2020年12月21日

ランボー超人Bの物語―7超人だってば、俺はB

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「さあ、それじゃあ、そのままの格好で、次の部屋に移動しますから」なんか、言い方がきつくなったような気がするなあ…
分かったと言うつもりで、首を縦に振って、駒沢さんの後に続いてスタイリストさんを残して、部屋を出て次のフロアに移動した

なんか、こんな格好で廊下を歩くのに抵抗感があったんだけど、まあテレビ局だから、いろんな格好の人が歩いていても不思議はないんだ、と自分を納得させた
次の部屋は、大きな鏡があるがらんとした部屋で、一目でダンスの練習なんかする部屋だと分かった

「こちらは、振り付け担当の堂上譲二さんです。こちらは、空を飛べる超人の上辻曲勇太郎さん」部屋の隅にいた、ほっそりした中年の男の人を俺に紹介して、その堂上さんに俺を紹介する
「ようこそ。よろしく」言葉少なく、さくっと喋る人だった

「じゃあ、上辻曲さん、なんか言いづらいから、勇太郎さん、でいいかな」俺は、うん、と頷く
「勇太郎さん、そのままちょっと、飛んで見せてくれます」駒沢さんがそう言うんで、俺は素直に飛んでみた

この部屋は、さっきの部屋よりはずっと広くて、俺としては、気持よく飛べそうだったんで、さっと飛び上がって、天井すれすれをすいすい飛んで、サービスで宙返りまでやって見せて、すとっと床に降りた

「だめだめ、かっこ良くないよ、そんな飛び方じゃあ」堂上っていう男が両手を上に挙げて、首を横に振る
「どうすれば良いか、勇太郎さんに教えてあげてくれませんか」駒沢さんが、お願い、っていうみたいに両手を前に合せて、堂上に頼む。俺は、頭に来て黙って立ってる

「まず、脚ね。今みたいに、まんまで飛び上がって、そのまんまばらばらの体勢で飛んでると、ヒーロー感ゼロなんだよ。もっと、俺を見ろみたいに、しゅっと飛んで見せなきゃ」ふーん
「勇太郎さん、ジャ〇ーズの人たちの、吊り演技って見たことあるかなぁ」駒沢さんが、フォローに入る

「そりゃ、連中はどう飛んだらカッコよく見えるか、さんざん練習してるからさ。君だって練習すりゃあ、できるのは僕だって知ってる。でも、君はワイヤーなんかで吊られなくっても、自由に飛べる。そりゃすごいことだよ」ちょっとくすぐられた

「ちょっと、この動画、見て」@PAD取り出して、俺に見せる
画面の中では、ワイヤーで吊られた若い男が、すっと宙に浮かんで、そのまま高く上がって、すいすい飛んで見せている

「脚、見て。片足伸ばして、もう一方の脚をくの字にして、膝辺りに当ててるだろ。こうすると、いかにもすいっと飛んでる感が出るんだよ。劇場で演るピーター〇ンなんかも、これやってるよ」熱心に喋る堂上さんに、俺の怒りも収まって来た

「すみません、俺、そんなこと考えずに飛んでまして」一応、頭を下げておく
「いいよいいよ、僕、強く言う癖があるから。それ直さないといかんって、思ってるけど、直せない。まあ、君はすごいことできるんだから、そのすごさで、いかに観た人を感銘させられるか、意識しとくといいよ」

「じゃあ、先生の言ったこと意識して、もう一度、飛んで見せてくれる?」駒沢さんが、にっこりして言う

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次のステップって言うから、また部屋を移動するのかと思ったら、駒沢さんがスマホで連絡すると、どやどやっと人が入って来た
台に載ってるカメラとか、棒の先に付いてるマイクを動かしてる人とか、手に丸めた冊子を持って動いてる人(AD?)とか、そのADになにか指示してる人(こっちがディレクターだな)とか、10人以上いる

すぐに、高い天井に付いてるライトが点いて、スタジオはさっきよりずっと明るくなった
皆、口々になにか喋ってて、忙しそうにしてる。駒沢さんは俺専用係なのか、連中と一緒の感じはないみたい

