2021年03月05日

ランボー超人Bの物語-7超人だってば俺はF

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そりゃ力任せに空中から持ち上げれば、ビルでも引っこ抜けそうだけど、どこがどうつながってて、何を引っ張っちゃって、どこが崩れるか分からんから、皆の頭の上にでも落っことしたらって思うと、それが怖い

「結局、上から壊してけばいいんですよね」
「そりゃそうだなぁ、下から壊してってビルが倒壊したら、大ごとだもんな」当たり前の返事しかない

「俺、ビルを造るとこはやってないすから、鉄骨とか鉄筋とかが、どうつながってるかが分からないんすよ。そこらが分かってないと、上手く解体できないんじゃないかって…」
「そうだなぁ、ま、そこらは加減しながらやってけば、いいよ。それより、壊し出すと舞う粉塵だよな」

そこも心配なとこなんだよな。あんな貯水槽に穴開けたので、水撒いたくらいで、粉塵って収まるのかなぁ。
結局どっちにしたって、俺が注意しながらやるってだけで、誰もわかんないんだよな

「まあ、できるだけってことで、やっちゃいましょうかね」もう考えるのめんどくさい。どうにかなるだろ
「おいおい、上手くやってくれなきゃ、困るよ」俺のやけっぱちがわかったのか、滑川さんが慌てて付け足す

「とりあえず、現場を上から見てみますよ」そう言って、俺が飛び立とうとすると
「俺も連れてってくれよ。一緒に見といた方が、お互い分かり易いだろ」って、滑川さんが俺の手を引っ張る

この間の、駒沢さんとの空中デートとは、全然違って、ちっとも楽しくないけど、とりあえず滑川さんを抱いて、空中に飛び上がって、問題のビルの屋上に降り立った

「どうだ、この辺りから手を突っ込んで、どんなもんで持ち上げれるか、試してみよっか」滑川さんが、興味津々って顔で、そう言う
「分かりました」返事をして、足元の屋上の床に手刀形にして、手を思いっ切り突き立ててみた

ずぶっと、思ったより手応えなく、コンクリートの屋上の床を突き抜けて、ひじの辺りまで、手がめり込む
「うへっ」っていうような声を出して、滑川さんが後ずさりする

「この辺りって、随分薄いんだなぁ。こんなに簡単に屋上床を突き破れるんなら、やれそうだな」少し声が上ずってる。俺は、ずいっと手を引き抜いて
「なんか、なんの手応えも無いんで、これじゃあ、屋根っていうか屋上を引っぺがせませんね」

「おお、そうそう、こういうRC造のビルは、枠組みの大きな鉄骨で支えてるんで、もっと屋上の縁を攻めんといかんな。一旦、俺を下に降ろして、今度は縁の方から、太い鉄骨を掴んでみてくれ」自分は、安全な地上で、様子を見たいってか

それでも素直に滑川さんを地上に降ろして、もう一度屋上に飛び上がって、今度は建物の縁辺りに両手を突っ込んで、大きい枠の鉄材を探した
「掴んだんで、持ち上げてみますー」下の滑川さんに声を掛けてから、太い鉄材をぐいっと持ち上げながら、空中に飛び上がった

ぐわーぎぎぎぃぃー!めきめきめきー!と、とんでもない音がして、ビル全体が持ち上がりかかった
当然、下の滑川さんのとこにも、壁面から剥がれ落ちるコンクリート片や、下の6階から1階までの窓枠がひしゃげて、ガラス片が、爆発したみたいに、バッシャーンと地上に降り注ぎ始める

俺は、びっくりして、慌てて手を離したんで、それ以上にはひどいことにならなかったが、急いで下に降りて滑川さんの無事を確認しにいくと、念のためしていた工事用ヘルメットを両手でしっかり押さえて、ほこりだらけで体を丸めていた

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「大丈夫っすか、滑川さん」俺が声を掛けると、ほこりだらけの顔の中の目をきょろきょろっとさせて
「お、おお、大丈夫だ。けど、ひでぇなぁ、なにか爆破したみたいだったぞぉ」声が上ずってる

「ええ、外枠の太い鉄骨を掴んで持ち上げたら、なんか全体が持ち上がりかかっちゃったんで…」
「しっかし、すげえなぁ、あんたは。どこまで力あんの」そう言う滑川さんは、ちょっぴり怯えてるみたいだ

滑川さんもだけど、俺だって、自分の力に驚いてた。これまで、鉄材やユンボを持ち上げられるくらいだと思ってたんで、まさかビルを丸ごと持ち上げられるなんて、思ってなかったんだ

なんかスー〇ーマン度がぐっと上がって、一般人から見ると怪物レベルになっちゃった気がするんだよね
滑川さんだって、こんなの見せられちゃったんで、もしも俺を怒らせたら…って、びびっちゃってる?

「まあ、いいや。だけど、あの馬鹿力で一気にいっちゃうと、ご近所迷惑ばーりばりなんで、やり方考えんといかんぞ、こりゃぁ」おおっと、もう通常モードに戻ってる。さすが、不動の滑川係長!

でも、そんな簡単な話にはならなかった
近所の住民や、偶然通りかかった車や通行人が、爆発事故だと思って何件も110番通報したんで、じきにパトカーや消防車が十台ほど駆け付ける騒ぎになっちまったから

俺と滑川さんは警察に連れて行かれて、散々事情聴取ってやつで、今回の話を訊かれることになったんだ
もちろん俺は、実際に飛べるとこを見せましょうか、って言ったし、滑川さんも、俺が正真正銘のモノホンのスー〇ーマンなんだって、言ったけど、警察はそんな馬鹿な話じゃ動かない、とかなんとか言われたらしい

俺の方は、もっときつい取り調べで、あの廃ビルでなにをやろうとしてたんだ、とか、お前、クスリやってんじゃないのか、とか、人権なんて無視な対応だった

結局、社員であることが証明された滑川さんは放免されて、バイトでしかも、このところ会社には出てなくて、今日だけあのビルに行った俺は、どうも怪しい、みたいな話になって、一晩警察署に留め置かれることになっちゃったんだ

まあ、あれだけガラスやらコンクリート片やら、下に落っことしたし、屋上からさっと滑川さんのとこに降りたのも、ちらっとは人に見られてただろうし、って思うと疑われてもしょうがないかな、って俺も思う

拘置所っていうのか、とにかく鉄格子がある部屋に、他にもヤバそうな人が何人か入ってるとこに入って、ってことになって、俺としては結構凹んだ訳で
でも、監視してる係員がちょっと場を離れると、同室のおっさんが俺に声かけてくるんだよね

「兄ちゃん、兄ちゃんはなにやったんだ。カツアゲって顔じゃないし、痴漢っぽくも見えんなぁ、じゃ万引き常習かなんかか?」顔はいかついけど、割に親切そうな感じなんだなその人
posted by 熟年超人K at 22:59| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説