2021年11月15日

ランボー超人Bの物語-9 超人って楽しいかも@

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アパートに戻ると、テレビの報道陣はもういなくなっていて、警察の車とかもいなくなってた
緊張が解けると、今日はよく働いたんで、腹が猛烈に減っているのに気が付いた

普通にアパートの前に降りると、男の人が寄って来た
「ランボー超人さんですね。週刊風評の大辻と言います。少しお話、伺わせても良いでしょうか」とお願い口調だけど、随分強引な感じで話してくるんで、どっちかっていうと大人しい俺としては、その迫力に呑まれて、思わず頷いてしまった

と、そのとき、もう二人男の人が出て来て、その週刊誌の記者さんらしき人を両側から挟むようにして「お宅はどこの社?」って、すごく硬い雰囲気で話しかけてる(警察?)

結局、その週刊誌の記者は追い払われて、俺はお構いなしみたいなんで、とにかく部屋に戻った
早速あの警視総監か、星崎さんが手配してくれたんだなって、そのときは重要人物になった気がして、ちょっと嬉しかった(後で、誤解だって気が付くんだけど…)

冷蔵庫の中には、第3種ビールと高原水くらいしか無いのがわかってたんで、非常食用の箱の中の即席ラーメンと缶詰を見つけて、お湯を沸かしてると、スマホから駒沢さんの呼び出し音が流れてきた
ムチャクチャ嬉しい音に、俺が上々機嫌で耳に当てると「勇太郎さん?」って、優しい声が飛び込んできた

「大丈夫?」という嬉しい声に続いて、「近くまで来てるんだけど、貴方の家の周りに、マスコミの人っていない?」だって
「いたけど、さっき警察の人が追い払ってくれたから、大丈夫っぽいよ」部屋に来てくれそうな話の展開に、わくわくどきどきが止まんないぞ!

「警察の人って、きっと貴方のアパート見張ってるんでしょね。でも、いいわ。警察に文句言われるようなことないし。今から、晩御飯の材料持って、貴方のとこに行くわね!」なんか、決心した女の人ってすごいな

「わかった、待ってる。気を付けてね」そう言っといてから、部屋の中見回して、俺はあせったぞ。すんごくちらかってるじゃん!
大急ぎで、部屋を片付けようとしたら、またスマホが鳴る(駒ちゃんじゃない)

「上辻曲さん?警視庁の成森です。先ほど排除した週刊誌の記者が、貴方への取材について、本人のOKをもらってる、と言っとるんですが、事実でしょうか?」そうか、さっきうっかり頷いちゃったんだっけ
「ええ、まあ…。なんとなくそうなっちゃいましてぇ…」

「そうですか…。あ、今、女性がそちらに向かったようなんで、週刊誌の方は、こっちで断っときましょうか?」おお、なんて気が効く、成森さん
「そ、それじゃあ、よろしくお願いします」感謝です成森さん

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コンコン、って小さくドアを叩く音がする
おおっ、とうとう駒沢さんが、俺の部屋に来たんだ!

ドアを開ける前に、もう一度部屋を見回して、駒沢さんが見たらやばそうな物がないかチェック
パンツと靴下と汗になったシャツを丸めて洗濯籠に放り込んで、読みかけの雑誌とマンガ本を重ねて部屋の隅に押しやってから、ドアに向かう

ドアが開いて、懐かしい(ってちょっと前に合ってるけど)笑顔の駒沢さんが立っていた
「ど、どうぞ、中に入ってください」って言いながら、どんな風に感じるんだろう、男の部屋に入ってなんて言葉(でも他に言いようがないじゃん)聞いて

でも「じゃ、失礼します」って言うと、すごく自然にドアを閉ると、靴をきれいに揃えて上がって来た
俺はって言うと、なんかどきどきで、彼女が動いた後のいい香りに包まれて、ぼぉーっと突っ立ってるだけ

「お台所、あちらですか?」と言って、俺がうんうん頷くと、持ってきたスーパーの袋持って、そっちに行く
彼女がなんかやってる間の俺は、ただ座ってるだけで、しょうがないからテレビ点けて、なんとなく画面眺めて、初彼女料理が出来るの待つのみなんだよな(ふふ)