それから、その場に居る全員が緊張するっていうか、とにかく雰囲気が変わったと思ったら、あのメインキャスターの殿倉さんが、レイコさんと一緒に入って来た

部屋の中を見廻して、ディレクター(さっきはよく分からなかったけど)のザキさんに話しかけてから、俺の方に真直ぐやって来た

「いやぁ、どうもどうもです」隣りでレイコさんも、にこやかにしている
「ああ、はい、どーもお邪魔してます」俺もついお愛想を振りまいちまった

「実はね、今日貴方においで頂いたのは、ウチのクルーが、そのなんと言うか、貴方の動きをどんな感じで、カメラで追えるのか、リハーサルをやらせて頂きたいと、お願いした訳なのです」と、殿倉さんが丁寧に話してくれたので、俺はなるほどね、と納得した

「それでですね、お宅さんにもこのスタジオにも慣れてもらって、このスペース条件で、どれだけダイナミックな絵が撮れるか、リハさせて頂きたいんですよ」ディレクターのザキさんが、話をまとめてくる

「わかりました、で、俺ってどうすればいいんですか?」
「まず、最初は上のライトが組み込んである梁のところから、この辺りにすいーっと降りてくるってのは、どうでしょう。どうです、やれますかねぇ」

「はあ、やれると思いますけど、今やるんですか?」天井が高いと言っても、さっきふざけて飛んだ時と違って、あのごちゃごちゃした梁組の中に、ちょうど停まっておいて、そこから下のフロアに降りるってなると、上手くやれるか、ちょっこし自信がないんだよね

それでも、実際やってみると、飛び上がるときに力を抜いてやれば、後はそう問題ないことが分かった
感じとしては、すうーっと飛び上がって、すいーっと飛んで、ふわっと梁に掴まれば良いのだ

実際そうやったら、上手く梁に留まることが出来た。ただ、それからが大変で、キャスターのレイコさんの横に降りるのに、その脚の形はどうの、もう少し力強くして欲しいのと、いろいろ注文が付いて俺は、ぶち切れそうになってきた

そんな俺の様子を見て、はらはらしてるのが駒沢さんで、はっきり言って自分を押さえていれたのは、彼女が居たらからだったんだと思う
posted by 熟年超人K at 22:04| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説

2020年12月01日

ランボー超人Bの物語―7超人だってば、俺はA

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ラッキーなことに、警備員さんがすぐに内線で連絡してくれて、駒沢さんがここに来てくれることになった
なんとなく、ちらちら俺を見張ってるみたいな視線を我慢していると、コツコツ床を響かせてタイトなスーツ姿の女の子がこっちにやってくる(いつものADルックもいいけど、今日は女性らしさ5割増しだ)

「はい、駒沢ですけど…。ああ、勇太郎さん、来てくれたんですね」知った顔が現れ、ほっとする
「大丈夫です、この方、ゴーゴーの出演者なんで。後で、入場証明取っておきますので」警備の人に説明してくれる姿が、いかにもテレビ業界の女性だな、って見とれてしまう

「ゴーゴーって…」警備員が行ってしまってから、素朴な質問をそっとしてみる
「ああ、勇太郎さんはお昼のワイドショー観てないんですね。先日お会いした殿倉さんの『ニュースバラエティ 午後だよGo!Go!』のことなんですよ」なるほどね

「そうそう、勇太郎さんの衣装が上がったんで、それでこちらから連絡を差し上げたんですけど、急なアクシデントがあって…」言い訳してくれてる駒沢さん、カワイー!

どうぞ、と言って先に歩く駒沢さんの後を付いて行くと、途中で受け付けに寄って『関係者』と書いてあるネックストラップを取って、俺の首にかけてくれる(い〜匂いだなぁ!!)

上の階に移動して、前に寄った部屋とよく似た部屋に入るよう、駒沢さんに促された
部屋に入ると、移動式のハンガーラックに、黒と赤を基調にしたかっこいいコスチュームがぶら下がっている

「あなたが超人ランボーなの?小さいわねェ」部屋の隅で壁にもたれかかっていた女の人が、ぽつっと喋った
「ああ、こちらはスタイリストの高取みゆきさんです。こちらは、上辻曲勇太郎さん、超人の方です」駒沢さんが、俺と女の人それぞれを紹介してくれた

「超人ランボーっていうテーマで作ってみたんだけど、やっぱ筋肉足りないから、無理っぽいよね」そりゃ俺、マッチョなんてとても言えないスタイルだしね

「ランボーのイメージって、筋肉もりもりに黒のタンクトップでしょぉ。でぇ、小柄だって聞いてたんで、そこはデザインでまとめてみたのよ」って、言いながらぶら下がってたコスチュームを手に取った

腰から下は黒、上半身は赤がメインで、そこに黒いタンクトップを着てるみたいに色が切り替わってる
後、コスチュームの肩や胸、太もも辺りにパッドが入っていて、ちょっとみ筋肉があるように見えなくもない

