2021年12月29日

ランボー超人Bの物語-9 超人って楽しいかもC

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隊員たちは皆、ヘルメット(透明なフェィスガード付き)に、だぼっとした感じの服で、なにか防弾チョッキのようなものを着ている

「かかれっ!」とか、掛け声がかかって、一斉に俺に飛びかかってくる
なんか勢いが半端ないんで、俺も一瞬どきっとしちゃって本気で身構えたけど、成宮さんが目で合図してくれたんで、どうにかフルパワー出さずに、どどっと組み付いて来た隊員を、上手い具合にさばいてる風に動けた

「おいっ、SITは随分手加減してるじゃないか。もっと本気でやれ!」って、宇良沢刑事部長が怒鳴った
途端にSIT隊員たちの動きが鋭くなって、同時に、よく刑事ドラマで見る、シュッと伸びる警棒みたいなものが現れた(なんだよ、そんなのでぶっ叩こうっていうの)

しょうがないんで、俺も本気度を上げて身構えてやった。身構えておいて、相手がちょっと動きを止めたら、飛び上がって回避するか、警棒を体で受け止めて反撃するか、ちょっと考えようとした瞬間、ばばっと一気に来た

右の奴が警棒を振りかざすと、俺の右肩辺りにびゅっと振り込んで来た
って動きにつられて、右腕を上げて受けようとしたとこに、左側の奴の警棒が胸に突き出され、後ろの奴が同時に俺の背中に強打を入れてきた

ばばんっと打撃が来たけど、さすが超人、布団の上からハエ叩きではたかれたくらいの感覚で、俺自身、きょとんとしちまって、突っ立ってただけだった(ちょいカッコ悪し)

なんだ、やっぱりどってことないんだって安心した俺の動きは、当然良くなり、三人の警棒を一瞬でもぎ取って、一気にえいっとへし折ってやった

可哀相だったのが、警棒のストラップを手首に巻いてた後ろの奴で、俺が強くひったくったもんだから、一緒に引っ張られて、大きく吹っ飛んじまった(ストラップがちぎれたから良かったけど、多分手首が骨折したんだろうな、ずっと手首を押えて転がってた)

で、終わりか、と気を抜きかけたら、今度はもっと重装備(透明な楯と拳銃を構えてる)な連中が五人、ぞろぞろっと出て来て、真剣な目つきで俺を狙ってる

ちらっと成森さんに目をやると、随分緊張した顔で、こっちを見つめてる。こりゃ撃ってくるんだなって、覚悟した瞬間、パン、パン、パンと連射
これも全然どうってことないんで、今度は避けずに大人しく、的になっててやった

今度は、宇良沢刑事部長を見ると、驚いて少し口を開いたまま椅子に座ったままになってる
隣に立ってる星崎さんは、ある程度予測してたんで、そんなにびっくりはしてる風じゃなかったけど、内心はどうだか…

ここで念押ししとこうと空に飛び上がって、なんか持って来れる物でもないか、屋上を探したけど、ちょうど良さそうな物がなく、じゃあと一気に地上に下りて、停まってたパトカーを持って、また屋上に戻ってやった

今度こそ全員びっくりで、皆んな呆然としてる屋上の真中に、パトカーをそーっと降ろしてやった(どうだ、驚いたろっていい気分)

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もっとやる?って顔して、星崎さんの方を見ると、手を下に抑えるようなジェスチャーしてる
「す、ごいなぁ、聞きしに勝るってやつだなぁ…」宇良沢刑事部長が、本気(マジ)驚いたって顔してる
俺としては、得意になっちゃうの抑えるのに、一苦労ってとこ

「ご覧の通りの能力を有しておりますので、SITで活躍してくれることは期待できると思います」と星崎さん
「ん、分かった。上辻曲くん、日本の正義を守るため、よろしくお願いしますよ」と宇良沢刑事部長
何か、日本の正義とか、変なこと言うなぁって思ったけど、まあこれでいいならいいや、ってその時は思った

それからまた14階に戻ることになったんだけど、さっさといなくなった宇良沢刑事部長とお付の者たち、その前に姿を消したSIT隊員以外(つまり星崎さんと成森さんと俺)になったとき、成森さんが俺に
「あの…、パト、下に降ろしてもらえませんか」って訊いて来たんで、さっともとに戻してやった