彼女と二人の夕食は、ほんとっ楽しかったし、旨かったぁ
俺が、あんまりばくばく食べるんで、駒ちゃんは驚いてたけど、でもよく笑ってくれた

テレビの方は、しょうもない番組だったけど、彼女がADやってたっていうことだったんで、俺は結構細かいとこまで見て感想言って、ついついご機嫌取ったりなんかしちゃったりで、でもそれが幸せだった

俺の方も、今日、警視庁に乗り込んで、警視総監に直接会った話とかして、のりのりだった
結局、楽しい時間もいつかは終わるって言うか、もうちょっと先の展開まで期待してたんだけど、さすがにそうはならなくって、帰りにちょっと俺のほっぺたに彼女の唇が触れたとこまでで、さよならになった

俺としては、こんな夜遅くに彼女を一人で帰す訳にはいかないから、って又、空を飛んで彼女のマンションまで送る積りだったんだけど、あれは寒いからもっと暖かくなってからにして、なんて言われて、歩いて駅まで送ることにした

アパートの外に出ると、なにやら人が物陰にいるのが見える
ははあーん、警察の連中だな、って思ったけど、成森さん(あるいはその上の星崎さん)の指示だと思って、見破ってると分からせるのは止めといた

駒沢さんは、気が付いてないんで、普通に俺に寄り添って歩いてくれてる
さらに駅に向かって歩いてると、警察以外(だと思うけど)の黒い車がゆっくり後ろを付いてくる

多分、あの週刊誌の記者か、または別の写真週刊誌のかと思ったんで、彼女の腕を取って「ちょっとごめん」と一言断ってから、路地に飛び込んですぐ、彼女を抱いて灯の消えたビルの屋上に飛び上がった

超人になってから、その気になると夜でも普通に暗闇のものが見えるし、遠くもよく見えるんで、黒い車が停まって人が降りて来たところや、街路樹の陰から二人コートの男が飛び出して来たのも全部見えた

駒沢さんは、かなり慣れっこになってきたみたいで、そんなに驚きもせず「誰かついて来てたの?」と、小声で俺に囁いただけだった
むしろ、誰もいない6階建てのビルの屋上から、下の右往左往してる様子を見て、面白がってる
posted by 熟年超人K at 14:31| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説

2021年11月01日

ランボー超人Bの物語-8超人って大変L

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目薬を差すときに、つい目をつぶりたくなるみたいに、弾丸が飛んで来るのが見えるのに、避けずに受け止めるってのは辛い
だけど、俺から言ったことなんで、頑張って胸を出して受けてやった

絶対大丈夫だって信じてたけど、やっぱり怖いもんだな
どうしても体が逃げようとするけど、今度は胸の辺りだから、ちゃんと当った。で、なんともない
ガタイくんは頭に来てたのか、続けざまに今度は頭に弾が飛んで来た
胸で受け止めた直後なんで、避ける間がなく右目の上に当ったのが分かった

胸に当った方は、ひしゃげて床に落ちて、額の方は当った瞬間にちょっと頭を振ってしまったんで、俺の右側の壁に懸ってた制服姿の偉そうな人の、絵に当ってガラスを派手に割っちまった

「も、もういい。やめろ、やめるんだっ。部屋がめちゃめちゃになるじゃないか!」総監さんが、思いっ切りあせった声で叫んだ
ガタイくんは呆然として突っ立ってるし、偉そうマンも、さすがに驚いた顔してる

「まあ、こんななんで、俺を捕まえるとか、一般人用の法律で裁判するとかは、なしでお願いします。どっちみち、刑務所に入れられたって、好きな時に鉄格子でもコンクリート壁でも、ぶっ壊して出て行けるんで」
「そ、それはそうだが…。しかし、我が国は法治国家であるから、君だけ特別扱いなんて…」警視総監がもごもご言ってると、偉そうマンが喋り出した

