一応とぼけて訊いてみたけど「いいえ」って言うだけで、名乗らない、名刺も出さない。こりゃ警察関係とかかな、って思ったけど、普通の警察関係者なら、ちょっと前まで警視庁に通勤してた俺に、もうちょっと仲間意識って言うか、なんとなく親しみ示すだろ
ってことは、違うんだ、って思った(俺もなかなか頭が回るようになったな)

「どちらさんか、教えてもらえないんなら、部屋に入ってもらう訳にはいかないんだけど」って、軽く喧嘩売ってみた(俺、ちょっと自信過剰かな)
posted by 熟年超人K at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説

2022年12月08日

ランボー超人Bの物語-16 大体ヒーローじゃんA

「やりましたねぇ。だけど、猪ってすごいタフですねぇ。いっくらランボーさんが叩き付けても、起き上がって来るんで、どうなっちゃうかとハラハラでしたよぉ」荘田君が正直な感想を吐き出す
「こりゃ、熊とかが相手だったら、なんか対策練っとかないとやばいよな」俺も本音が出ちゃう
「おおっ、次は熊っすか。熊かぁ、どこに行けばいるんだろ。青森で出たって前、ニュースでやってましたよね」
「そうだったっけ。でも本州だったら、月の輪熊だよね。北海道のはヒグマだから、もっとでかいんだよな」

「ヒグマ!それ、ちょっとやばいんじゃぁ…。そっか、知床とか行けば、すぐ見つけられそうだし、なんか牛を何頭も喰っちまったナンバー付きの巨大熊ってのも、いましたよね。そうなると、北海道でヒグマ退治の方が、いい画が撮れるかなあ…」なんて、荘田君がぶつぶつ言ってるんで、そうか次は一気にヒグマかぁとか考えちゃう俺
どうも、俺と荘田君は似てるとこあるみたいで、二人で喋ってるとなんでもラクショーみたいになっちゃう

「まあ、とにかく猪の画は撮れたんで、一応局に連絡入れときますんで、もう戻りましょう」って、荘田君はスマホを出すと、穴山Dらしき相手に電話してたけど、途中からぐんぐんしょぼくなってった
「ランボーさぁん、局に市役所から確認の連絡入ったみたいで、報道からウチにクレーム入ってるらしいっす。俺、すぐ新幹線で戻らんといかんみたいなんですよ。で、すんません、バイク持って帰ってもらえます?」ほかにも、バイクがTテレから飛び上がったの、ネットで拡散されたみたいで、そっちも国交省航空局から局に問い合わせが入ってるみたいだった

とにかく、しょぼんとした荘田君と新神戸駅で分かれ、俺は、おっかなびっくりだったけど、神戸に置いてく訳にいかないんで、バイクに跨ってTテレに飛んで帰った
もちろん、まだ荘田君は局に帰ってなく、穴山さんがバイク受け取ってくれたんだけど、彼もかなりめげてる様子だった。まあ、俺は局外者なんで、誰にも叱られはしなかったけど、後が大変だろーなって、荘田君と穴山さんに同情した
とにかく俺はバイクを返した後、超人ランボーコスチュームを脱いでから、マンションに飛んで帰った
部屋に戻ると、駒ちゃんは夕食の支度をしていてくれて、大活躍でめっちゃ腹が減っていた俺は、この娘と結婚ってありかなとマジ思った

それから1週間が過ぎたけど、神戸市の猪退治は放送されず、Tテレのザキさんからも穴山さんからも、なんの連絡もなかった。ただ、駒ちゃんがまた遊びに来てくれたことがあって、自衛隊からも国交省からも上の方に、大分大きなクレームがあったってことは聞いた
あと、警視庁の方も、退職願の返事もなんにもなく、俺は2〜3日は連絡あるかなーって待ってたけど、まあこんなもんか、って思って、放っといて久しぶりに雄仁塚建設に顔を出したりして、呑気に過ごしていた
posted by 熟年超人K at 21:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説