14階では、別室(職員さんが大勢仕事してた)の応接コーナーみたいな処で、警察庁直轄非常勤職員委嘱書とかいう、ややこしい書類にサイン(死んだ親父の言ってたことに逆らっちまった!)させられた

まあ、これで自由に正義の味方ができるかと思って、まだ居た星崎さんに確認すると、どうもすっきりした返事がない(成森さんも目をそらしたりする)

こりゃ、警察とは言っても、人をだますことがあるんかも知れん、とピンと直感して、もう一度念押しすると、週に何日かはここに来ないといかんらしいし、指示にないことは事前に申請しないといけないらしい
なんだ、それじゃあ不自由になっちまうじゃん

ちょっと頭に来たんで、今のなんたら委嘱書は、出す気ないからって言ったら、あれはもう受理したからとか、なんやらかんやらぐだぐだ胡麻化そうとする
俺の心は不信感で満ちたわ
posted by 熟年超人K at 16:49| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説

2021年12月14日

ランボー超人Bの物語-9 超人って楽しいかもB

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俺としては、騒ぎが面白くなってきた、くらいのお気楽モードだったんだけど、あっちはそうは思ってなかったみたいで、ガタイ成森くんからスマホに着信があった
テレビを観ていたんで、気付かなかった俺は、3回目の着信をタップしてガタイくんに電話した

「すみません、上辻曲です。なんかお電話頂きました?」
「ああ、上辻曲さん。電話おかけしたのは週刊風評のことだったんですが、もうご覧になってますか?」
「あ、はい、コンビニで見ました。テレビも」
「おっ、そうなんですか。それで少々まずいことになってましてですね。至急、本庁の方にお越し願えませんでしょうか」って、俺の都合を聞いてる風だけど、結局、とにかくすぐ来てくれって、圧みえみえじゃん

ま、どうせこっちは警察なんて今更怖くはないんだけど、なんとなく急いで行かんと、って気にはなっちゃってるのは、悲しい習性ってやつだなぁ

急いで超人服に着替えて、アパートからブッ飛ばしたんで、指定された警視庁の屋上ヘリポートには3分で着いた
まだ、一人しか屋上には居ず、遅れて星崎さんとガタイのいい成森さんが出てきた
「おおっ、早いな。上辻君はもう着いてるぞ、成森」
「もうお着きになったんですね。確か、立川市にお住まいだったはず、ですよね」超人という者の本当の凄さがやっと分かって来た、というような顔をしてる。それに比べると、偉そうマンの星崎さんは落ち着いてる

「まあ、こんなところではなんなんで、場所をご用意しました。こちらへどうぞ」こんなところに呼び出したのは、そっちじゃないか、って思ったけど、まあここは大人な対応で、俺はにこっと笑って、二人の後に続いて警視庁の中に入った
今回は、屋上入口からエレベーターで14階にある会議室みたいな部屋に案内されて、なかなか美人な制服の女の子が、お茶を持って来てくれた

お互い向かい合うように座り、お茶を一口飲んだ後、星崎さんが口を開いた
「上辻さん(じゃないのに!)、昨日出た週刊誌はともかく、警察庁上層部ではテレビ報道を気にしておりまして…」言葉を途中で止めて、お茶をもう一口飲んで
「先日、警視総監とお話されたことが、ほんのちょっとでも漏れれば、我が警視庁の根幹に影響を及ぼし、ひいては我が国の法治体制を揺るがしかねない、という判断になりました」なんだかややこしくて、よく分からない

「って言うことは、結局なんなんです?俺を逮捕して、裁判にかけたいとか、そういう話なんですか?」
「いやいやいや、貴方を逮捕したって、どうせ拘置所でもぶち壊して、出て行ってしまわれるのは分かってます。そんなことになったら、警察権の及ばない、というより法律の及ばない存在が、この日本にあるということになってしまいます。それは、避けたい」ん…じゃ逮捕しないっていうこと?
「そこで、貴方に相談なのですが。どうでしょう、貴方が自由に正義の味方をやれて、法律に触れない方法があるとしたら」へぇ〜、そんなことができるんだ

「その方法とは、貴方に警察庁直轄非常勤職員として、警視庁特殊事件捜査係、つまりSITに所属して頂ければ、というプランなのですが」星崎さんは、どんどん話を進めていく
「ちょっ、ちょっと待ってください。俺が警察官になるってこと?」
「いいえ、上辻さんは上辻さんのままで(上辻曲だっつーの)構いません。ただ、貴方の特殊能力を警察のためにも活かして頂いて、例えば立て籠もり事件の解決だとか、大規模事故の際の人命救助だとか、車で逃げる重要手配犯の確保などの事件があった際、ご協力願えればということで…」なるほどねぇ

