2022年06月22日

ランボー超人Bの物語-13 本気で正義の味方やってみるA

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東京 危ない場所 で検索すると“渋谷駅付近”と出て来る。近いので、そこから行ってみようってことにした
引っ越してきたマンションのある辺りは、危ない感じなんてまるっきりないんだけど、確かに駅の方は人(特に若い奴)が多くて、なんか面白いことないか系の連中が集まってるはずだ

5階のベランダから、夜の街に向かって飛び出すのは、映画の主人公になった気分がして、かなり盛り上がる
着てる服は、もちTテレのコスチュームじゃなくって、デニムの上下の私服だ

上空から眺めて、人が居なさそうなとこを探して、すっと降りる
それから、さっき見つけた店先に若い連中が群れてた、コンビニ目指して早足で向かう

近づいてくといるいる、若い奴らが十数人コンビニ前に集まって、座り込んでくっちゃべったり、飲んだり食べたりタバコ吸ったりしてる
俺が寄ってくと、じろっとこっちを見るけど、目線は合してこない…って言うか、無視されてるのありあり

あいつらから見ると、俺はおっさんなんだろな
「なあ、君ら、この辺りにいる半グレ集団って知ってる?」普通の調子で単刀直入に質問してみた

効果てきめんって言うのがこれだな、って笑えるくらい、連中の反応がすごかった
十五、六人のうち、十人ほどいる野郎らの眼がぎらってなり、その半分くらいの女の子らは薄笑いになった
あと一人だけ金髪の白っぽいスーツ野郎が、無表情になった(超人じゃなかったらぶるっちゃうとこだよ)

「お前、なんなんだよぉ。サツかここらの自警団かぁ」高校生くらいのスカジャンの男の子が、イキがった口調で、俺にかみついて来た
「よーせよせ、こいつきっと週刊誌かなんかの記者だよ。俺らの話がききたいだけなんだよぉ」紺色のトレーナーの少年が、スカジャンをなだめる

「おじさん、ほんとなんなの。もしかして、ユーチューバーかなんか?」赤いミニスカの女の子が、話に加わって来た(…にしても、俺、おじさん!?)

「まあそんなもんだって思ってくれていいよ。ねえ、どこに行ったら会えるか、知ってる人いるかなぁ」どう間違われたって、別に構やぁしないんだけど

「おっさん、あんた格闘家かなんか?」「えーっ、格闘家なんかに見えないじゃん」「ばーか、そう見えないようにしてるだけなんだってぇ」連中同士で勝手に喋り始めちゃって、俺、どうしたもんかな状態

「あんたさぁ、ジャガーズに会って、どうしたいの」金髪が、ぼそっと喋ったら、他の連中はぴたっと話すの止めた。やっぱ、こいつがこの連中の兄貴分、って言うか、怖がられてる奴なんだな

「ジャガーズって言うのか。ここらの半グレは」きっかけさえできれば、後はラクショーだぞって、この時点ではそう思ってた。で、少し強めに出てみた

「てめえ、どこの組のもんだ。春日部か権藤か、そんなとこだろ」…なんか勘違いされてるけど、まあいいや
「どこだっていいじゃねぇかよ。お前らんとこに連れてけよ!」思いっきし強気に出てみた

予想通り、金髪はそれほど上の奴じゃなかったみたいで、ちょっと隅の方に移動すると、スマホで連絡摂り始めた。その様子と、平気な顔で突っ立ってる俺の方を代わる代わる見ながら、若い連中は、少し距離を開けるように動き始めてる

「お前、ひとりか?」「ああ」って答えると、またスマホで話し出す
「よし、連れてってやるわ。一緒に来い!」金髪野郎の緊張感が伝わる。若い連中にも伝わったか、皆、そろそろこの場から離れてってる

肩を怒らせるってぇのの、見本みたいな感じで、前を歩く金髪は背の高さも体型も、俺と良く似てる
こんなんじゃ、暴力集団の中じや苦労してるだろうなって、ふっと思ったんで声をかけてみた
「よお、お兄さん、名前なんてぇの?」後姿がぎくっとして、立ち止まった

「うるせぇよ、なんなんだよてめえはよぉ」立ち止まると振り返って、顔を低くして下から上目づかいに、俺のこと睨む。それでも俺がどの程度のランクか分からんもんだから、あんまり強気に出られない

「いやぁ、わざわざ案内してもらってるんで、後でお礼するとき、名前が分かってた方が良いんじゃないかって思ってさ」ちょっと笑顔を見せてやった
posted by 熟年超人K at 11:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説

2022年06月18日

ランボー超人Bの物語-13 本気で正義の味方やってみる@

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俺自身、せっかくスー○ーマンになったのに、別にハリウッド映画みたいな怪獣も、世界征服を狙ってる奴らも出て来ちゃくれないんで、正直、自分がどれだけやれるのか、確かめてみたい気があったんだよね

とにかく、ただ突っ走ったら、大体警察が出て来ることになっちゃうってのは、これまでに学習できてるんで
だから、警察に入っちゃうのは正解だったと思う。とりあえず、ここまでは上手くいってる

今度、テレビ局の力で、俺の助けを本当に待ってる人が出てきてくれたら、俺はスーパーヒーローらしくなれるんじゃないかな
それが、俺が超人になった理由なんだろ、って本気で考えてるんだ