「まあ、見た目より素材にこだわってるのよ。だって、オーダーに火や擦過に強いこと、ってなってたでしょ。これって見た目よりそこがすごいのよ」って言いながら、ライターを取り出し、火を点けて炎を布地に当てた

「ほぉら、全然火に強いのよ。それからぁ…」今度はカッターナイフを取り出して、コスチュームの胸の辺りに突き立てて、思いっ切り下に引いたが、刃は布地を滑っただけで、全然切れてない

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そりゃ、布地がすごいのは分ったけど、ちょっと派手過ぎじゃないんか?
俺が少し引き気味なのを無視して、スタイリストの高取さんは衣装を手に取って、にっこり笑った
「さあ、着てみましょう!」

部屋の隅に、布で囲まれた簡易着替えボックスみたいなのがあって、それを手で指し示してる
駒沢さんが俺を見て、うんうん、という風に頷いたんで、俺としてもそこで着替えるしかないのは分った

衣装を受け取ったときに、うんと軽いのがわかった。ただし、肩パッドや太ももパッド胸パッドなどが、ぼこぼこしてるのが、ちょっと気持ち悪い感触だ
それ以上に、着方がわからないんで、しっかり手に取って、全体をぐるぐる廻して、よく調べてみた

丁寧に見ると、左の横にすごく細かいファスナーらしいところが見える。そうだ、これは横開きなんだ。セーラー服なんかによくあるやつだ
首元をしっかり見たけど、ファスナーを引っ張って開ける金具が、どこにあるかわからない

「スライダーは、上じゃないのよ。下から引っ張りあげるの。そうすれば、ファスナーが目立たないでしょ。それで、上からカバーがかかるから、どうやって着てるか、うんと分かりにくいのよ」と、スタイリストさんが、得意そうに教えてくれた

「オールインワンの衣装は、背中が割れるのが多いけど、それだとリアルの戦闘シーンに、耐えられるかどうかわからないしね。あと、頭は後で被るってことと、足元はこっちのブーツを履くようになってるし、下も別パーツだから、オールインワンみたいだけど、ちゃんと分かれてるから、着るのは楽よ。トイレもね」

簡易着替えボックスに入って、まずパンツとTシャツになって、下の方から履いてみた。タイツよりは滑らかに履ける。続いて上の衣装を手に取ると、タンクトップになっているパーツは、一体化しているけど、裾の方が微妙に二重になっていて、下のパンツと上の部分の切れ目を隠している

上の衣装を着るのは慣れてなくって、結構苦労したけど、横開きの部分から一体化している手袋まで、一気に右手を突っ込んで、後は成り行きで左側も着れた

ブーツは、とっても薄い革みたいな感じで、ふくらはぎまで、ぴったり覆ってくれている。色は黒い艶消しで、同じく黒いパンツの素材感にもよく合ってるし、上半身の少し暗めの赤を、タンクトップの黒が上手く引き締めている(ファッションセンスゼロの俺でも、かっこいいと思う)

そいつを着て、最後に頭部分を被って、皆の前に出ると、駒沢さんが「素敵ですよ」と言うし、高取さんは「う〜ん、まあいいんじゃない、これで」と、まずまずの評価だ

「どうですか、着心地は?きつく、ありません?」訊ねる駒沢さんに、俺は親指立てて、OKを送った
「足元はシークレットブーツになってるから、170p超えになってるの。慣れるまで、足元が不安定になるから気を付けて」と、高取さんが、注意してくれた

少し歩いてみて、足裏の感触がわかったので、また親指を立てる
「あれぇ、おかしいな、マスクで喋れないの?そんな訳ないんだけど」俺が喋らないんで、高取さんが心配してか、そう言う

「いや、話せるけど、なんかねぇ…」あれぇ、耳に入って来る俺の声が、変みたい
「そうか、口元にある輪っかに口を当てて喋ると、声色が変わるようになってるのよ」高取さんが、教えてくれた

輪っかを、口元から外したら、大体俺の知ってる俺の声になった
それで、高取さんと駒沢さんに、お礼のつもりで、軽く宙に浮いて、室内をふんわり飛んで見せた

高取さんは知らなかったみたいで、びっくり顔になり、口元に手を当てて後ずさり、駒沢さんは、まずいもの見せちゃったのね、というような眼つきをして、俺を睨んだんだ
posted by 熟年超人K at 14:12| Comment(0) | 書き足しお気楽SF小説