「俺としても、超人になったとき、正義の味方になろうって思ってたんで、それは構いませんよ」
「そうか、そりゃ良かった。それで、この案を出したのは宇良沢刑事部長でして、ちょうどこのフロアにいますので、お引き合わせさせて頂きましょう」なんか、最初からそう決まってたんじゃないのか、って思った俺

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宇良沢刑事部長って人は、このフロアに居るってことで、今から一緒にご挨拶に行きましょう、ってことになった
ちょっと立派な木の扉を星崎さんがノックすると、どうぞ、と低音の迫力ある声がした

中に入ると、大きなデスクの後に、色黒のブルドッグみたいなおっさんが座っている
「やあ、どうぞどうぞ。そちらにおかけ下さい。星崎警視、この方が例のスー○ーマンの方ですね」話し方は丁寧っぽいけど、声に迫力があるから、なんとなくこっちが小さくならされる感じだ(威圧感ってやつ)

「はいっ、こちらが超人ランボーこと上辻(…曲ですと小声で訂正したった)、上辻曲さんであります」あの星崎さんが緊張している
一応、俺もぺこりとお辞儀をして、ブルドッグが示してくれた応接椅子に座った(星崎さんは立ったまま)

「上辻曲さんは、いろいろなことがお出来になるらしいね。後で、少し模範演技を見せて頂こうかな」
「はいっ、では後ほど屋上でご覧頂けるよう、計らいますので、よろしくお願いいたします」星崎さん、かちかちだ

「SITの非常勤職員として採用となっているんだから、一生懸命やってくださいよ」ん…なに、この感じ?
「俺、一生懸命務めることになってるんですか?」星崎さんの方、向いて小声で訊く

「はっ、彼の場合、民間特殊技能者としての嘱託技官となりますので、常勤ではなく、あくまで非常勤職員として警察庁管理下の職員という待遇になっておりますので、その辺りお含みおき下さいますよう」星崎さんが俺に聞かせるように、再確認してくれた

「そりゃ、表向きは、だろ。いやしくも警視庁刑事部として、所属してもらう以上、最低限の規律だけは守ってもらわなきゃいかん。そうだろ、星崎警視」う〜ん、上から発言する人だなー

「まだ、俺としてはお願いした積りは無いんで、別に警察に就職したいって訳じゃ…」って喋りかけたとき
「今回の協力依頼は、大妻総監の肝いり案件ですので、その辺りのご配慮、よろしくお願いします」星崎さんが話をかぶせてきた(偉い人同士の話って、めんどくさいなぁ)

「わかったわかった、とにかく上辻曲くんだっけ、嘱託とは言っても警察組織の一員になるんだから、日頃の行動には気を付けて下さいよ」随分偉そうな口ぶりでそう言うと、「じゃ、君の力を見せてもらおうか」って言いながら立ち上がった

立ち上がったら、意外に背が低くて(俺より大分低い!)、それががに股で歩くもんだから、ブルドッグそのものに見える(多分ここでのあだ名になってるだろな)

この刑事部長に比べると、星崎さんは背も高くて、ずっとかっこいい(別にそれがどうしたって訳じゃないけど、テレビに出てたっておかしくない)

屋上に戻ると、成森さんが何人かのSIT隊員っぽい人たちと待っていて、星崎さんが合図すると、ばらばらっと俺を取り囲んだ
posted by 熟年超人K at 12:59| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説

2021年12月04日

ランボー超人Bの物語-9 超人って楽しいかもA

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そんな駒沢さんの反応に、俺のお気楽精神が発動、連中をちょっとからかってやろうか、っていうワル衝動がむくむくしてきた
「ちょっと待ってて」って駒沢さんに言い残しといて、俺は夜空を飛んで、黒い車の真上に行った
それから屋根の両端を(なんとか)掴んで、軽く宙に持ち上げてやった

公称170pの俺が、両手を目いっぱいに広げて、やっと指先がかかっている程度で、1トン以上ある車が持ち上がるなんて変だなって、その時不思議に感じた
こりゃ、超人っていうのは、馬鹿力だけのもんじゃないんだな、って気が付いたんだ