「超人ランボーさん。貴方が強気でいられるのはわかります。しかし、我々にだって、立場がある。そこで、どうでしょう、とにかくしばらくお時間を頂きたいので、結論が出る間だけでも、我々の指定する場所で、待機して頂く、ということにできませんか?」ぐっと下手に出てきた
「まあ、それは考えてもいいけど、とりあえず、お隣の部屋の奥の小部屋に隠れている、本物の警視総監さんにも、ご意見を伺いたいんですが」さっきから、ちらちら隣の部屋の様子を透視してた俺としては、あんまり良くは見えてないけど、多分あっちに本物が隠れてるって予想したんで、ちょっとブラフをかませてみたんだ

案の定、偉そうマンがこれまでになく動揺したんで、アタリ!と思った俺は、次の一手を打つ
「あれって、映画で見たセキュリティルームってやつですよね。なんかあったときに避難するとこ。あれだって、俺ならぶっ壊せるし、なんだったら、部屋ごとこの階から、突き落とすことだってできるんですよ」決定打だったみたい
多分、俺がビルの解体工事やってた動画を見てただろうから、俺の言ってることが本当だって、知ってるはず

「わ、わかった。成森君、大妻警視総監をこちらにご案内して」偉そうマンが、緊張した声でガタイくんに命令する
「そうそう、いろいろ仕切ってるお宅のお名前は、なんて言うんです?」ずっと気になってたことをついでに訊いてやった
「おっ、これは失礼した、私は公安1課長の星崎と申します」案外素直に、名前を名乗ってくれた

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大妻さんという本物(?)の警視総監が、隣の部屋から出て来ると、それまで総監の椅子に座っていた人が、慌てて立ち上って席を譲った

隣の部屋から総監と一緒に出てきた五人が、ばらばらっとこちら側の部屋の中で配置に着く
俺は完全に囲まれた状態で、総監に対面してる訳だけど、もちろん超人なんでびくともしてない

「失礼ながら、隣でモニター越しに拝見していたが、貴方は本物の超人のようですな」ちゃんと自分の席に座った総監さんは、喋り方も落ち着いてて偉い人感満載だ
「そうですよ。ご覧になっていた通りのスー○ーマンなんです、俺」こっちも、さらっと返答してやった

「貴方の申し出ですが、私の一存で、一般国民と別扱いできるのかどうかは、この場でご返答できるものではありません。どうかその辺りは、ご理解ください」おおっ、なんか説得にかかってきたぞぉ

「いや、俺は別に特別扱いしてくれなんて言ってませんよ。基本、俺は正義の味方の積りですけど、今日みたいに、一般人としてホテルに泊まってたら、逮捕!なんて言われると、困るって言ってるんです」

「つまり、一般人の上辻…ん、上曲り…」「上辻曲さんです、総監」星崎さんが補足する
「そう、その上辻曲さんの状態でいるときは、警察として接触して欲しくない、ということかね」ちょっとだけ、上から目線の喋りになってる

「まあどうせ、捕まえられっこないんですけど、大騒ぎになっちゃうじゃないですか、大勢人がいると」
「それなら、君はどうして欲しいと言うんだ」今度は、星崎さんが若干熱くなってきた

「超人のときには、基本、人助け中だと分かって欲しいのと、なりゆきで少し物が壊れても、見逃して欲しいのと、個人的な生活に、いちいち口を出して欲しくないってとこです」随分虫がいいってのは、分かってる

「だから、そういうこともひっくるめて、まだなにも言えんと言ってるじゃないか」大妻警視総監さんも、少しいらついてきたみたいだ

「ま、どっちでもいいです。一応、言うことは言ったんで、俺、もう帰ります」言ってる俺も、こりゃ無茶ぶりだよな、って分かってはいるんだ

「ちょ、ちょっと待ってくれ。正義の味方って言うのは、警察には協力するってことだろ。だったら、協力者としての連絡先だけでも、教えていってくれ」星崎さんが、慌てて付足してきたんで、俺はいいですよ、って言って、スマホの番号とメアドを教えてやった

その後、十一階の窓を開けてもらって、俺はできるだけかっこよく、空を飛んでアパートに帰った
posted by 熟年超人K at 12:01| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説