2021年06月03日

ランボー超人Bの物語-8超人って大変B

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会議室に着いたのは9時58分だった
さすがに、Jスタジオからの移動は普通に歩くしかなかったので、一般人並に時間がかかったのだ

ドアを開けて中に入ると、ロの字になってる会議テーブルには、もう皆んな揃ってて、一番奥に殿倉さんとレイコさんが並んで座り、その隣にひとつだけ空いた席があるんだけど、勝手にそこに行ったら、図々しい奴だと思われるんだろうな、って思ったんで、俺はなんとなくその場に突っ立ってることにした

皆の視線が俺に集中してるのが、ちょっと堪えるけど、どっちみちここの社員でもスタッフでもないんだから、構うもんかって顔してたら、レイコさんが「こちらにどうぞ」って声かけてくれた

席に向かって歩く間に、知った顔も何人かわかって(もちろん駒ちゃんも!)、俺はだんだん落ち着きを取り戻してきた
「大活躍だったねぇ」殿倉さんが穏やかな声でそう言うと、会議室の空気がふぅ〜っと緩んだのが、鈍感な俺にもわかった(つまり、殿倉さんが怒ってるかどうか、皆、様子見てたってことだな)

「あっ、やっぱりテレビに映ちゃってたんですね」俺も俺だから、割と気軽な調子で返事した
「残念ながら、ウチの局のにはあまりはっきり映ってなくって、他局さんのにばっちりね」ザキさんが、少し悔しい感じでそう言ってきたんで、こりゃ、まずかったんかな、ってちょっとどきどきしちった

「それで今日の会議だけど、“首都高多重事故から救出するヒーロー、超人ランボーがスタジオに!”みたいなものにしたいんだよ」
「それいいっすね。どう?ゆーたろー君」ザキさんが、にこっとしながら俺を振り返る

「そりゃ構いませんけど、なんか突然な感じですよね、それって」どんな顔して出りゃいいのか、浮かばん
「そうだなぁ、そりゃ唐突過ぎるし、ウチとなんか事前に話し合せてる感、ありありだなぁ」殿倉さんが、皆の顔を見回して言う

「そうですよねぇ。じゃ、この前、純ちゃんが撮ってきたアレ使えませんか」
「おお、そうだ、そうだった。ゆーたろーさん、先日の解体工事の画像、あれを使えば、スムーズに番組で、貴方を紹介できますよ。ADさん、衣装の方もOKなんだろ?」

「はい、衣装合わせも、登場シーンの振り付け打合せも済んでいます」駒沢さんが答え、俺はうなづく
「じゃあ、いつがいいかな。明日か?」殿倉さんが畳み掛ける

「来週、月曜では、どうでしょう。それなら、準備がしっかり出来ますが」ザキさんが答える。他のスタッフは無言
「来週?だめだろ、それじゃあ、多重事故ネタの鮮度が落ちる」レイコさんも、そうよと言う顔になってる

「わかりました。では、多重事故の遠目の絵から入りぃの、続いて解体工事の絵、そこへ、超人ランボーと名乗るヒーローがスタジオに登場、って流れで明日流しましょう」ザキさんが喋り、プロデューサーさんが、それがいいってうなづいてる

「なんか、締まらないなぁ。そうか、どうせなら屋上にカメラ置いて、上空から現れる超人ランボーって絵から入るか」殿倉さんがそう言うと、皆、そうそれだ、みたいなこと言って、全員賛成!空気になった
俺は、上手く演れるかどんどん心配になって、なにか言っといた方がいいかなぁ、って目で駒ちゃんを見た

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「それだと、なにか事前打ち合わせがあった感が強くなりません?」駒ちゃんが喋る前に、レイコさんが口をはさんだ
どうやら、殿倉さんの発言になにか言えるのは、この女(ヒト)だけらしい。皆の恐る恐るの視線が、殿倉さんに向けてちらちら動いてる

「そうか、そりゃそうだね。じゃ、どこから来たのか伏せたまま、スタジオに登場とするか」明るく殿倉さんがそう言うと、皆の間に安心感が漂うのが、俺にもわかるくらいだ

「では、インタビューが終わってスタジオはけてから、帰っていく超人ランボーの後を、カメラが追って、屋上から飛び去るところまで入れたらどうでしょう」ザキさんのフォローに殿倉さんがうなづくと、全員笑顔になるのが、すごいなぁと俺は思って見てた

でも、なんだか俺だけ全然会議に入れてなくって、なんか癪に障って来たんだよな…ってその時、駒ちゃんがはっきりした声でこう発言した
「大体そんな流れになるんですけど、上辻曲さんはOKでしょうか」皆、急に俺のとこに視線を集める

「おお、そうそう、そんな展開で行こうと思うんだけど、ゆーたろー君、どうかな?」殿倉さんが、にこっと微笑んで俺を見ながら、駒ちゃんに視線を送る
「はい、なんとなく分かったんですけど、俺はその時、あの用意してもらった衣装で来るんですよね。それは、こちらで作ってもらったってことになってるんでしょうか」俺が訊きたかったこと1

「あの衣装は、あくまで上辻曲さんのオリジナル衣装となっております」フロアDの徳山ですが、と前置きして男の人が答えた
「わかりました。じゃあ、あれのすごいところとか、話さなくっていいんですね」一応念押し、しとかないといかんと思って言っといた

「いやいやいや、そうじゃないよ、それだと、解体現場や、首都高事故での活躍と、整合しないでしょ。どの時もみんな、彼の私服だったよ」殿倉さんの指摘に、皆、驚いて顔を見合わせ、俺の焼け焦げてる服を見た

「そうね彼は、一般人がなんらかの事情で超人になれたんで、人助けを始めたけど、着てるものは超人になれてないから、そこが困ってるって、わたしたちに相談したのよ」レイコさんが、うんうんうなづきながら、そう言うと、皆もうんうんうなづく

「だな、そこでウチが親身になって、火にも衝撃にも強い服を開発して、彼にプレゼントした…」殿倉さんが続け、スタッフたちも、俺も大きくうなづいた
posted by 熟年超人K at 21:59| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説