これまでは、自動車みたいな物を持ち上げるなら、下から持ち上げればいいって思ってたんだけど、なにか別の力もありそうだ…、なんて持って宙に浮いてる俺が呑気に考えてる間、持ち上げられてる車の中の連中は、車から逃げ出したくっても高さが5mくらいあるんで、とにかくわーわー騒いでる

超人ってのは、疲れるってことはないんで、このまま持っててもいいんだけど、あんまり喧しいし、下じゃあ警察らしい二人も、こっちを見上げてるもんだから、まあ、そぉーっと降ろしてやったわけ

そしたら、そのままお礼も言わずに、ばぁーっと走って逃げてった
追いかけるのもなんだから、警察らしい二人に、ちょっと肩をすくめて(外国映画でよく見るアレ)、しょうがないねって顔したんだけど、空中でやったもんだから、共感は得られなかったみたい

まあ、車を放かしちゃった訳でもないから、特に問題ないか、って判断して、ちょっと片手上げて挨拶しといて、一気に急上昇して、夜空に紛れて、駒沢さんが待ってるビルの屋上に戻った

「ごめん、待たせちゃって」寒そうにして立っている駒沢さんに謝る俺
「いいのよ、見てて面白かった。あの車、あっちの先の交差点で、停まってる車に衝突して謝ってたわ」

それから、二人で少し離れたブロックまで飛んで、後は地上に降りて、歩いて地下鉄駅まで送って行った
「じゃあね」って言って、彼女がホームの方に去って行くのを見送る俺は、なんかやりとげた感で満足だった

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やりとげた感で満足した日の翌週、アパートから近くのコンビニに行った俺は、店内にいるお客や店員の視線が集まって来るのを感じた

テレビに出ちゃってから、人の視線が注がれるのには大分、慣れてはいたんだけど、なんと言うか視線に棘があるって言うか、怖がられてる感が半端ない

いつもはざっと見て、飲料か弁当か酒のつまみコーナーに行くんだが、週刊風評の表紙にでかく『乱暴極まりない超人ランボー!! こと上辻曲勇太郎』てな見出しが、目に飛び込んで来た

結局、あれから週刊風評の大辻って言ってた週刊誌の記者からは、なんの連絡もなかったけど、こんな風な記事書いてたんだ!ってびっくり

立ち読みでぱらぱらって中見ると、ずいぶんなこと書かれてる。大体、一瞬立ち話しただけなのに、俺と記者が話してるって感じの写真はあるは、なんにもコメントしてないのに俺が、とにかく有名になれりゃいいみたいな話になってて

テレビで紹介されたお蔭で、女の子にモテまくりだの、ビルの解体工事で近所の人たちが大迷惑(これはホントだけど)しただの、どこで聞き込んだのか大手組に殴り込んだ話があるとか、首都高事故を利用してTテレに自分を売り込んだんだとか、あることないことが書かれてる

それにしても、こんな週刊誌に載ったくらいで、コンビニにいるお客の誰も彼もや、あまり感情を見せない店員までが、俺を恐れてるなんて!

とりあえず、缶ビールと弁当2つとつまみになりそうなおかずを買って、俺はアパートにこそこそ帰った
(別にこそこそってつもりは無かったけど、あまり顔を見せないようにするってのが、こそこそになるんだなって自分自身納得したね)

それからが大変。今日は雄仁塚の仕事は無いんで、のんびり昼飯って思ってたんだけど、テレビを点けるとワイドショーで俺のこと書かれてる週刊誌がネタになってる

Tテレのライバル局は、どっちかって言うと俺を危険人物、とかその可能性大みたいに言ってて、NHKとTテレが無視って状況

芸能人や有名人が、あれこれ書かれて大変って嘆いてる気持ちがよく分かる…って言うか、騒がれても今のとこ良いことない俺としては、取材もしてないのによく書くよ!って、一人で怒ってる状態なんだよな

そのうち、駒ちゃんからメールで心配の言葉が入ったり、雄仁塚の合田社長から激励の電話が来たり、Tテレのトクさんから、なにか言いたいことがあるんなら、一度打合せしよう、って声が掛かったりで、ざわざわ周りが騒いでるのが面白くなってきた、って言ったら駒ちゃんに怒られるかなぁ
posted by 熟年超人K at 17:34| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説