2021年04月11日

ランボー超人Bの物語-7超人だってば俺はH

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駒沢さんがビル解体現場に来たのは、その翌日のことだった。なにか、災害現場のマスコミって感じの作業衣と黄色いヘルメット姿が、駒沢さんの可愛らしさを引き立てていて、そこにいる雄仁塚建設の作業員たちも、眼が釘付け状態(!?)で、俺としては、なんかいい気分

スマホじゃなくソニーのハンディカムを構えた姿は、きりっとしてなかなかに似合っていた
俺は、会社の皆にばれないように、無愛想っぽくしようとしたんだけど、彼女の笑顔にすぐ溶けちゃって「どんなとこ撮るの?」って直接彼女に訊いたりしたもんだから、現場を仕切ってる滑川さんに怒られた

「ゆーたろーは、俺の指示通りに動いてくれんといかんのだから、勝手に作業進めないよーに!」
「はいな」と明るく返事して、俺は滑川さんの指示待ちで待機してるようなポーズをとる
それを駒沢さんが、丁寧に撮ってくれてる

若干、駒沢さんを意識して、硬くなった部分もあったけど、基本、すーっと飛び上がって、3階の(もうここまで作業は進んでいた)構造物を、徐々にばらして下のダンプの荷台に載せていく工程は、スムーズに進んだ

駒沢さんは、それらの工程を、頑張って足場に上って、滑川さんの横でカメラを回していたけど、ダンプに重量物が積まれるところも撮りたい、って言うんで、俺が彼女をお姫様だっこで下まで運んでやると、仲間の作業員がピューピュー口笛で囃してくれた

彼女をダンプのそばに下ろして、俺はまた上へ昇って、鉄材やコンクリートの塊を持てるだけ持って、ダンプの荷台にどっすんと降ろす。彼女がそれを真剣に撮ってる。作業員連中は囃し立てたり拍手してくれたりで、俺ご機嫌

そんないい感じの楽しい一日。これでお金も稼げるんだから、俺、超人になって良かった〜
彼女が撮影を終わって帰ってから、滑川さんや、作業員仲間からいろいろ訊かれて、俺、にやにやが止まらなかったっすよ。でも、彼女のこと内緒ってことで、あまり話さなかったけど、実はほとんど知らないんだよね

そーして、またその翌日、駒沢さんから、そろそろテレビで超人ランボーを紹介したいから、局に来られませんか、ってメールがあって、俺は、なんで電話じゃないんだって思いながら、土曜日だったらOKです、って返信しといた

夜、今度は電話で「土曜の10時に、打ち合わせですが、よろしかったでしょうか?」って、妙によそよそしい話し方なんだよな

「大丈夫ですけど…、駒沢さん、なにか怒ってる?」って、ついに訊いてしまった
「そんなことないです。でも…」おいおい、なんだか変だぞ。この声…まさか、泣いてる??

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世間の男どもと同じで、俺は駒沢さんが電話の向こうで泣いてることを、大事件と思っちまった
「どう…したの?なんか、俺、まずかったっすか?」って、こういう風になっちまうんだよね

「フロアDに、この前の、勇太郎さんのお仕事の画像を、見て、もらったんですけど…。もうひとつ、ロマンが欲しいな…って、言われて…、この前、勇太郎さんに夜景を見せてもらったこと、話したんです…」

ときどきすすり泣きしながらの話だと、チーフDのザキさんの下のフロアDの徳山さんにあの夜のロマン飛行の話をしたら受けたのはいいけど、それを若手女優、雪村香澄ちゃんでやろう、ってなったらしい(俺、個人としてはうっかりヤッターって思っちゃったけど)

そこんとこが、泣けるってことは……そうだよな、そう思っていいんじゃない?
なんか、生まれて初めてのモテ…??気分で、俺はアパートの部屋で舞い上がっちまいそうなんですけど

「そういうことで、土曜の夜10時前に、第4スタジオにお越し頂けませんでしょうか」行くよ、行きますよ
「わかったっす、9時半くらい迄にはTテレさんのビルに行きます」って、若干ウキウキ声で返事しちった

通話が終わった後で、ちょっぴりウキウキ声だったこと反省したけど、もう遅いよな
それでも、明後日Tテレに行くんなら、それまでに解体工事を終わらんといかん、ということで早く寝た

土曜日の昼までに現場を終了させて、滑川さんと雄仁塚建設に戻ったら、合田社長が俺らを待ってた
「よお、お疲れさん。滑川君は現場の後片付け、頼むな。ゆーたろーは、ちょっと俺の部屋に来てくれ」一体なんだ?

別に立派じゃない社長室の、応接椅子に座ると、社長がマジ顔で話し出した
「さっき、テレビ局の御香山さんって言うプロデューサーさんから電話があってな。ゆーたろー君を、令和の真ヒーローとして局を挙げて取り上げたいんで、所属会社の社長の俺に一言ご挨拶を、って言って来たんだ」

そうか、社長さんのとこに、もう電話あったのか
「それで、君はどーなの。テレビで売れっ子になりたいのか。まあ、お金にもなりそうだし、有名になりゃあ女の子とかにもモテるだろうしなぁ」なんか、俺に言いたそうな社長の顔だった
posted by 熟年超人K at 22:58| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説