数日後にあった企画打合せで、ザキさんが3件の『助けて超人ランボー』の候補案件を出してくれた

1つ目は、つい最近、地域で使っている工業用水、農業用水、生活用水を賄っている水源ダム(っていうのがあるらしい)の底が抜けて困っている件

2つ目は、いろいろな犯罪が多い大都会(東京、大阪、名古屋の繁華街)での、暴力団や半グレ、不法滞在外国人集団とかをどうにかして欲しい件

3つ目は、カラスとかハトが集まってるので、困っているから追っ払って欲しい、っていう件だった

それと、別格に外国で起きている戦争や、独裁者の横暴を止めてくれっていう案件もあったけど、それは国際問題になって、局の手に負えなくなるから取り上げませんって、ザキさんが念押しした

じゃあ、どれやるって皆の意見を出し合うことになったけど、1はただ大きい岩とか、コンクリートの塊を現場まで持ってって放り込む、ってだけじゃ済まなそうだし、関係の役所を廻るだけでも大変ってことで見送り

2は、ある意味一番俺に向いてるかなって思うけど、ワルの拠点を探して、俺がスーパーパワーで殴り込むって訳にはいかない(警察とのこともあるし)だろうな、ってなって見送り

なんだか、カラスが集まって困ってる件しか、やるのがないみたいな話になって来たんで、俺としてはそんなんのやりたくない、ってはっきり言ってやった

「そりゃ空も飛べるし、カラスなんか追っ払うのは簡単だけど、わざわざ俺がやらなくったっていいでしょ」
しかも、局スタッフの誰かなんて、カラスを追っ払うって言っても、区役所や市役所の許可が必要だって言うんだから、話にならないじゃん

「やっぱり、俺は俺らしく、俺が思った通りの正義の味方させてもらいます。そう言う意味じゃあ、2個目の奴だけど、別にテレビのためにやるんじゃないから、勝手にやらせてもらいます」って、言うだけ言って、俺は部屋を出ちゃった(慌ててザキさんが追って来たのは分かってたけど)

なんか怒れちゃったんで、ぷんすかしながら屋上に上って、そっから空飛んで帰っちった
マンションに戻って、ビール飲んでるとメールの着信音がしたんで見てみると、駒ちゃんから“今日はごめんね 局の上の方はがっかりしてたけど わたしはあれでいいと思うよ”…だって。元気復活した

それで、勢いが出て、別に酔っ払い運転って訳でもないから、夜の街にワル征伐に出かけることにした
じゃ〜ん。さあ、どうなるかな!?
posted by 熟年超人K at 17:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説

2022年06月04日

ランボー超人Bの物語-12 人気者っていろいろ大変C

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久しぶりのTテレ会議室には、チーフDのザキさんの他に、バラエティ番組「ちょちょっと紺ちゃんお邪魔します」のメインMC、ドガチャカの紺多勇介と相方の野々山篤太、アシスタントアナの泊望海(トマリノゾミ)、そして5人の番組スタッフ、その端っこにはADの駒沢さんもいた

なんか久しぶりに駒ちゃんの顔を見て、俺は皆に分からんように合図を送りたかったけど、知らん顔してるの見て、適当な合図なんて思いつかず、逆になんかぎくしゃくしちまって、そのままぶすっと席に着いた
そんな俺の様子に心配が増したのか、ザキさんがちょっとおろおろした感じで「え〜、それでは、ご紹介します」って、話し始めた

「こちらがTテレの木曜夜8時からの看板バラエティ番組、“ちょちょっと紺ちゃんお邪魔します”のクルーの皆さん方です」ザキさんの言葉に合せて、3人組がそれぞれの個性に合わせて、お辞儀だったり、よっ、だったり、やあ、の仕草で俺に挨拶してきた

俺だって、相手がテレビでおなじみの人気漫才コンビ“ドガチャカ”の二人と、美形女子アナの望海ちゃんなんで、ついついにこにこ笑顔で「あ、どーもー」って、サービス挨拶した
「いやあ、実物の超人ランボーの中の人って、親しみ易くって、人気者の要素一杯持ってるんだねぇ」早速のヨイショは売れてる方の、紺ちゃんこと紺多勇介で、隣でちょっと掴みどころがない顔して座ってるのが相棒の野々山篤太だ

「上辻曲さんは、超人ランボーさんってお呼びするの、ちょっと噛みそうなんですけど。ランボーさん、じゃハリウッドからクレーム来そうですし、やはり、ユータローさんですかねぇ」ちょっと外す感じの受け答えで売ってる泊望海アナが、意表を突いた質問をしてきた(駒ちゃんはテーブルの上の台本から目を上げない)
「俺はなんて呼ばれてもいいんですけど…」って、ぼそっと返事したんだけど、別にその返事はない

「それは、超人ランボーさんでお願いします。警視庁の方から、そう呼ぶように依頼が来てますもんで」ザキさんが、さりげなく俺の発言を修正した

「超人ランボーさんは、ある意味一般の方でもあるんで、特に何かを演じて頂くようなことはございません。僕らスタッフが全力で依頼主を調査し、ただの冷やかしや、個人的な利益追求ではないことを、しっかり精査します」スタッフの中のちょび髭の男性が、妙に歯切れのいい話し方で付け加える

「番組に応募があったり、現在の日本で本当に超人ランボーさんの力が必要な方と、ランボーさんをお引き合わせしますので、ご納得の上、ランボーさんの力を発揮して問題を解決する。その様子を取材させて頂き、後日、編集データをご確認頂いて、OKを頂いた案件のみ、後日放映させて頂くと言う手法を採ります」ザキさんが話をまとめ、出演者たちも大きく頷いている

「まあ、そうしてちゃんとした形で、人助け出来るんなら、俺、やってみてもいいですよ」って言いながら、駒ちゃんをちらっと見ると、相変わらず下を向いたままだったが、特に反対らしい雰囲気はなかった
posted by 熟年超人K at 21:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 書き足しお気楽SF小説